大統領府が4日、「キム・ギヒョン前蔚山(ウルサン)市長下命捜査疑惑」と関連して、警察に移管した情報文書を古い書類綴じから探し出し、「ペク・ウォヌ元民情秘書官や死亡したP特別監察班員(ソウル東部地検捜査官)の関与は全くなく、情報提供者は大統領府の外部の公務員」という独自調査の結果を発表した。しかし、大統領府がこれを発表しながら、情報提供者がソン・チョルホ現蔚山市長の側近であるソン・ビョンギ蔚山市経済副市長だという事実を公表せず、大統領府の調査結果と釈明の信頼度が大きな打撃を受けた。「下命捜査疑惑」を解消するには力不足だという評価も出ている。
検察は「大統領府が自主的に調べた結果を発表したもので、われわれも捜査に反映するものがあれば反映する」とし、これといった反応を示さなかった。
■情報提供者未公開の論議が先立ち
大統領府はこの日、民情首席室に勤務するA行政官にキム・ギヒョン前蔚山市長の側近の不正を情報提供した人物の身分について「大統領府ではなく、他の政府機関の公職者」とだけ説明した。大統領府関係者は「情報提供者はA行政官が大統領府に勤める前にキャンプ場で偶然会って知り合った仲だ。A行政官が民情秘書官室に勤務していない時期(2016年)も似たような内容の不正事実を通報し、大統領府に入ってから数カ月後に連絡が来て、同一の内容を通報した」と話した。
同関係者は、情報提供者の身分に関して「われわれはある程度把握して知っているが、本人の同意や許諾なしに公開するというのは適切ではない」とし、「大統領府が調査できる公職者の範囲ではなく、政党所属でもなかった」と付け加えた。
しかし、大統領府の発表後、情報提供者が現蔚山市副市長であることが明らかになり、大統領府のこの日の説明はむしろ疑惑を膨らませる結果となった。情報提供者が蔚山市長選挙後に副市長になった点を考慮すれば、情報提供者自身が誰よりも選挙と利害関係が大きい人物だという点が明らかになったのだ。大統領府が「民情首席室内部で独自に作った情報文書ではない」という点ばかりを強調し、情報提供者の身分を公開しなかったこと自体が深刻な問題に挙げられる。大統領府内部で文書を作成したのではなくとも、情報提供者が与党の候補の側近であるという点から、情況上いくらでも「政治的な捜査」の可能性が開かれるということだ。
これについて大統領府の主要関係者は、「情報提供者はパク・メンウ市長の時も活躍しており、キム・ギヒョン市長時代も側近だった。どういう理由から通報したのかは分からないが、その人の履歴を見れば絶対に『われわれの側』ではない」と釈明した。
■思い出せないほど日常的な業務
今回の「下命捜査疑惑」のもう一つの核心は、情報の出所だけでなく、情報が警察に伝えられた経緯と、その後警察の捜査状況がどうやって大統領府に報告されたかなどだ。情報伝達の過程に関し、大統領府は調査過程で情報文書を作ったA行政官や、これを受け取ったペク・ウォヌ元民情秘書官が「詳しいことは覚えていない」とよく言っていたと伝えた。つまり、選挙に影響を及ぼすほど重要な情報と判断せず、日常的な業務のように処理したという説明だ。
大統領府関係者は「幸い警察に移管したという文書を発見し、それをもって民情首席室に勤務していた特別監察班員または特監班以外の行政官らにつぶさに確認した。文書を見せながら「この文書を見たことがあるか」と尋ね歩く過程で、A行政官が自分が作成したことを確認した」と話した。
ペク・ウォヌ前民情秘書官はこの文書を覚えていなかったと大統領府は伝えた。大統領府関係者は、「ペク前秘書官には当然確認したが、本人は全く覚えていない。『選挙介入批判』が起こるほどのクリティカルな(敏感な)問題なら、当時の民情秘書官室で何かしら覚えているはずなのに、まったく覚えていない」と述べた。
捜査状況報告と関連しても、大統領府は警察から2018年の地方選挙の前後に9回報告を受けたのは「下命捜査」とは関係がないと一線を引いた。大統領府関係者は、「捜査機関が日常的に行っている活動について定期的に報告を受けるのは民情首席室の業務の一つ。9回のなかで民情秘書官室が報告を受けたのは最後の1回しかない。その間上がってきた報告は本来の報告系統である反腐敗秘書官室に来る一般報告書だった」と反論した。
■死亡した特別監察班員とは無関係
大統領府はこの日、「国政2年目症候群、実態点検および改善策報告」という報告書も公開した。特別監察班員が検察の取り調べ後に遺体で発見された後、一部のマスコミが「蔚山市長の不正情報」関連だという疑惑を提起したことに関し、特監班員が蔚山に行った理由は「鯨肉をめぐる検察・警察の対立」調査だという点を明確にするためだ。この報告書によると、「検・警察間の鯨肉還付をめぐる対立」について民情首席室の独自調査と記載されている。大統領府関係者は記者団に対し、「(死亡した)P捜査官があのように(命を絶つという選択を)する前にこうして確認すればよかったのだが」とし、「あまりに日常的なことであり、大したことではないことが確認されやや脱力するほど」だと話した。