2032南北共同五輪招致事業が国務会議の議決で弾みがつくことになった。韓国政府が対外的に国家の信頼をかけて開催を約束したわけだ。2022年と2025年の間に予定された国際オリンピック委員会(IOC)の決定で、ソウルと平壌(ピョンヤン)が開催都市に選定された場合、朝鮮半島で開かれる3度目の五輪になる。
国民の最も大きな関心はどうしても開催費用などおカネに関する問題である。過去には五輪開催地に選ばれただけで国家的成功と見なされていたが、2010年代に入って状況が変わった。大邱(テグ)世界陸上チャンピオンシップやF1(フォーミュラワン)世界選手権、仁川(インチョン)アジア大会などの赤字が争点となり、経済性が重要な項目になった。
2032南北共同五輪の南側の開催地に選ばれたソウル市が発表した資料には、このような大会費用の輪郭が出ている。
まず、南北双方の大会組織委員会の運営や競技場施設費用は計5兆5804億ウォン(約5580億円)と推算される。五輪大会運営にかかる費用は、韓国(2兆3千億ウォン)と北朝鮮(9400億ウォン)を合わせて3兆2千億ウォン(約3030億円)だ。競技場の改修・補修費用は、韓国(1兆5700億ウォン)と北朝鮮(7850億ウォン)で差がある。大会組織委員会はスポンサー契約やIOC支援金、チケット販売、商品化事業などで独自の収益を出すが、2018平昌(ピョンチャン)冬季五輪組織委員会は全体の運営費用(2兆4400億ウォン)より多くの収入で、最終的に450億~700億ウォン前後の黒字を記録した。
競技場など施設物の投資の場合、事後運営・管理費用が累積して自治体に負担を与えるため、最近は新設よりは改修・補修して使用する方向に変わりつつある。2015年光州(クァンジュ)ユニバーシアードや2019年光州世界競泳チャンピオンシップなど、経済性を重視した大会の事例もある。平昌冬季五輪の施設物は、地域利己主義による過剰投資で依然として事後活用に困難を強いられてきたが、IOCの全面的な支援が行われる2024ユース五輪の開催地に江原道が最近選ばれ、施設物の活用のきっかけを作った。
最も大きな費用は、社会間接資本施設から出る。 ソウル-平壌間の往復4車線高速道路220キロメートルや同じ距離の高速鉄道を建設するなどの道路・鉄道事業は10兆~30兆ウォンほどがかかると推定される。
しかし、この部分は費用よりは投資という観点で捉えた方が現実的だ。平昌冬季五輪の場合、盧泰愚(ノ・テウ)政府の公約事業であるソウル~江陵(カンヌン)間の高速鉄道建設などの社会基盤施設投資に10兆ウォン(約9440億円)前後が投入され議論になったが、地域バランス発展という視野で見れば、肯定的な側面がある。財源の調達は北朝鮮当局が決めることだが、海外直接投資誘致など多様な方法がある。国内企業や資本の立場からも、道路や鉄道などが北朝鮮を通過してユーラシア大陸につながれば、数百倍以上の経済効果をあげることができる。選手団がソウルや平壌に到着した後、航空便で移動する方式を精巧化すれば時間を短縮できる。
スポーツはまさに政治という言葉がある。しかし、メガスポーツイベントの副産物が肯定的な効果をもたらした例もある。例えば、1988年ソウル五輪の場合、韓国の国家ブランドを大きく拡張し、五輪公園と蚕室(チャムシル)競技場などの遺産は巨大な市民の憩い・レジャー空間で、ソウル都心の“肺”として機能している。ソウル市は「2032年南北共同五輪が、北朝鮮の開放と朝鮮半島の緊張緩和、両国の経済発展の契機などで、500兆~3400兆ウォンと推定される統一費用を減らせるだろう」と期待している。長期的な視野で投入と算出を考えると、短期的費用に基づいた見通しとは異なる結論が出てくる。
文化体育観光部の妥当性調査を通過した2032南北共同五輪は、経済と安保、未来価値の面で十分試す価値のある事業だ。五輪開催地の確定に苦労するIOCも2032南北共同五輪が夏季五輪初の分散開催の道しるべになることを望んでいる。