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大学生だけが若者? 人に会うたび「どこの大学に通ってるの」

登録:2019-12-09 03:29 修正:2019-12-10 13:32
[もし韓国の若者が100人だったら]高卒17人の人生 
 
専門大・高卒だからと給与差別「会社で出身学校も結局こだわる」 
「やりたい仕事の大半は大卒採用、学歴問わない職場はバイト一色」 
高卒17人のうち8人「大学に行った方がいい」9人は「高卒で就職の方がいい」選ぶ 
「志望大学に全員受かるわけじゃないから…」「就職できない大卒者も多いでしょう」
就職博覧会を訪れたある高校生=カン・チャングァン記者//ハンギョレ新聞社

 『標準国語大辞典』は、「浪費」を「時間や財などを無駄に使うこと」と定義する。23歳の労働者ハン・スジョン(仮名)には大学がそうだった。「勉強に興味がないのに大学に通うのは無駄です。金でも稼ごうと思ったんです」と釜山の人文系高校に通っていたハン・スジョンは、その当時からバイキングレストランで「バイト」をしていた。その後も四カ所の工場や食堂などで働きながら金を稼いだ。一時は工場から帰宅してから夕食時のバイキングの仕事をする「ダブルワーク」をしたりもした。今は釜山のある物流会社で週6日、1日8時間働いている。ただし、勤務時間は夜9時から朝6時の「夜勤固定」だ。夜にばかり働いているおかげで、手当がついて月に300万ウォン(約27万4000円)ほど稼いでいる。ハン・スジョンは不眠症になりながらも、「日勤」で働くつもりはない。今の給料に「とても満足」しているからだ。

 ハン・スジョンがあくせく稼ぐ理由は、年を取った時に頑張れる自信がないからだ。「こんな風に働いていたら、年取ったら体が耐えられないと思います。とりあえず、今は本当に頑張って働いて、年取ったら気楽に暮らしたいです。ビルのオーナーになって家賃で稼いで」

韓国社会の学歴差別と未来に対する若者の考え//ハンギョレ新聞社

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「大学の勉強は浪費…5階建てのビルオーナーが夢」

 ハン・スジョンの夢は5階建てのビルを持つことだ。1階は何が何でも自動車チューニング・ショップにするつもりだが、そこは小学校の時からの“大親友”のチョン・スチャン(仮名)のためのものだ。他のフロアにはインターネットカフェ、マルチバン(ネットカフェ、ビデオルーム、カラオケなどが併設されている所)、カフェなどに貸すつもりだ。屋上には友達と夜通しワイワイやれるキャンピング・スペースを作るつもりだ。

 そんなハン・スジョンの夢を叶えるのに、大学は必要なかった。だからハン・スジョンは、大学進学より高卒で就職のほうがましだと言った。「とりあえず大学に行った人たちより金を貯めることができるでしょう。社会生活も大学を出た人たちよりうまくやれると思います」。ハン・スジョンは学歴もあまり重要ではないと考えている。「学歴のある人がみんな仕事ができるわけでもなく、学歴がないからといって仕事ができないわけでもないと思う」。

 未来の自動車チューニング・ショップ社長であり、今は23歳の大学生チョン・スチャンが口をはさんだ。今は専門大学自動車学科に通うチョン・スチャンが特性化高校(実業系の高校)を卒業してから、スキー場のボード講師をしていた時にこんなことがあった。「ソウルで良い大学に通ってる子が慶尚南道梁山(ヤンサン)まで来てアルバイトをしていました。『おっ、仕事できそうだな』って思ったんです。でも仕事ができない上にサボるんです。ただ学校の自慢ばかり。どうしろっての。それでやめてくれと言いました」。ハン・スジョンが合の手を入れる。「大学とスキー場の仕事に何の関係がある? 大学に通えば仕事がすべてわかるわけじゃないし」。大学を出たからこそうまくやれる仕事もあるだろうが、大学を出たからといって全てのことがうまくできるわけではない。職場では仕事ができるか、頑張っている人が認められるべきだ。それがハン・スジョンとチョン・スチャンの常識だ。問題は、現実が2人の常識を無視するということだ。

 22歳の労働者ホン・スジ(仮名)は、高校を卒業してある金融会社で働いていた時、高卒と大卒の年収の差を実感した。「実は他人の年俸は分かりにくいんですが、偶然に知ってしまったんです。大卒と私の年俸は相当差がありました。『やっぱり違うんだな』と感じました。そのうえ、ある友人は他の職員と比べて話にならないほど成果給が少なかったそうです。人事チームに聞いたら、はっきり高卒だからとは言わないんですけど、そんなニュアンスだったそうです。働いてて大卒と高卒の能力は大差ないと感じることが多かったんだけど…。どうしようもないと思います」。ホン・スジは、韓国社会において学歴や学閥はどれほど重要だと思うか10点満点で点数をつけよという質問に、学歴、学閥とも「10」と答えた。「社会生活を早く始めたから他の人よりも強く感じるんだと思います。学歴が結局、昇級や年俸交渉に直結しますからね。会社ではどの学校を出たのかも裏ではこだわるし、自分と同じ学校の出身者に良くしてやろうという雰囲気があるので、学閥も重要だと思います」。

 23歳の大学生シム・ジョンソク(仮名)は、仁川(インチョン)のある特性化高校を卒業した後、大型スーパーで2年間働いた。シム・ジョンソクの給料は120万(約10万9000円)から130万(約11万9000円)ウォンの間だった。しかし同時期、4大出身の同僚たちの給料は250万(約22万8000円)~280万ウォン(約25万5000円)。2倍以上の差だ。「大学、専門大、高卒出身のスタートラインそのものが違いました。とにかく職級から違うし、給与も違います。私は広報販促と物流の方だったんですが、高卒の方が労働強度の強い仕事をします。その時、大学に行くべきだと感じました」と話すシム・ジョンソクは今、専門大学で流通マーケティング学を学んでいる。卒業すれば、以前より一歩くらいは前のスタートラインに立てると彼は信じている。

韓国社会の学歴差別と未来に対する若者の考え//ハンギョレ新聞社

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学歴によって取れる資格も分ける社会

 大卒と高卒の差は月給袋の厚みにのみ現れるわけではない。「近ごろの20代」と「若者」は少なくとも大学生と同義語だ。与えられる就職の機会も違う。22歳の労働者アン・ヒョンジョン(仮名)は大田(テジョン)のある特性化高校で会計とメディアを専攻した。アン・ヒョンジョンはフリーランサーの映像編集者として働くと同時に、会社の事務補助として働いている。アン・ヒョンジョンが出会った人々の頭の中には、若者はみな大学生という固定観念があるようだった。「初めて会う人すべてが私のことを学生と呼ぶんです。『どの大学に通ってるんですか?』『専攻は何ですか?』大卒中心で世の中が回りすぎのような気がします」。気に障るだけなら耐えることもできた。しかし、大学の卒業証書がないとできないことが多すぎた。「やってみたい仕事はたいてい『大卒以上』という資格要件があるんです。高卒や学歴不問とあるのを見ても、アルバイトがほとんどです。悔しいから履歴書を送ってみたりもしました。もちろん連絡は来なかったけど…」。アン・ヒョンジョンはコンピューターグラフィックス運用「技能士」の資格がある。「技士」の資格は大卒以上のみ取得できる。カラーリスト技士の資格も同様だ。アン・ヒョンジョンは学歴によって取れる資格さえ分ける社会が理解できない。腹立たしいが、社会は変わらないだろうし、結局自分を変えなければならないことぐらいは分かっている。アン・ヒョンジョンは高校卒業後、この3年間でそれを学んた。

 だからアン・ヒョンジョンは、大学に進学しようと思っている。高校3年生の時、大田のある防衛事業体に就職したアン・ヒョンジョンは、男性が多数を占める雰囲気に耐えられず会社を辞めた。その後、美術学部入試の準備を1年間したが、結果は思わしくなかった。両親はもう1年の援助は困難だと言った。そのため、映像編集と事務補助を掛け持ちして学費を貯めている。「早生まれだから、事実上18の時から働いているわけじゃないですか。そんなに幼いころから外に出て働くのはメンタルヘルス的によくないみたいです。防衛事業所で働いていた時は、会社が大変すぎて毎日トイレに行って泣いていました。その幼い歳に給料は160万ウォン(約14万6000円)程度もらっていたんですが、そのお金が大金すぎて怖かったです。稼いだお金はすべて両親に渡しました。兄が医学部に通っていてお金がかかる状況が続いていたし、家庭の事情も良くなかったので、私が家の役に立つべきだと思ったんです。そんな風に仕事ばかりして生きていたから、『井戸の中の蛙』になっていたような気がします」。

 アン・ヒョンジョンが大学で社会学を勉強しようと思っているのはそのような理由からだ。「今までデザインや編集ばかりやってきたので、全くやったことのないことをやってみたいんです。大学でいろいろなことを学ぶことが重要だと思います。就職に有利かどうかでなく、人として成長できると思います」。このようにアン・ヒョンジョンにとって大学は、様々なことが学べる、教育を受ける所というのが彼女の常識だった。しかし、現実において大学は「差別を避けるために行く所」になりつつある。

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高卒の17人に9人「大学より就職の方がいい」

 「もし韓国の若者が100人だったら」で出会った若者のうち83人は大学生で、17人は高校を卒業後に就職や起業をしたか、無職の若者たちだった。ハンギョレはその17人に「就職ではなく大学に進学した方がよいと思うか」を尋ねた。8人は思うと答え、9人は思わないと答えた。大学進学の方がよいと話す8人のうち5人の回答趣旨は「高卒では求職に限界があるため」だった。学歴差別を避けたいという思いだ。高卒で就職した方がよいと答えた9人の考えは分かれた。「志望校に全員が受かるわけではないでしょう。行きたくもない所に行くのは時間の無駄ですよ」。来月に軍隊入営を控えた19歳の無職チョ・ミンソク(仮名)は言った。学歴差別を避けても、その後には学閥差別が待っているということはチョ・ミンソクも知っている。安山市(アンサンシ)の半月工業団地で働く22歳の労働者ナム・ミンス(仮名)は「自分の周りだけを見れば、大学を出ても就業できない人が多い。だからぜったい大学に行くべきなのかは分からない」と語った。

 流通企業で働く20歳の労働者パク・チウン(仮名)は、叔母に希望を見いだす。「2歳しか歳の離れていない叔母がいるんですが、特性化高校を出て証券会社に就職して頑張ってます。叔母を見て感じたのは、あえて大学を卒業しなくても仕事ができて頑張ればそんなに違いはないと思います。特に大学教育とは無関係な仕事の力量は高卒者にも十分あります。むしろ高校生の時に実務を学んだので、大学生より仕事ができる部分もあります」。

 パク・チウンの言葉には文句のつけようがない。しかし、現実は甘くはない。依然として学歴による賃金格差は大きい。今年5月の統計庁と女性家族部の発表によれば、20~24歳の労働者の平均賃金は185万5千ウォン(約16万9000円)だが、高卒は179万ウォン(約16万3000円)、専門大卒は182万4千ウォン(約16万6000円)、大卒以上は201万5千ウォン(約18万4000円)と、層をなしている(2019年青少年統計)。

 「身体的かつ精神的に成長著しい、または成熟した時期にある人」。『標準国語大辞典』に記された青年の定義だ。しかし、現実では大学生83人だけが青年だ。その中でもソウルの4年制大学の学生16人が青年を代表する。「チョ・グク事態」のように政治・社会的争点が浮き彫りになる時、韓国社会が発言権を与える青年は「SKY(ソウル大、高麗大、延世大)」の2人に減る。

 しかしその裏には、誰からも視線を向けられない17人が生きている。この地で、今日という日を。

キム・ヘユン、カン・ジェグ、キム・ユンジュ、ソ・ヘミ記者

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/919844.html韓国語原文入力:2019-12-06 05:01
訳D.K

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