「90歳の高齢者に、住んでいる家から出て行けということは生存権を脅かす行為だ」
13日午前、ソウル瑞草洞(ソチョドン)のソウル高裁刑事1部(裁判長 チョン・ジュニョン)法廷。2日前に光州(クァンジュ)地裁で開かれた5・18民主化運動関連死者名誉毀損事件の裁判で、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領(88)の無罪を主張したチョン・ジュギョ弁護士が、今度は全氏の“生存権”を主張した。昨年12月、検察は2205億ウォン(約216億円)にのぼる全氏の未納追徴金を還収するために、2013年9月に差し押さえた全氏のソウル市延禧洞(ヨニドン)の私邸を公売にかけることにした。これに反発した全氏の夫人イ・スンジャ氏と元秘書官のイ・テクス氏、3番目の嫁イ・ユネ氏など「延禧洞私邸名義人」3人が訴訟を起こし、この日イ氏らが欠席した中で初の審理が開かれた。
イ氏を代理したチョン弁護士は「刑事判決は被告人の全氏に対して執行しなければならない。私邸の母屋などは第三者であるイ・スンジャ氏の名義になっているので執行は無効」と主張した。また「追徴金は1980年代の大統領在任中の秘密資金を対象にしたものだが、延禧洞の私邸は1969年に取得した財産だ。不法収益に由来した財産ではないため、検察の執行は違憲」と主張した。
これに対し検察は「延禧洞の私邸は全氏の借名財産」と指摘して、追徴金の還収執行は正当と強調した。延禧洞私邸の母屋は、全氏が陸軍士官学校を卒業した後、14年間貯めた金で買ったもので、当時の夫人イ氏には一切所得がなかったということだ。また、全氏の長男のチョン・ジェグク氏が、2013年の検察調査で「延禧洞私邸のすべてが父の全氏の所有」と述べた点などを根拠に上げた。検察は「延禧洞の私邸は全氏の財産であることが明らかだ。2013年に差し押さえの手続きが始まった以後、5年にわたり夫人のイ氏らは一切の異議を提起しなかった」と強調した。続けて「生存している間は公売を進めないで欲しいと言っておきながら、検察が公売手続きを進めると、それまでとは態度を変えて借名財産ではないという趣旨の主張をしている」として、裁判所に全氏側の請求を棄却してほしいと要請した。
だが、チョン弁護士は「2013年の検察による追徴執行は、超法規的で超憲法的であり違法な執行だった。それでも被告人が異議を提起しなかったのは、国民に対して申し訳ないと思うためだった」として「90歳の高齢者に住んでいる家から出て行けということは、生存権を脅かす行為」と強調した。裁判所は27日に2回目の審理を行う。
一方、全氏側は韓国資産管理公社を相手にソウル行政裁判所に対し延禧洞私邸差し押さえ処分の取り消し訴訟も提起した。この訴訟は15日に宣告が予定されている。