プールの事故で亡くなったA君の家族は、プールの運営業者らを相手に損害賠償を請求した。プールサイドの欄干から落ちて亡くなったBさんの家族も「欄干の設置・管理に欠陥があった」として、地方自治体に損害賠償を請求した。裁判所は、慰謝料だけでなく当事者が生きていたとすれば稼げたはずの逸失収入も損害賠償の範囲に含ませる。この時、肉体労働者が働ける最高年齢と裁判所が見る“稼働年齢”は逸失収入計算の基礎となる。A君事件の2審裁判所は、稼働年限を最高裁(大法院)判例に従って「60歳」と見した一方で、Bさん事件の裁判所は「65歳」という新しい基準を提示した。「大韓民国の男性の平均寿命は79.3歳で、事故当時の2016年5月には全就業者のうち満55~64歳の就業者数は17.69%に達していた。故人がしていた業務は、特に健康状態が悪くなければ満60歳以上でも特別な問題なく遂行できると見られる」と判断したためだ。
最高裁は今月29日午後2時、両事件に対する全員合議体の公開弁論を開き、稼働年限の上方修正の要否を議論する予定だと5日明らかにした。全員合議体の活性化を掲げたキム・ミョンス最高裁長官の就任後、4回目の公開弁論で最高裁のホームページ、ユーチューブを通して生中継される。最高裁は「従来、一般肉体労働者の稼働年限を経験則上55歳と見たが、1989年12月の全員合議体の判決で60歳に修正された以後、現在まで適用している」として「最近下級審で、平均余命の延長、経済水準と雇用条件などの変化に基づいて65歳までと判断する事例が増加した」と明らかにした。
公開弁論の争点は大きく2点だ。まず「一般肉体労働者の働ける年齢を経験的にいつまでと見るべきか」だ。最高裁は、稼働年限を60歳と見た全員合議体の判決から29年が過ぎただけに、平均余命、年齢別経済活動参加率、職種別勤労条件だけでなく、米国・ドイツ・日本などの外国事例を調べると明らかにした。次の争点は、「稼働年限延長の法的影響力と社会的波及力」だ。肉体労働者でない他の業種や定年・年金制度にどのような影響を及ぼす恐れがあるかを問い詰めてみると最高裁は明らかにした。