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[インタビュー]「タラワの戦いで殺戮された朝鮮人1200人を忘れないで」

登録:2018-11-05 06:27 修正:2018-11-05 08:24
米国防総省の「朝鮮戦争プロジェクト」総括するジン・ジュヒョン博士
米国防総省「戦争捕虜及び行方不明者確認局」(DPAA)で「朝鮮戦争プロジェクト」(Korea War Project)を総括するジェニー・ジン(韓国名ジン・ジュヒョン)博士が10月23日(現地時間) 遺骨鑑識について説明している=イ・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

 「『タラワ』を知っていますか?」「…」

 遺骨鑑識について親切に説明していた彼女の突然の質問に、皆黙り込んでいた。彼女はにっこりと笑いながら話を続けた。「そうでしょうね。私もそこへ行って初めて知りましたから。韓国の方々がいらしたら、必ずここにお連れして、タラワについて話します。とても残念だと思って」

 彼は米国防総省「戦争捕虜及び行方不明者確認局」(DPAA)で「朝鮮戦争プロジェクト」(Korea War Project)を総括するジェニー・ジン(韓国名ジン・ジュヒョン)博士だ。朝鮮戦争プロジェクトは、朝鮮戦争で死んだり行方不明になった遺骨を発掘し身元を確認する作業の公式名称だ。彼女は最近、7月27日に北朝鮮が55個の箱に入れて米国に渡した朝鮮戦争当時の米軍の行方不明者の遺骨を鑑識し、身元を確認する作業に没頭している。元山(ウォンサン)葛麻(カルマ)飛行場で行われた米軍遺骨送還式にも出席し、北朝鮮側が渡した箱の中に動物の骨がないか、現場鑑識も行った。北朝鮮側が米軍の遺骨だとして渡した箱からは、以前同様、動物の骨は見つからなかった。

 ジン博士はなぜ10月23日(現地時間)、ハワイのインド太平洋司令部基地内にあるDPAAを訪れた「韓米安保フォーラム」の韓国代表団に「タラワを知っていますか」と尋ねたのだろうか。

 タラワは南太平洋の小さな島国で、地球温暖化のため、徐々に海に沈んでいる「キリバス共和国(人口10万人)」の旧首都だ。タラワはいくつかの環礁からなり、その中で最も大きい「ベチオ」(長さ3キロメートル、幅800メートル)で1943年11月20~23日、島に上陸しようとする米軍とこれを阻止しようとする日本軍の間で殺戮戦が行われた。72時間続いた戦闘で、米軍側では海兵900人を含め1696人が、日本側では4690人が命を失った。太平洋戦争の流れに影響を与えた最初の上陸戦闘を、戦争史は「タラワの戦い」と呼ぶ。

 ジン博士はタラワに埋められた米軍の遺骸を発掘・鑑識し、家族のもとに帰す仕事も任されている。「米国は政府レベルで熱心に取り組んでいるので、成果があります。日本もNGOが太平洋の島々を歩き回りながら遺骨を発掘しています」

 しかし、それが米日だけのことではないというところに問題がある。日本軍の抵抗を抑えて島に上陸した米軍は145人を捕虜にしたが、そのうち128人が朝鮮人強制徴用労働者だった。日本軍が島を要塞化するために連れて行った朝鮮人強制徴用労働者が1400人に達するという記録もある。そのため、捕虜として捕まった128人を除いた残りの約1200人は、その島で日本軍の玉砕の叫び「万歳」ではなく、「オモニ」(お母さん)を声高に叫び、銃弾を浴びて死んでいったわけだ。

朝鮮戦争当時の米軍遺骨の鑑識を8年間指揮  
北朝鮮の元山で米軍遺骨の現場鑑識も  
「1943年南太平洋のタラワで悽絶な戦い  
日本側が発掘した遺骨に朝鮮人含まれた可能性も  
韓国は今まで発掘したことがない」 
骨を分析し身元を究明する「法人類学者」

 ジン博士はさらに語り続けた。「日本の人々は遺骨を発掘すると現場で火葬します。厚生省の規定上、遺体を本国に持っていくことはできないそうです。問題は、彼らが火葬した遺骨の中に強制的に連れてこられた朝鮮人労働者の遺骨が混じっている可能性が非常に高いということです。韓国はそこで遺骨の発掘をしたことがありません。外交部と行政安全部が日本側に『発掘遺骨を現場で火葬しないでほしい』と要請したこともあると聞きましたが…」

 同氏は現在米国の市民権者だ。韓国で生まれてソウル大学考古美術史学科で考古学を学び、韓国高等教育財団の奨学生に選ばれて、米スタンフォード大学で人類学修士号を、ペンシルバニア州立大学で人類学の博士号を取得した。2010年、DPAAの前身「戦争捕虜・戦中行方不明者捜索統合司令部」(JPAC)に就職し、翌年からこれまで北朝鮮が送還した朝鮮戦争米軍遺骨の鑑識作業を総括している。ジン博士は「法人類学者」であるが、法人類学とは「考古学・生物学・解剖学的知識に基づいて骨を分析し、死者の年齢や身長、性別、死亡時点、死亡原因などを究明する学問」である。ジン博士の著書『骨が聞かせてくれた物語』などが国内で出版されている。

ジン博士がさまざまな種類の骨を見せながら、遺骨鑑識について説明している=イ・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の「国防部遺骨発掘鑑識団」と協力する時が多い。10月1日の国軍の日に、米国が以前北朝鮮と共同発掘した朝鮮戦争の遺骨のうち、韓国軍と判明した64柱を韓国側に渡した際にも、ジン博士の“鑑識”があった。ジン博士は「遺骨鑑識で米国と韓国が最も異なる点は、戦死者記録の有無」だと話した。米国は戦死者の記録が残っているだけでなく、兵力などの内容も詳細に書かれているが、韓国は記録そのものがないケースが大半だという。このような基盤の差は、遺骨鑑識で遺品が占める割合にも大きな影響を及ぼしている。「米国では鑑識で遺品の比重が低いです。DNAまたは同位元素の分析、胸部レントゲン写真などを活用し、生物学的証拠が確保されてこそ身元が確認されたものと判断します。一方、韓国は遺品の比重が高いです。そのためか、韓国の専門家らは長い歳月に形が分からなくなった軍服でも、韓国軍のものか北朝鮮軍のものか、よく区別します。不思議なほどです」

 帰り際に、ジン博士が別れのあいさつをしながら、力強く語った。「韓国に帰ったら、タラワについて広く知らせてください。強制的に連れていかれ、そこで命を落とした方々の境遇が無念でなりません」

ハワイ/イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/868773.html韓国語原文入力:2018-11-04 20:36
訳H.J

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