金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長が、平安北道薪島郡(シンドグン)に続き、新義州(シンウィジュ)を訪問するなど、二日連続で朝中国境隣接地域の視察を行った。
朝鮮中央通信は1日、「金正恩同志が李雪主(リ・ソルジュ)女史とともに新義州の化粧品工場を現地指導した」と報道した。労働新聞もこの日、1面と2面に20枚余りの写真と共に金委員長の新義州視察のニュースを伝えた。金委員長は、前日は平安北道薪島郡の葦農場と軍部隊を訪れた。
新義州化粧品工場は、1949年に設立された北朝鮮初の化粧品生産基地として知られる。金委員長は「新義州化粧品工場で、すでにおさめた成果に満足せずに、さらに高い目標に向かって飛躍を続けなければならない」として「生産工程から手労働を完全になくし、工業化するための現代化事業」を強調したと朝鮮中央通信が伝えた。
金委員長は前日には中国と隣接した島嶼地域である平安北道薪島郡を訪問した。金委員長は、薪島郡の葦農場と機械化作業班を視察し、葦を活用した化学繊維生産の活性化方案を指示したと朝鮮中央通信が伝えた。薪島郡には葦が多い緋緞島(ビダンド)がある。薪島郡の葦は、新義州などに運ばれて化学繊維の原料として活用される。
金委員長の朝中国境隣接地域視察は、3回目の朝中首脳会談(6.19~20)以後、初めての公開活動だ。朝中経済協力を念頭に置いた布石ではないかと見られる。新義州は、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の執権時期に経済特区に指定され、薪島郡には朝中合作で推進した黄金坪(ファングムピョン)経済特区がある。中国通のキム・ソンナム労働党国際部第1副部長が金委員長に随行し続けたのも、こうした観測を裏付ける。しかし、北朝鮮メディアが報道した金委員長の発言には、朝中協力に関連した言及は見られない。
金委員長の視察にファン・ビョンソ元人民軍総政治局長が随行した点が注目される。北朝鮮メディアは、薪島視察と新義州視察にファン・ビョンソ、ハン・グァンサン、キム・ソンナム、チョ・ヨンウォンなど労働党中央委員会幹部が同行したと報道した。ファン・ビョンソ氏の公開活動が北朝鮮メディアに言及されたのは、昨年10月12日に人民軍総政治局長の職責で万景台(マンギョンデ)革命学院創立70周年記念報告大会に参加して以来初めてだ。
北朝鮮軍部の最高位職である総政治局長を務めたファン・ビョンソは、4月11日に開かれた最高人民会議で国務委員会副委員長職を解任された。5月の労働党中央軍事委員会拡大会議で、最前列に座っている姿がテレビ画面に捉えられたが、名前が呼ばれることはなかった。ファン・ビョンソは、昨年10月から進行された党組織指導部主導の検閲で解任され、金日成(キム・イルソン)高級党学校で思想教育を受けたと推定されると国家情報院が国会に報告したことがある。
ファン・ビョンソは、ハン・グァンサン労働党部長、キム・ソンナム労働党国際部第1副部長より先に名前を呼ばれた。北朝鮮メディアの呼称順序は、権力序列を反映するので、彼が少なくとも労働党部長水準の職位にあると見られる。一部では、彼が組織指導部軍事担当副部長と第1副部長を経て、軍総政治局長を務めたという点で、組織指導部第1副部長に復帰した可能性を提起してもいる。
朝鮮中央テレビは、金委員長の薪島訪問を伝えながら、彼が小型モーターボートに乗り薪島に到着する場面と、古く小さな乗用車に乗り移動する姿を放映した。住民生活と密着するという金委員長のイメージを宣伝するためという分析が出ている。金委員長は、薪島郡に駐留している人民軍第1524部隊も視察したと朝鮮中央通信が伝えた。