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現職検事による性暴力被害の暴露から1カ月…もう過去には戻れない

登録:2018-03-01 05:42 修正:2018-03-01 07:31
ソ・ジヒョン検事の暴露以降、巨大な変化 
「声出せば変わる」効力感に気づく 
文化や芸術、宗教、学界などで急速に拡散 
 
「被害者中心主義」の定着が急がれる 
「自己反省の契機になってこそ後戻りできない」 
「名誉毀損などの法制度の改善も課題」
今回のMeToo運動で性暴力の加害者とされた代表的な人物たち//ハンギョレ新聞社

 爆発的に続いているミートゥー(MeToo)告白は検察という権力機関を超え、文化や芸術、学界、言論界、宗教界、大企業などに広がっており、後進的な文化に深い亀裂を作り出している。性暴力があふれる現実の野蛮性を前に、MeTooを支持する「ウィズ・ユー(With You)」の声も高まっている。MeToo(が本格的に始まってから)1カ月、韓国社会は、今やMeToo以前には戻れない巨大な変化の波の中に吸い込まれていると評価されている。

 MeToo運動はソ・ジヒョン統営(トンヨン)支庁検事の勇気ある暴露から始まった。ソ検事は先月29日、検察内部の通信網「イプロス」にアン元局長からセクハラを受けたという書き込みを掲載した。法と正義を守護する検事までもが組織内部の性暴力にさらされていたという告白は、韓国社会に大きな衝撃を与えた。

 法曹界で火が付いたMeToo運動は、演劇界の父と呼ばれる李潤澤(イ・ユンテク)元「演戯団コリペ」芸術監督の慣行化した性暴力容疑が明るみになったことで、文化芸術系に飛び火した。内部権力を利用した彼らの性暴力文化は“苔”のように根強く広がっていた。続いて、俳優チョ・ミンギ氏とチョ・ジェヒョン氏など、有名芸能人のセクハラなどが話題になり、カトリック神父に対する性暴力暴露まで続いて、韓国社会の根深い位階構造と性差別的な文化が浮き彫りになった。もはやMeTooは、被害者がすべてをかけなければならなかった“運動”のレベルを越えて、韓国社会全般の慣行を変える“文化的底流”として定着している。

ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 専門家らは、韓国社会をMeToo以前と以後に分けることもできると評価している。以前、多くの女性たちの性暴力被害の暴露は、組織秩序を壊す異端児扱いされたり、「金目当て」などの軽蔑的な視線にさらされてきた。誣告・名誉毀損などの逆襲に遭う事例も多かった。しかし、ソ検事の公開後、(状況を)変えることができるという信頼が高まり、これまで被害を受けても前に出られなかった女性たちが声を出し始めた。今なら変えられると考え始めたからだ。高陽(コヤン)性暴力相談所のキム・ジヒョン所長は「いつかまた慣性が作動するかもしれないが、声を出せば変わるという事実を自覚したことが、最も重要な変化」だと評価した。

 これまで大きな反響もなく埋もれがちだった被害の告白は、社会全般の“連帯”に支えられ、加害者の処罰と権威的加害文化の解体につながっている。検察は、ソ検事の暴露から2日後に「セクハラ事件真相究明と被害回復調査団」を構成して真相究明に乗り出しており、この過程で現職の部長検事が逮捕・起訴された。ノーベル文学賞候補の常連だった詩人高銀(コ・ウン)氏の作品は、これから教科書から削除する案まで議論されている。

 これまで被害者の声に耳を傾けなかった社会が応え始めたことで、「もう言ってもいい」という信頼が形成されている。キム・ボファ韓国性暴力相談所付設研究所「響き」責任研究員は「『今なら私の告白が埋もれず、解決されるかもしれない』という社会に対する信頼が生じたため、MeToo運動が持続的につながっている」と話した。

 MeTooがもう一歩踏み出すためには、底辺を広げるべきだという提言もある。被害者の暴露を超えて構成員の省察と革新を引き出す契機にすべきということだ。イ・ミギョン韓国性暴力相談所長は「誰か何の被害に遭ったという事実を話したことに注目するのではなく、自分も幇助者や加害者だったのではないかと、自らを振り返る契機にならなければならない」と話した。

 MeTooの問題意識が実質的社会的規律として定着できるよう、制度的基盤を設けることも課題として挙げられる。被害者らの告白を受け止め、それを解決できる社会的なプラットフォームを作ると共に、彼らの告白が名誉毀損などの処罰につながらないよう、刑法第307条(事実の適示による名誉毀損)などの法体系を見直すべきという指摘もある。MeTooの風が静まった瞬間「2次加害」に被害者が襲われないように、保護装置を用意する必要があるということだ。演劇界の反省暴力活動に参加しているある関係者は「多くの加害者が文化芸術界の“王”として君臨する状況で、被害者たちは依然として恐怖に怯えている」とし、「法と制度的改善が力を発揮するためには、性暴行の加害者が関連共同体に再び足を踏み入れないようにするなどの取り組みが必要である」と話した。

シン・ジミン、ソン・ダムン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/834140.html韓国語原文入力:2018-02-28 20:51
訳H.J