「最近ほぼ一日一食になりました。冬休みなのに家にいる小学生の子どもたちにすまない気持ちでいっぱいです」
20日午前9時15分に全羅北道群山市小龍洞の韓国GM群山工場の正門は車両の出入りが統制されていた。一週間前の13日、GMは群山工場の閉鎖を発表した。同工場の生産職社員である40代前半のKさんは、正門の周りにある小さな出入口の隣でタバコを吸い始めた。Kさんは「気が休まらなくて、会社の幹部にどうなっているのか話してほしいと要求した。答えを聞くために来た」と話した。
Kさんは最近どうすべきかを悩んでいると打ち明けた。会社側は3月2日まで希望退職申請を受けると発表した。入社10年目のKさんは、期限まで退職を申請すれば、慰労金を1億ウォン(約1千万円)ほどをもらえると話した。通常賃金基準で2年6カ月~3年分の給与を慰労金としてもらえるという。しかし、自営業を始めるには不十分な金額だ。Kさんは家を購入するのに作った借金を返済すれば、何も残らないだろうと心配していた。彼は最近のような不景気に工場が閉鎖すれば、何をして食べて行けるか、分からないと語った。
Kさんは前日の19日、親しい工場の同僚たちと午前10時から午後5時まで約7時間にわたり、近くの公園で会って話をした。彼らは昼食も忘れて、缶コーヒー3本を飲みながらタバコを吸い続けたという。頭を突き合わせて考えても、これといった答えが出ない中、賃金を引き下げても工場を再稼動すべきではないかという意見もあったという。Kさんは「GMが、富平(ブピョン)工場と昌原(チャンウォン)工場だけは助けて群山工場を切り捨てると言うが、苦しみを分かち合って共に生きていきたい」という言葉を必ず記事に書いてほしいと頼んだ。
同日、正門の近くで会ったもう一人のKさん(54)は、車の尾灯材料をはじめとする多くの部品を群山工場に供給する協力会社に勤めている。一時は会社の同僚約150人と共に、群山工場に派遣されて常駐したこともあった。昨年末、準中型車クルーズと多目的車両オーランドの部品納品が途絶えた。群山工場閉鎖決定の直前には同僚が約10人いたが、ほとんどが辞めた。Kさんは「残りの材料を把握し、群山工場から持ってこなければならないが、退職すれば、行くところがない」と心配していた。GMの工場閉鎖によって直撃を受けたKさんの会社のような協力会社が、群山だけで130社以上に達する。
群山(クンサン)商工会議所関係者は「協力会社を含め、韓国GMの群山工場関連部署の勤務者が約1万3千人いるが、彼らの家族まで合わせると、5万人が群山工場閉鎖の直接的な影響を受ける。これは群山全体人口(1月末基準の27万4788人)の5~6分の1規模で、工場閉鎖による打撃は夥しいもの」だと話した。昨年7月、現代重工業の群山造船所の稼動中止に続き、GM群山工場まで閉鎖されれば、労働者と家族など7万人の生計が脅かされると全羅北道は分析した。群山市関係者は「昨年の現代重工業の群山造船所の稼動中止よりも、GM群山工場の閉鎖が群山経済にはるかに大きな打撃を与えるだろう。群山造船所協力会社のうち60%ほどが蔚山(ウルサン)などから来て、群山造船所の閉鎖後、蔚山に戻った。しかし、GM群山工場の社員は大宇自動車の時の1996年から20年以上住み続けた住民がほとんど」だと話した。
この日、群山で会った人たちは一様に絶望と不安を語った。あるコンビニ店主は「群山住民の半分以上がGM群山工場と関連がある。だから、他人事には思えない」と話した。ある協力会社の従業員も「造船所と自動車が廃業した群山では食べていけない。ここには未来がない」と話した。
まさにパニックに陥った群山の人たちは、GM本社に不信感を抱くと共に、裏切られたと感じていた。退職を4年後に控えた群山工場労働者のLさんは「群山工場の再稼働は難しいだろう。会社が群山工場を建て直す計画を持っていたなら、新規車種を群山に導入すべきだったが、予め閉鎖決定を下していたに違いない」と主張した。同日午前、GMの群山工場の東門で記者会見を開いた民主労総の全羅北道本部は「GMは経営資料を公開し、強奪したカネを返せ」と要求した。
ハン・ジュンス群山市副市長は「GMが苦しい経営状況を訴え続けたから、地域で何度もGM車を購入するための運動を繰り広げたが、結局、GMが群山の人々の背中に刀を突きさした。地方自治体の庁舎1階ロビーに特定会社の車を陳列しておくなんて、どこにもないだろう」と話した。これまで群山市庁1階には群山工場で作ったクルーズ車両1台が陳列されていた。
ムン・ヨンムク群山市地域経済課長は「今月19日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が大統領府首席・補佐官会議で、群山工場閉鎖への対策を求めたが、中央省庁がどれくらい誠意をもって代案を作り上げるかは分からない。政府は群山工場の稼動を前提にGMと交渉しなければならないだろう」と強調した。