2009年のダース(李明博元大統領の実所有と疑われている)の米国訴訟費用代納疑惑事件で、サムスンの政治権力に対する隠密なロビーのやり方がまたも注目されている。 朴槿惠(パク・クネ)前大統領の“影の実力者”だったチェ・スンシル氏に対する乗馬支援と同じ賄賂事件である上に、“強大な情報力”を基盤とする“権力に合わせたロビー”という構造までそっくりだという分析が出ている。
11日ハンギョレの取材を総合すれば、8日、9日の二日間にわたる検察の押収捜索で砲門を開いたダース訴訟費代納疑惑事件について、検察は典型的な賄賂事件と見ている。 李元大統領が実所有者であると疑われているダースは、2009年の初めBBK投資金140億ウォンを取り戻すための訴訟を米国現地で行なっている。この時、サムスンは大型法律事務所であるエイキン・ガンプの選任料数十億ウォンを代わりに支払い、その対価として同年末、李元大統領はサムスン電子のイ・ゴンヒ会長に対する特別赦免を行なうという「交換」の構図であると検察は見ている。
当時検察と特検は「ダースは李元大統領ではなくイ・サンウン(長兄)とキム・ジェジョン(妻の兄弟)の共同所有」という捜査結果を出した後だったが、サムスンの情報力は格別だった。サムスンは当時横領や国外財産逃避など違法の素地が多い状況でも米国法人口座を利用して金を送り、経営一線から退いていた李元大統領の高麗大学の後輩であるサムスングループのイ・ハクス顧問まで動員する。既にダースの背後に李元大統領がいるという事実を正確に把握していたことを示す状況と検察は見ている。李元大統領の“痒い所”をサムスンが正確に掻き、李元大統領はイ・ゴンヒ会長に対するワンポイント赦免ですっきりと報いたということだ。
これは、検察とパク・ヨンス特検の捜査で明らかになったサムスンのチェ・スンシル氏側に対するドイツ乗馬支援に酷似した構図だ。他の企業はチェ氏の存在自体も把握することができずにチェ氏側が要求した金額を値切っていた2015年、サムスンはドイツ法人口座を通してチェ氏の娘チョン・ユラ氏に数十億ウォンの馬を買い与える。当時サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が経営権承継のためにサムスン物産・第一毛織合併に対する国民年金公団の賛成票を必要としていたということも、対価性の面で「ダース訴訟費代納」の「ワンポイント赦免」と似ている点と指摘される。
サムスンの一貫したロビー構造は、イ・ジェヨン副会長の上告審などで「無念な被害者に過ぎない」というサムスン側の主張を反駁する根拠として浮上する可能性もある。検事出身のある弁護士は「サムスンがその都度核心を突くロビーをしてきたという点が認められるならば、被害者という抗弁はこれ以上通らなくなろう」と指摘した。
ダース訴訟費代納決定と関連して、再度イ副会長が検察捜査線上に上がる可能性も排除できない。代納当時、イ・ゴンヒ会長は経営の第一線から退いた状態だった。検察関係者は「(代納の)最終決定権者が誰なのか、すべての可能性を開いて確認している」と述べた。
これについてサムスン側は「このような状況で何も言えることはない」と話した。