「国民主権主義と法治主義を深刻に毀損した」「厳格な証明でない推論と想像に起因して起訴された」
ソウル中央地裁刑事22部(裁判長キム・セユン)の審理で23日に開かれた朴槿恵(パク・クネ)前大統領の初の裁判で、検察と朴前大統領の弁護人団は最初から火花の散る神経戦を繰り広げた。検察は592億ウォン(約59億円)の収賄容疑など、朴前大統領の18の容疑について一つひとつ指摘し、朴前大統領の弁護人団はどの疑いも認めないまま無罪を主張して対立した。
イ・ウォンソク・ソウル中央地検特殊1部部長検察官はこの日の裁判で「この事件は大統領がチェ・スンシルなどと共謀して各種機密を渡して国政に介入するようにし、企業から巨額の賄賂を受け取って私益を追求したものであり、文化界のブラックリストを作り支援を排除した事案」と一喝した。さらに、「朴前大統領は私的な利益を取得するため手続きを無視して権限を濫用し、国民主権主義と法治主義を深刻に毀損した」と主張した。
これに対し朴前大統領の弁護人であるユ・ヨンハ弁護士は「推論と想像に起因した起訴」だと反論し、「証拠の多くがマスコミの記事だが、検察の論理通りなら『金一封晩餐会』事件も不正行為の後、収賄罪でいくらでも起訴が可能だ」と検察の痛いところをついた。弁護人団は、朴前大統領がミル・Kスポーツ財団の設立を指示したり、ロッテなどに不正な請託や支援をお願いしたことがないという主張も展開した。特にユ弁護士は「指示をしたことも報告を受けた事もないブラックリストの責任を問うならば、殺人犯を産んだ母親に殺人罪を問うのと何が違うのか」と声を高めた。
チェ氏の弁護人のイ・ギョンジェ弁護士も支援射撃に乗り出した。イ弁護士は「ろうそくデモの激化を受け捜査機関に友好的な環境が造成されると、検察と特検は政治・社会環境の変動によって事件を見る視点と観点を変えた」とし、「司法部は政界の風向きを克服して不偏不党な姿勢で臨んでほしい」と話した。これにイ部長検察官は「被告人らはとても基礎的な事実関係も否定している」とし、「政治状況とろうそくデモによって起訴したのではない。法と原則、法令、証拠と事実関係のほかに考慮したものはない」と反論した。
検察と弁護人団は、裁判の進行をめぐっても衝突した。ハン・ウンジェ・ソウル中央地検刑事8部部長検察官が「毎日期日を指定して裁判を進める必要がある」と提案すると、ユ弁護士は「10万ページを超える記録の把握ができていない被告人を相手に毎日裁判するのは不当だ」と刃を向けた。これについてキム・セユン裁判長が「公訴事実の内容と証拠の量が膨大で、1週間に4回の裁判が避けられない場合があるようだ」とまとめて一段落した。
裁判部はまた、この日の裁判で朴前大統領の事件とチェ氏の「サムスンの賄賂事件」を併合することに決定した。キム・セユン裁判長は、朴前大統領とチェ氏の弁護人の反対にもかかわらず、「公訴事実が一致する二人を別々に審理すると多くの証人をそれぞれ呼んで陳述を聞かなければならず、不必要な時間がかかる」と明らかにした。
一方、朴前大統領は「言いたいことがあれば言いなさい」という裁判部の提案にも、3時間の間ほとんど口をきかなかった。朴前大統領は、職業、住所、本籍、生年月日を聞く裁判長の4つの質問に簡単に答え、「被告も起訴事実を否認するということでいいのですか」という裁判長の質問に「はい、弁護人の立場と同じです」と話した。追加で言いたいことを聞くと「後で申し上げます」と述べた。
チェ・スンシル氏は自分に与えられた時間に「この裁判で朴大統領が汚名を拭い、国のために尽くした大統領として残ってくれればいい」と涙声で話し、朴前大統領を擁護した。