「人がいません、人が…。景気が悪いとはいえ、いくら悪くてもこれほどではなかったんですが、もどかしいばかりです」(河南市徳豊市場商人のOさん)
旧正月を4日後に控えた24日、河南(ハナム)市の代表的な伝統市場では商人たちの憂いが続いていた。徳豊市場は4と9の日は市が立つ五日伝統市場が開かれる日であり、なんとか旧正月の雰囲気が醸されていた。しかし、わずか1年前には足の踏み場もなかった風景とは全く違うと商人たちは口をそろえた。
80店あまりの店舗と周辺の商店街を合わせて300店ほどの店舗が集中している新長市場はさらにがらんとしていた。ある商人は「3~4カ月間でひと月の売上が20%近く落ちた。複合ショッピングモールの勢いがこれほどとは思わなかった」と舌打ちした。
約1千億円が投入された「複合ショッピングテーマパーク」
昨年オープン後、毎日10万人前後が来場
伝統市場・路地商店街の売上20%激減
「賃貸料が下がり、空き店舗が増えるだろう
雇用効果も小さく対策づくりが至急必要」
類まれな「流通の恐竜」に呑みこまれた京畿道河南市の路地商店街は、文字通り焦土化された。新世界(シンセゲ)グループは昨年9月9日、人口21万人の中小都市に超大型複合ショッピングモールである「スターフィールド河南」を披露した。新世界グループのチョン・ヨンジン副会長は、オープン式で「世界に類を見ないショッピングモールを作るため熾烈に悩み研究した。その結果がまさにスターフィールド河南」だと話した。
1兆ウォン(約1千億円)が投入されたスターフィールド河南は、新世界グループと米国のグローバルショッピングモール開発・運営企業であるタウブマンが合作した。韓国初のショッピングテーマパークである。延べ床面積は46万平方メートルに達する。サッカー場70個を合わせた大きさだ。
新世界百貨店をはじめ、倉庫・超大型割引店「Eマート・トレーダース」や家電専門店、激安販売店である「ノーブランドショップ」をはじめ30店あまりの海外有名ブランドが主軸となった「ラグジュアリーゾーン」などが入店した。ここに食品や家具、育児用品やおもちゃ専門店なども入った。また、室内クライミングなど30種あまりのスポーツコンテンツがある「スポーツモンスター」や、ウォーターパークの「アクアフィールド」まで備えた。チョン副会長が定義したように「世界に類を見ないショッピングモール」だ。
新世界は昨年11月30日「スターフィールド河南はオープン以来80日間で訪問客622万人を超えた」という資料を発表した。平日基準で6万人、週末基準で11~12万人が平均的に訪問したということだ。地域別には河南地域のほかに江南4区(ソウル江南(カンナム)・瑞草(ソチョ)・松坡(ソンパ)・江東(カンドン)区)の顧客構成比が全体の25%以上だった。河南地域のみならず、周辺の地域商圏までブラックホールのように吸収している。
このような恐竜の出現に消費者らはすぐに反応したが、路地商店街は悲鳴を上げている。チョン・ウンス新長市場商人会長は「憂慮していた現実だが、“破竹の勢い”という言葉に実感が湧く。商人たちは大騒ぎだが、誰も解決策を提示できずにいる」と話した。彼は「店舗ごとに差はあるが、売上が少なくとも15~20%ずつ減少し、伝統市場の商人たちが徐々に死地に追い込まれている」と付け加えた。
この市場の周辺の商店街で営業する商人たちが主軸となった「商店街繁盛会」のキム・サンヨン会長は「スターフィールドも問題だが、その中に入ったトレーダースがもっと問題だ。表向きは(路地商店街との共存を義務づける)法的規制がない複合ショッピングモールだが、その中にほとんどすべてを販売する大型マートが建てられたからだ。地域商圏の衝撃があまりにも大きく、店舗の賃貸料まで下がっている。このような状況が続けば、空き店舗もどんどん増えるだろう」と見通した。
スターフィールド河南はやみくもに地域商圏に食い込んだが、いざ河南市には何を提供しているかは疑問だ。河南市議会のパン・ミスク議員は「スターフィールドの立地で河南市の年間税収が400億ウォン以上になるという分析があったが、ふたを開けてみるとこれにはるかに及ばないものとみられる。また、河南地域に約5千人の直接雇用、3万4千人の間接雇用の効果を予想したが、これもまた未知数」だと話した。
河南市は「スターフィールドはオープンから昨年末現在、8つの分野で1350人の河南市民を雇用した。分野別に見ると、サービス18人、駐車30人、環境美化93人、セキュリティ40人、販売839人、調理91人、施設40人、ホールサービング59人、その他150人」と明らかにした。地域に生み出す雇用数が不十分なうえに、採用職種もいわゆる「低い働き口」なので、看板倒れだという言葉が出ざるを得ない。
河南市の関係者は「新世界と徳豊・新長の商人会がそれでもオープン前に共生協定を結んだが、正確な内容はわからず、路地商店街をどれだけ守ることができるかは正確に分からない」と打ち明けた。河南市議会のオ・スボン議員は「共生協定の内容を把握して検討するために議会レベルで積極的に取り組んだが、新世界側が秘密維持条項を入れたため、商人たちは泣く泣くこれを受け入れたと聞いている」と話した。
河南市ではまた別の恐竜が人々の首を締め付けている。昨年3月、豊山洞(プンサンドン)ミサ地区の自足施設用地23-1・2ブロックの1万4260平方メートルを購入したコストコが、建築延べ面積5万436平方メートル、地下2階・地上5階規模で建築許可を受け、2018年にオープンする予定だ。
河南市議会のパク・ジンヒ議員は「ソウル江東・松坡、京畿道九里(クリ)・南楊州(ナムヤンジュ)などの関門であり交通の要という地域的特性のため、巨大な流通市場が相次いで進出し、路地商店街が死につつある。商店街の崩壊を防ぐため特段の対策が必要だ」と話した。