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[ニュース分析] 政界裏金疑惑捜査は大統領府の思惑通り終了

登録:2015-07-03 08:36 修正:2015-07-04 06:49
 検察が捜査結果発表
 ソン・ワンジョン前会長周辺だけ拘束
ソン・ワンジョン前京南企業会長が自殺する2日前の4月8日、ソウル・中区の銀行会館で検察調査と関連する記者会見をしている=イ・ジョンヨン先任記者//ハンギョレ新聞社

 「ソンワンジョン・リスト」特別捜査チーム(チーム長ムン・ムイル検事長)が2日、イ・ワング前首相とホン・ジュンピョ慶尚南道知事を裁判に移し、捜査を終えた。「迅速で徹底した捜査で一点の疑惑も残さない」と大がかりな捜査チームを設けて82日後のことだ。しかし結論は、捜査初期の「予想された範囲」からそれほど抜け出すこともなかった。捜査チームの矛先は朴槿恵(パク・クネ)政権の核心人物たちの前で常に鈍った。

 捜査チームはイ前首相に対し、忠清南道扶余(プヨ)・青陽(チョンヤン)の国会議員補欠選に出馬した2013年4月4日にソン前会長から3000万ウォン(約880万円)を受け取った疑い、ホン知事に対し、旧ハンナラ党代表選挙戦に出馬した2011年6月中下旬にソン前会長側近を通じて1億ウォン(約1100万円)を受け取った疑いでそれぞれ在宅起訴した。二人には政治資金法違反容疑が適用された。

 捜査チームはリストに記されている8人のうち、イ前首相とホン知事を除く6人は全員無嫌疑または公訴権なしで処分した。リストやソン前会長のマスコミとのインタビュー内容に符合する証拠がなく、資金を提供した時期が控訴時効範囲を過ぎているという理由からだ。ソン前会長は「キム・ギチュン10万ドル、ホ・テヨル7億、ホン・ジュンピョ1億、釜山市長2億、ホン・ムンジョン2億、ユ・ジョンボク3億、イ・ビョンキ、イ・ワング」と短いメモを残していた。

 また、捜査チームはリストの捜査過程で盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の兄ノ・ゴンピョン氏(73)が2007年末、ソン前会長側から特別赦免請託を受け、その代価として5億ウォンを得ていた事実を確認したが、控訴時効が過ぎていたことから不起訴(公訴権なし)処分にしたと明らかにした。

 検察はソン前会長から、それぞれ3000万ウォン(約330万円)と1000万ウォン(約110万円)の不法政治資金を授受した疑いがもたれ、出頭要求に応じないキム・ハンギル前新政治民主連合共同代表とイ・インジェ・セヌリ党最高委員に対しては、事件をソウル中央地検で継続して捜査させることにした。ソン前会長から「大統領選挙戦資金」と思える資金2億ウォンを受け取った疑いがあるキム・クンシク元セヌリ党首席副報道官に対する捜査も継続する方針だ。特に捜査チームは、キム元副報道官が大統領選挙戦資金捜査のキーマンと見て、キム元報道官を拘束した後に追加捜査をしようとしたが、逮捕状が棄却され、計画は失敗に終わった。捜査チーム関係者は「キム氏の令状が今回の捜査の最大分岐点だった。その令状が棄却され大統領選挙戦資金捜査も水泡に帰した」と話す。

ホン慶尚南道知事とイ前首相だけ在宅起訴
「親朴」大統領選挙戦資金容疑など無嫌疑
特赦に盧元大統領実兄が関与、起訴はせず
イ・インジェとキム・ハンギルは継続捜査
「政権の顔色伺った結論」との批判

 リストの中から2人しか処罰対象にならなかったことに対し、法曹界の一部と政界では「予想された不良捜査」との評価が相次ぎ出されている。供与者が死亡している根本的な限界を考慮しても、親朴槿恵系の実力者たちに対する捜査が一歩も進められなかったためだ。捜査チームはイ前首相とホン知事の他には、セヌリ党のホン・ムンジョン議員を召還調査しただけで、元・現職大統領府秘書室長のキム・ギチュン氏、ホ・テヨル氏、イ・ビョンキ氏、そしてユ・ジョンボク仁川市長、ソ・ビョンス釜山市長は書面調査しかしなかった。書面調査は釈明を聞くため主に使われる調査方法だ。捜査チームは彼らに対する家宅捜索や口座追跡などの強制捜査も試みなかった。捜査チームの“意志”が疑われる理由だ。

 当初、捜査の本流とされた2012年の大統領選挙戦資金疑惑に対しても、捜査チームは「大統領選挙戦資金は実体がない話」と援護姿勢を示した。ソン前会長は死亡直前のインタビューで「ホン・ムンジョンのような場合、(組織)本部長を引き受けたではないですか。組織を管理することになり私が2億程度を現金で与えた。この人にしたって自分が使うでしょうか。大統領選挙に使ったんですよね」と語っていた。このためホン議員は2012年、「朴槿恵大統領選挙戦資金」の捜査に向かう“入口”になると見なされた。

 しかし捜査チームはそこから一歩も出ることができなかった。捜査チーム関係者は「大統領選挙があった2012年、金融危機が迫り建設景気が急激に落ち込み、京南企業で現金化された総部外資金は1億8000万ウォン(約1980億円)ほどにすぎず、そのうち使用可能な資金は1億ウォンを少し超える水準だった」と明らかにした。ソン前会長が語った金額と違いが生じ、大統領選挙戦資金に費やすほどの秘密資金の実体がなかったとのことだ。捜査は結果的に大統領府や与党の期待に合わせたものになった。

 反面、捜査チームは京南企業側の人物は強く圧迫した。捜査初期にソン前会長の最側近のパク・ジュノ前京南企業常務とイ・ヨンギ秘書部長を証拠隠滅容疑で拘束した。また、京南企業本社と瑞山(ソサン)奨学財団など、ソン前会長周辺に対する広範囲な家宅捜索をした。秘密資金帳簿などリストの疑惑糾明のための調査だったとしても、結果的にソン前会長周辺の人だけが拘束される事態となった。

 捜査チームは時間の経過とともにソン前会長の特別赦免疑惑に関連した盧武鉉政権当時の関係者を調査し、与党による“水増し”の試みに呼応する姿勢を示した。捜査チームは斡旋収賄罪の控訴時効(7年)が過ぎているのにノ・ゴンピョン氏が資金を受け取ったと見て、終盤まで起訴を積極的に検討していたと伝えられた。キム・ギチュン前秘書室長とホ・テヨル元秘書室長の政治資金授受疑惑に対しては、初めから控訴時効が過ぎたと線を引いたのとは対照的だ。終盤にはキム・ハンギル前新政治民主連合代表に対する公開捜査に入り、親朴槿恵系実力者による不法政治資金提供疑惑という事件の性格が薄められる効果をもたらした。

 結果的に親朴系実力者を避けた今回の捜査も「大統領府ガイドライン」問題から自由ではなくなった。朴槿恵大統領は4月15日、セウォル号1周年関連懸案点検会議で「捜査過程で新たな疑惑が提起されたが、この問題は政治改革次元で必ず正すべきこと」と述べた。大統領府の元・現職秘書室長3人と首相がかかわった腐敗スキャンダルを、与野党分け隔てのない政治改革問題に置き換えたのだ。朴大統領は同月28日、「故ソンワンジョン氏に対する度重なる赦免は国民も納得することができず、この問題に対しても真実を明らかにして、制度的に是正してこそ私たちの政治は一段階さらに発展できる」と特別赦免に対する捜査を公開的に注文した。

 今回の捜査結果は朴大統領や大統領府の責任を他に移す効果を発揮したという点で、敏感な政治性を帯びた他の事件の処理結果と同じ脈絡をもつ。検察は昨年、セウォル号事故の責任をユ・ビョンオン前セモグループ会長にとらせ政府責任論を希薄にさせたことがある。昨年の年末に起きた「チョン・ユンフェ氏国政介入疑惑」は検察捜査の後半で「大統領府文書流出」に事案の性格が変わった。検察が朴大統領が困っている事件で相次いぎ救援投手として登板したようなものだ。

 ある検事長出身の弁護士は「政府が検察を利用する方法は偏向的で露骨だ。捜査に困難が多かったという点は十分に察するが、結果的に政権が望む結果そのままで残念だ」と話した。検察の中堅幹部は「捜査チームは予測可能な捜査範囲内でだけ最善を尽くしたようだ。どれほどの状況突破意志があったのか分からない」と不満をもらした。

ノ・ヒョンウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-07-02 22:27

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/698627.html 訳Y.B

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