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世代間の「窃取」か「連帯」か…韓国国民年金賦課方式をめぐり攻防

登録:2015-05-08 23:20 修正:2015-05-09 06:18
 キム・ヨンミョン教授、福祉長官に反論
 「子世代、保険料もっと納めても
 親世代への扶養の負担減る」
 野党・行政府公務員労組
 「お年寄りを泥棒のように罵倒すべきでない」
公的年金支出及び高齢者人口(単位%、資料:OECD)。日本、OECD、韓国の年金支出のGDP比率(右のグラフ)※2050年韓国の年金支出は国民年金(5.71%)、基礎年金(2.2%)、特殊職役(最大1.3%)。左のグラフは同様に65歳以上の人口比 //ハンギョレ新聞社

 国民年金財源調達方式の一つである「賦課方式」を「世代間の窃取」に例えたムン・ヒョンピョ保健福祉部長官の発言に対し、非難の世論が強まっている。将来の世代が現役世代を扶養する国民年金制度の設計趣旨を無視した不適切な発言だということだ。一方では、国民年金制度を通じて、高齢者扶養の責任を各世代が公平に負担するのは「世代間の搾取」ではなく「世代間の連帯」として捉えなければならないという反論も提起された。国民年金財源を事前に用意するのではなく、その年に納めてもらったものを、その年の受給に充てる方式を賦課方式という。

 キム・ヨンミョン中央大学教授(社会福祉学科)は8日、ムン・ヒョンピョ長官の「未来世代の負担論」に対する反論資料を出して 「国民年金所得代替率の引き上げは“世代間の連帯”の観点から理解しなければならない」とし「それ以外の場合、合理的代案を見つけられない」と指摘した。また、キム教授は「所得代替率を現行の(40%)のまま維持したとしても、2060年を前後に起こると思われる国民年金基金消尽の影響を緩和するためには、保険料を長期間に渡って少しずつ引き上げるしかない」と述べた。国民年金は、1988年の制度の施行とともに、「部分積立方式」で出発したが、年金受給者が多くなって積立基金がなくなったら、低下賦課方式に切り替えるという一定の社会的合意を経た。

 キム教授は「現世代(親世代)は、年金がない祖父母世代を私的に扶養すると同時に、自分の老後も準備しなければ二重の負担を抱えている」とし「一方、未来世代の子世代は、親世代が国民年金の給付より多く受け取るほど、相対的に扶養負担から自由になるという点で、不公平とは言えない」と主張した。 2011年に韓国保健社会研究院が行った高齢者実態調査の結果によると、親世代が祖父母世代に渡す「生活費」(私的移転所得)は、月平均26万7000ウォン(約2万9400円)に達する。親世代が国民年金でもっと安定した老後生活ができるようになると、その分扶養のための個人的な支出を減らすことができる構造であることから、後の世代の保険料が相対的に高くなることを「世代間の窃取」と捉えるのは、過度に偏った見方であるというのがキム教授の説明だ。

 行政府公務員労働組合(行政府労組)もムン長官の発言を強く批判し、辞任を求めた。行政府労組はコメントを出し、「国民年金などの公的年金の強化は、世代間の窃取ではなく、社会安全網の構築の観点からアプローチすべきだ」とし、「ムン長官の発言は、国民年金受給者であるお年寄り世代を泥棒に罵倒するも同然だ」と指摘した。

 ムン長官に対する批判は国会でも続いた。新政治民主連合は同日午後、国会院内代表室で懇談会を開き、与野党の国民年金強化合意の精神を毀損したムン長官の解任建議案の提出を検討すると明らかにした。懇談会に参加したカン・キジョン議員は「ムン長官の言葉は、今の高齢者が今の青年世代を相手に盗みを働くというもので、この言葉に大統領府とセヌリ党同意するのか訊かざるを得ない」とし「来週保健福祉委員会を招集し、本当かどうかを調べてから、(ムン長官)解任建議案を提出するかどうかを決定する」と述べた。

 一方、ムン長官は先週7日、記者たちと会って、「年金学者の中では賦課方式で運用することは、世代間の窃取だと話す人もいる」とし「高齢化が最も速い韓国が賦課方式に切り替えた場合、持続可能性に深刻な問題が起こりかねない」と述べた。ムン長官と福祉部は、与野党の所得代替率50%に引き上げる合意が行われてから、保険料が倍以上がって、未来世代の負担が大きくなるという主張を相次いで出した。ムン長官のこのような行動は、比較的長く国民年金保険料を納めなければならない若年層を刺激し、ただでさえ低い国民年金の信頼性をさらに低下させたという批判が出ている。

チェ・ソンジン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-05-08 19:30

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/690422.html 訳H.J

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