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公務員年金改正「社会的大妥協」を放り投げた韓国与党

登録:2015-05-07 23:49 修正:2015-05-08 06:56
 リーダーシップ不足の与党、「50%明記」受け入れながら親朴反発で無気力
 傍観する大統領府、「早く」圧迫したのに「越権」、「お任せ」他人事のよう
 大統領府「年金分離処理」主張…与野党合意の破棄誘導し混乱煽る
公務員年金法改正案処理のために6日夜、国会本会議場に待機していたセヌリ党議員が、与野党の合意処理が失敗に終わった直後に本会議場から出ている=キム・ギョンホ先任記者 //ハンギョレ新聞社

 2日に与野党代表が「社会的大妥協の模範事例になるだろう」と合意した公務員年金法改正案が6日、国会本会議に上程されることなく消えた。国民年金などの公的年金を強化するための社会的機構構成案の上程も挫折し、せっかく整いつつあった公的年金の議論の場も留保された。大妥協の先例を残すとともに、より広い社会的議論につながる機会を逃した今回の事態で、与野党と大統領府は、リーダーシップ、信頼、責任の不在という政治現実の素顔を露わにした。このような状況で、大統領府は「公務員年金の再編案の優先処理」という分離処理を要求し、混乱を煽っている。

 まず批判の的になっているのは、公務員年金交渉を主導したにもかかわらず、党内部で合意案を貫けなかったセヌリ党だ。金武星(キム・ムソン)代表は昨年末の公務員年金法改正案代表発議を皮切りに、公務員年金の改編を主導してきた末、今月2日、野党と「多く納めて少なく受け取る」公務員年金の再編案の合意を道き出した。この時も、「国民年金の名目所得代替率50%に引き上げ」という公務員年金実務機構合意文が問題になったが、金代表はこれを「尊重する」という表現で受け入れた。

 ところが、金代表のこの決定は、すぐに党内の強い反発にあった。ユ・スンミン院内代表が「50%」という数値を国会規則に明記せず、その内容が盛り込まれた実務機構合意文を国会規則に付ける折衷案を、オ・ユングン新政治民主連合院内代表と用意したが、党内の反発を抑えられなかった。特に、反対派の議員たちは党内一部の朴槿恵(パク・クネ)系であり、数としては少なかったにもかかわらず、キム代表はこの“少数強硬派”を説得できなかった。このため、ユ院内代表は、議員総会で折衷案を採決で通過させようとしたが、党の内紛と大統領府との対立を懸念した金代表の反対で、実現しなかった。

 公務員年金をめぐる事態についても、手を拱いて徹底的に第3者的な態度で一貫した大統領府は「無責任だ」との批判を買っている。朴槿恵大統領は1年2カ月前、公務員年金改革を国政の最優先課題として提示し、なにかにつけ「速やかな処理」を求めセヌリ党を圧迫した。しかし、大統領府は野党や利害関係者である公務員労組の説得に真剣に努めたこともなく、創造的な代案も出さなかった。ずっと「時限内の処理」という言葉だけ繰り返し、与党を圧迫してきたのだ。

 さらに、与野党が2日に劇的に成し遂げた合意に対しても、大統領府はすぐに「国民年金まで合意したのは越権」と批判した。朴大統領は、公務員年金の合意には、「当初、国民が期待した水準には及ばず非常に残念に思う」として、国民年金引き上げ合意にも「国民の同意を求めなければならない問題だ」と述べた。大統領は、立法府が用意した法案が適切ではないと思ったら、拒否権を行使すればよい。しかし、朴大統領は反対の意向を明確に示さないまま、国民を相手に「政治論評」をするだけで、成功は「大統領府のおかげ」、失敗は「与野党のせい」にし、無責任な態度で一貫している。

 このような状況を悪化させたのは、セヌリ党と大統領府との疎通の不在だった。お互いの真意が何なのかわからず、混乱が拡大したのである。合意案の国会処理をめぐって一日中党内で混乱が生じた6日にも、大統領府は党指導部に「党にお任せします」というあいまいな態度を見せたと伝えられている。また、金武星代表など指導部が議員総会で「大統領府も交渉過程をすべて知っていたのに、なぜ今になってこのような態度を見せるのか」と不満を表したのに対し、大統領府は「十分に把握していない」という反応を見せた。政界の元老は「公務員年金問題においては、大統領府がまさに当事者なのに、朴大統領は他人事のようにコメントするだけだった」とし「当事者意識が全くない」と指摘した。

 大統領府は7日にもキム・ソンウ広報首席を通じて「政界が本当に国民のことを考え、国民のための政治をするなら、公務員年金改革を先に行ってから、国民年金は、国民の各界各層の意見を集約し、財政の健全性を確保しながら、老後の所得保証機能を強化するための方策を導き出せばいい」とし、分離処理を要求しだ。セヌリ党と新政治民主連合がこの日、「公務員年金の改編と公的年金の強化は一緒に推進する」とし、5月2日の合意は有効であると確認したことを真っ向から否定する要求だ。

 野党も無責任という批判を免れない。何よりも文在寅(ムン・ジェイン)新政治民主連合代表が終盤に「50%明記」に固執するあまり、交渉自体を危うくしたという指摘がある。野党では、「与党の行動に対する不信感が溜まっており、最小限の“安全弁”を確保する必要があった」と説明する。しかし、国民年金の改編は、方向と目標レベルを定める十分な時間を置いて、利害関係者が参加する中で意見を調整しなければならない事案であることから、(野党が交渉を)過度に“対決局面”に追い込んだと批判が出ている。

 同連合が、国民年金の改編を9月の定期国会で仕上げることを目標に掲げたのに対しても、無理な日程という指摘が出ている。野党のある初当選議員は「公務員年金の改編も社会的合意機構を設置して6カ月近くの時間がかかったのに、国民年金については9月初めに処理期限を決めて、意欲だけが先走りしているようだ」と指摘した。公務員年金の改編議論の序盤、野党は大統領府と与党が「4月の国会」で期限をつけたことについて強く反発した。しかし、国民年金の問題では逆に期限をつけように与党を圧迫したのは、矛盾する態度と思われる。任期終了を控えたオ・ユングン院内代表など指導部と、確実な成果をあげなければならないという特別委員会委員の焦りが、状況をここまでややこしくしたのではないかと指摘される。

ファン・ジュンボム、イ・セヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-05-07 21:45

https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/690311.html  訳H.J

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