ほとんどの患者が延命治療を受けている
癌患者のホスピス利用は13%だけ
ホスピス施設が不足なうえ
医師も処罰を恐れ治療中断できず
福祉部「回復不能時は中断」する法案
ソウル・江北区のキム氏(74)は普段から子供に、治療が不可能な状況になれば心肺蘇生術など延命治療をするなと口癖のように話している。「テレビなどで人工呼吸器を付けたり心肺蘇生術を受ける患者を見ると、家族にまともに意思表明もできず惨めに死んでいくというのに、そこまで生き長らえる必要があるだろうか。普段住んでいる家で家族に看取られて最期を迎えたい」
キム氏だけでなく大多数の高齢者は無意味な生命延長治療を望んでいないことが明らかになった。9日に保健福祉部が発表した「2014年高齢者実態調査結果」(全国65歳以上の高齢者1万452人を面接調査)によると、10人のうち9人(88.9%)が延命治療に反対した。賛成意見は3.9%だけだ。
しかし現実は違う。延命治療の有無を把握する公式統計資料はまだないが、死亡者の死亡場所によって推定することはできる。統計庁が発表する「死亡場所」の変化推移では、2004年は病院内での死亡者の比率が46.4%だったが、2014年には73.1%(暫定分)に上がった。特に昨年の重症癌患者は75.3%が病院で亡くなっていた。自宅で亡くなった比率は同じ期間に38.8%から16.6%に減った。
現在の法律と医療の現実からみて、病院で亡くなった患者の大部分は延命治療を受けたものと推定される。現在の病院利用者のうち、無意味な生命延長治療ではなく末期患者の苦痛を減らし生活の質を高める「ホスピス緩和医療」(ホスピス)を受けることができる患者はかなり制限される。癌管理法により癌患者だけがホスピスを利用できるうえ 癌患者もほとんどが一般病院で死亡するためだ。健康保険政策研究院が出した報告書によると、韓国の癌死亡者のホスピス利用率は2013年現在12.7%だ。残りの87.3%の癌患者は死亡する時まで病院などで抗癌剤治療など延命治療を受けていた確率が高い。
ユン・ヨンホ ソウル大医大教授は「延命治療に代わるホスピス施設や人材が不足していて、やむを得ず既存治療に依存している状況」だとし、「今年7月からは緩和医療にも健康保険が適用され経済的負担は減ることになったが。人材や施設がかなり不足し限界がある」と指摘した。延命治療は緩和医療より診療費が40%ほど高くつく。
医師や病院側にも延命治療に頼るしかない事情がある。1997年にソウル市内のボラメ病院は、患者の妻の希望で患者の帰宅を認めたが、患者が死亡すると医師が刑事処罰を受けた事例がある。この事件に対する2004年の大法院(最高裁)の確定判決後 医者は回復の可能性の有無と関わりなく延命治療をする他ない状況におかれた。チョン・トンリョン保健福祉部生命倫理課長は「回復が不可能な患者は病院内に判定委員会を設け、延命治療を中断できるようにする内容の法律制定を推進中」と明らかにした。
患者の保護者の求めでなされる延命治療も少なくない。両親が死亡する時まで治療をし続けなければならないという伝統的な孝行の観点からされる決定でもあるが、治療を中断すれば受けるかもしれない非難の視線を意識した場合も多い。
韓国語原文入力:2015-04-09 21:48