中国が劉建超(リュ・ジェンチャオ)外交部長助理の訪韓を機に、在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配置に反対する動きを本格化している。これに対する韓国と米国の対応もますます断固となっている。韓米はこれまで「まだ決定されたことも、韓米間の協議もなかった」と慎重な姿勢を示したが、今は「口を挟むな」と対決の姿勢を鮮明にさせている。在韓米軍も最近THAAD配備候補地の調査を行ったことを初めて確認するなど、(配備に向けて)スピードを上げている雰囲気が感じられる。
いますぐに中国が具体的にどのように対応するかは速断できない。しかし、中国は米国のミサイル迎撃手段であるTHAADが朝鮮半島に配備されると、自国の軍事安全保障の利益を損なう可能性があると判断しているため、黙って見過ごせない事情がある。
中国が具体的な反対の理由を公開したことはないが、中国は在韓米軍のTHAADが有事の際、米国の戦力投射を遮断するための「アクセス阻止・エリア拒否」(A2 / AD)戦略を狙っていると疑っているとようだ。アクセス阻止・エリア拒否戦略は、台湾や尖閣(釣魚島)紛争など有事の際、米軍戦力の接近を遮断し(アクセス阻止)、米軍の効果的な起動作戦を阻もう(エリア拒否)とする戦略だ。このため、中国は東風(DF)-21弾道ミサイルと新型対艦巡航ミサイル(ASCM)、核推進潜水艦などを開発配置し、米海・空軍戦力の進入を「第2の島鎖線」(海上防衛線)と「第1の島鎖線」を基準に順番に阻止するというシナリオを用意していることが分かった。
注目されている部分は、中国のこのようなアクセス阻止・エリア拒否の打撃対象に在日米軍基地だけでなく、在韓米軍基地も含まれるという点だ。中国は特に、 烏山(オサン)と群山(クンサン)空軍基地が米空軍戦力の発進基地になることを懸念し、この場所をミサイルで奇襲して無力化するという戦略を立てていると伝えられた。実際、中国は在韓米軍基地が対北朝鮮抑止力だけでなく、対中国牽制手段として機能すると疑ってきた。韓米が2006年1月、在韓米軍の朝鮮半島への自由な出入りを保障した、いわゆる「戦略的柔軟性」に合意してから、中国の疑念はより大きくなったという。在韓米軍が固定配置された軍ではなく、米軍の必要に応じてどこにでも展開できる戦力であることが公式化されたからだ。
米軍も、このような中国のアクセス阻止・エリア拒否戦略に対抗するため、エアシー・バトル(ASB)の概念を設けている。空中、地上、海上、宇宙及びサイバースペースにまたがる統合作戦として、中国のアクセス阻止・エリア拒否を突き抜けて、効果的な戦力投射を確保するというものだ。ここには、米軍の後方部隊と基地を防護するための努力も含まれている。米国は、実際2012年にはエアシー・バトル室まで設け、エアシー・バトルの概念をより精巧なものにしている。
このように、米中間の軍事安保戦略が鋭く対立している状況で、在韓米軍がTHAADを配備すれば、中国は在韓米軍基地を牽制する手段を失うことになると懸念しているのである。中国がTHAADに反対する理由として、地域の平和と安定、戦略的なバランスのへの悪影響などを挙げるのはこのためとみられる。
北東アジア全体を見ても、在韓米軍がTHAADを配備すれば、中国は有事の際、在韓米軍基地に対する牽制手段を新たに確保するために軍事的対案を探す動きに出る可能性が高い。こうなると、米中間の軍備競争を超え北東アジアの軍備競争に拡大しかねないという懸念も出ている。軍当局者は、「中国の反対がこれまで知られているように、単にTHAADのX バンドレーダーが中国内陸まで覗けるからだけではない」とし「米中間の軍事安保戦略の核心的な利害関係という大きな枠組みから捉えなければならないというのが軍当局の判断だ」と述べた。
韓国語原文入力: 2015.03.19 19:48