「知識経済部は海外資源開発の力量強化のために、資源開発専門の公企業(石油公社、鉱物資源公社)が参加する資源開発ファンド(私募型投資専門会社、PEF)を造成し、余裕資金が海外資源開発事業に多く投資されるよう努力しています。 これと関連して2つの資源開発ファンドを推進中でありますが、すでに参加されたトロイカ(1号)海外資源開発ファンド(産業銀行コンソーシアム)に加えグローバルダイナスティー(2号)ファンドに、国策金融機関である貴銀行の関心と積極的な参加をお願い致します」
2010年9月24日だった。 今は「産業通商資源部」と名前が変わった知識経済部(知経部)の長官が、公共機関である輸出入銀行長宛てに送った公文書の一部だ。「資源開発ファンド関連協力要請」なるタイトルが付いている。 19日ハンギョレがパク・ウォンソク正義党議員室を通じて受け取った資料によれば、輸出入銀行(輸銀)は2カ月ほど過ぎて、拡大与信委員会を開いた。 委員会は満場一致でファンドに100億ウォンを投資することを議決する。 輸銀は委員会にかけた「海外資源開発ファンドに対する投資」案件について、ファンドへの参加理由をこのように明らかにした。「政府の海外資源開発活性化政策と関連、知識経済部の当行宛のファンド参加要請に従い…投資参加」 当時の知識経済部は、現在、経済副総理兼企画財政部長官を務めるチェ・ギョンファン副総理が長官だった。
輸銀はこれに先立ち、2009年12月に設立された1号資源開発ファンドにも500億ウォンを投資することを約定した。この約定を結ぶ3カ月前にも、知識経済部長官は輸出入銀行頭取宛にファンドへの参加を要請する公文書を送った。 たった1枚の公文書だったが、知識経済部長官の職印は公共機関の資金数百億ウォンを簡単に動かすだけの力があった。 収益に対する合理的な期待が投資を導いたのでは全くなかった。 輸銀はファンド投資の必要性として、収益ではなく「我が国の自主開発率向上」を挙げた。
2010年9月、輸出入銀行に舞い込んだ
「資源開発ファンド協力要請」の公文書
輸銀与信委「知経部の要請により…」
100億ウォンの投資、満場一致で決定
MB政府が公文書を送る直前に
輸銀が投資できるよう法を変え
韓電も公文書を受取った翌日に「300億投資」
産業銀行・政策金融公社も“脇役”
輸銀は金を出しただけの“脇役”だった。 “企画者”は李明博(イ・ミョンバク)政府だった。 政府はすでに公文書を送る前の2009年4月に輸銀が資源開発ファンドに投資できるよう輸銀法施行令を変えておいた。“腕章”は知識経済部がはめた。 知識経済部は同年1月にファンド造成を決定。 海外資源開発の活性化に向けて民間の浮動資金を新規投資財源に積極的に活用するという大層な名分だった。 以後、事は一瀉千里で処理されていった。知識経済部は、国民の税金1100億ウォンをファンド出資の用途で石油公社や鉱物資源公社に割り当てた。 計1兆ウォンを掻き集めてファンドに入れるという野心に満ちた計画を立てた。 2009年12月に設立された1号ファンドには5459億ウォン、翌年8月に設立された2号ファンドには1340億ウォン規模の約定が結ばれた。 しかし、実際に出資された金はそれぞれ3258億、300億ウォンだ。 約定額の半分をやや上回る水準だ。
ファンドは米国テキサスとカナダ西部、英国の石油・ガス田などに投資された。 ファンド1号、2号いずれも2013年末基準でそれぞれ25%、26%の評価損失を記録した。 以後にエネルギー価格が急落する傾向を考慮すれば、現在、ファンドの元金のほぼ半分(1779億ウォン)が“蒸発”(評価損)した可能性が高い。 自主開発率向上という名分もこじつけだった。 輸銀は昨年パク・ウォンソク議員の質疑に「有事の際、資源の国内導入のためには他の株主の同意が必要な点を考慮すれば、現実的に困難な側面がある」と答えた。
輸銀だけでなく、産業銀行、政策金融公社、韓国電力も、政府の“強権”のもとでファンドに金を投じたが、大きな損失を被った。 国策銀行の産業銀行や政策金融公社は、ファンドにそれぞれ2500億ウォンと500億ウォンの出資を約定した。 赤字にあえいでいた韓電も、1号、2号ファンドに計300億ウォンを投じることにした。 やはり、どちらも知識経済部の公文書が通達された後になされた決定だった。 知識経済部はチェ・ギョンファン長官時代の2009年11月18日、韓電社長宛に長官名義の公文書を送り、資源開発ファンド造成に協力を要請した。 知識経済部傘下の機関である韓電は、翌日理事会を開いて「海外資源開発ファンド出資」を満場一致で議決した。 匿名を要請したある公企業幹部は「(ファンド加入は)公文書を受取って決定したものだ。 政府が推進する事業について、できませんと言える公共機関が大韓民国にあるだろうか? ない」と話した。
政府の影響下にあるポスコも、ファンドに200億ウォンの出資を約定した。 ファンドには一部の純粋な民間企業も参加したが、投資金額の大半は、国民が納めた税金、あるいは損失が出れば結局税金で埋めることになる公共機関の資金だった。 李明博政府による海外資源開発事業の無理な推進でもたらされたファンドの“損失”は、国民が払わなければならない“費用”となったわけだ。
チェ・ギョンファン副総理が知識経済部長官を務めていた当時、エネルギー公企業が知識経済部に申告した海外資源開発事業は全部で21件だった。 このうち石油公社のカナダ・ハーベスト事業、オーストラリアのGLNG事業や、ガス公社のカナダ・ホーンリバーとウエストカットバンク事業、韓電のカナダ・デニソン事業などは、不良資産買い入れ及び投資費増額などにより、問題事業として挙げられている。 これら21の事業にこれまで投資された資金は13兆785億ウォンであり、当期純損失(2014年6月基準の累積、投資持ち株分のみ反映)は2兆1918億ウォンに上る。