それでは、クレヨンポップはどうしてこのストライキ現場で
公演することになったのでしょうか?
集会が行われた3日は朝から夜まで雨が降り続けていました。集会は午前9時から5時まででした。この日デモに参加した人は警察推算で1万人、主催側推算は4万人で、総合運動場をぎっしり埋め尽くすにはやや足りない人数でした。クレヨンポップは行事の終盤の午後4時頃に登場して、20分余りヒット曲『パパパ』をはじめ4曲を歌いました。
ナ・ギサン金融労組教育文化広報本部長は「労働組合闘争の経験がない若者たちを現場に誘導し最後まで残っていられるように考えた方案で、若い世代が好きな文化コンテンツを集会に含めようという提案に従ったものだった」と説明しました。 労働組合の集会はとても固くてつまらないというこれまでの認識にも変化を与えようということで、ガールグループと交渉してみようという話が出たということです。
多くのガールグループの中で、論議になったこともあるクレヨンポップを選定したことは意図的ではないかという視線に対して、金融労組は否定しました。ナ本部長は「場所の交渉や舞台セッティングなどを進行する企画業者に、予算内で若くて溌刺とした調子の(大衆歌手)と交渉してほしいと頼んだが、どんなグループと交渉するかについては何も話さなかった」として「私も行事の前日(2日)になってクレヨンポップが出演予定だという事実を知ったし、“イルベ”論議があるグループだということさえ知らなかった」と話しました。一部から提起されている“ノイズ マーケティング”ではないかという主張に対しては「意図せざる面で注目を浴びることになった」と困っていました。
クレヨンポップの所属会社も当惑しているのは同様です。クロム・エンターテインメントでは「交渉当時“金融労組お祭り広場”という行事名で契約した。ストライキのための集会ということは現場に到着して初めて分かった」として「10月に正規アルバムの発売を控えて活動を再開した時点で、過去の“イルベ論議”まで再び話題になって当惑している」と明らかにしました。
3日のストライキ集会では開始当初から「午後にはガールグループのクレヨンポップが公演予定なので、最後まで参加して見守ってほしい」という放送も流れたといいます。ストライキ集会の参加率はそれほど高くはありませんでした。金融労組側では「支店長がストライキに参加する職員に直接電話して人事上の不利益を話すなど、ストライキ妨害が行われている。大手の保守マスコミが“貴族ストライキ”と追い立てる一方で、政府が銀行別に交渉のテーブルに呼び出して一部の銀行は同意して6行だけが残った状態だったために(ストライキ参加率が)低調だった側面がある」と打ち明けました。
実際、金融公企業である企業銀行、産業銀行の職員が最も多く、新韓銀行など一般の市中銀行のストライキ参加率は低調でした。一斉ストライキの参加人員が多くなく、たまたま雨が降ったために銀行を訪れる顧客も多くなかったので、市中銀行も業務に支障をきたさなかったと言います。
「主要銀行が構造調整で生死の岐路に立たされた2000年には、不法集会でしたが約6万5000人が参加したのに対し、今年は合法集会であるのに国策公共機関を中心に(比較的少ない人員が参加して)闘争が行われている」という危機意識が、ガールグループ交渉という“苦肉の策”に一役買ったようです。