白い封筒には5万ウォン札14枚が入っていた。 "家主のおばさんには申し訳ありません。 最後の家賃と公共料金です。 本当に申し訳ありません。" 生の最後の瞬間でさえ、3人は‘申し訳ない’と封筒に書いた。 60代の母親と30代の2人の娘は、金を入れた封筒を残してこの世を去った。
パク・某(61)氏と長女キム・某(36)氏、下の娘(33)が遺体で発見されたのは26日午後8時30分頃であった。 ソウル松坡区(ソンパグ)石村洞(ソクチョンドン)の2階建て一戸建て住宅に付属する半地下の貸部屋だった。 27日午後<ハンギョレ>記者が訪ねて行った3人の部屋は33㎡(10坪)余だった。部屋2つと台所がその全てであった。大きい方の部屋は3人の母娘が息をひきとったふとん2枚と小さなベッドで足の踏み場がなかった。 ベッドの枕元には3人に身を摺り寄せた子猫一匹が縮こまった状態で亡くなっていた。
粗末な部屋の一方の壁に懸けられた額縁の中の写真は、家族の仲むつまじい一時を思い出させた。 12年前に膀胱癌で亡くなったパク氏の夫と、3人の母娘は家族写真の中で明るく笑っていた。 夫と父親を失った3人は2005年にこちらに引っ越してきたという。 保証金500万ウォンに月家賃が38万ウォンだった。長女は糖尿と高血圧を患い、下の娘はコンビニエンスストアでアルバイトするなど、不安定な働き口を飛び交っていた。 長女の手帳には1年前からの糖尿数値が記録されていた。 警察は「金がなくて病院にも行けず、薬もまともに準備できなかったと見られる」と話した。
つつましくパク氏の食堂の仕事で生計を立てていた。 2人の娘は信用不良者なので仕事を見つけることも容易でなかった。 3人の母娘の悲劇は、パク氏が1月末に倒れて右腕をケガしたことから始まった。 3人が去ってしまった家には、パク氏が使っていた‘石膏包帯のひじ掛け’が懸っていた。 パク氏は腕にギブスをしていて食堂の仕事に行けなかった。大きい方の部屋と向かい合った幅1mほどの狭い台所には食べ残したご飯が置かれていた。 ヤカンなどの所帯道具も3人の最期の絶望を見せるように乱雑に散らばっていた。
3人が人生を終えることを決心したのは、去る20日だったと見られる。 部屋から発見された領収書には、20日に600ウォンの稲妻弾2ヶと1500ウォンの炭、20ウォンの封筒を買った記録が残っていた。 稲妻弾は簡易ベッドの下の鍋の中で灰になっていたし、炭はシンク台の上に封筒も破らずに置かれていた。 封筒には70万ウォンが入れられて広間のタンスの上に置かれていた。 昨年初めから50万ウォンに値上がりした今月分の家賃とガス料金12万9000ウォン、電気代・水道代などを見積もったお金だった。
家主のイム・某(73)氏は「今月の電気料金がいくらなのかを知らせようと、一週間前から訪ねて行ったが人の気配がなかった」と話した。 3人の死は、イム氏が「テレビの音が聞こえるようでドアや窓をたたいても何の返事もなく、警察に申告した」ことにより発見された。
家主のイム氏は「母娘は静かな方で交流がなかったし、家に訪ねてくる人は9年間に一人もいなかった」と伝えた。 パク氏の母方のおじは「時々電話をすれば‘元気に暮らしているので心配するな’と言った」と警察に述べた。 死を選択するほどに絶望的状況だったが、3人の母娘は政府の支援も受けられなかった。 松坡区庁関係者は「パク氏が基礎生活受給者や次上位階層として受給申請をした記録は全くない」と話した。
チョン・ファンボン記者 bonge@hani.co.kr