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[現場ズームイン] 偏見の壁を打ち破り働き口を差し出した‘7番房の贈り物’

登録:2014-01-26 21:59 修正:2014-01-27 07:37
出所者を雇用する中小企業 夫妻
去る23日、光州(クァンジュ)広域市、光山区(クヮンサング)河南(ハナム)産業団地にある中小企業(株)ミョンソンで夫チョン・サンドン代表の仕事の手伝いをしている妻のキム・ミョンオ(右)氏が出所者ユン・某氏と話を交わしている。 チェ・ソンウク ドキュメンタリー監督

 毎年平均14万人以上が刑務所の外に出てくる。 出所者にとって最も必要なのは働き口と家族だ。 だが、彼らが直面するのは隣人の冷たい視線と再犯への誘惑だ。 2年前から出所者5人に働き口を提供し、家族のように面倒を見るチョン・サンドン、キム・ミョンオ氏夫妻に会った。 明るく笑う姿が美しい夫婦であった。

光州刑務所、60余社と手を握り
2011年から出所者に働き口を斡旋
部品業者社長チョン・サンドン氏夫妻
5人を雇用し子供のように見守り
"少しずつ変わる姿を見れば満足"

"良く眠れる? 髪も格好よくなったね"

 去る23日午後、全南(チョンナム)順天(スンチョン)刑務所の面会室でキム・ミョンオ(53)氏が尋ねた。窓の桟の内側で囚衣姿のイ・某(33)氏が恥ずかしそうな表情で 「はい」と答えた。 イ氏の囚衣の右側に付いている‘韓国料理調理’のラベルが目についた。 昨年10月、詐欺などの容疑で拘束起訴され2年6ヶ月の刑が確定した彼は、5月に韓国料理の調理士資格証を取るため職業訓練を受けている。

 キム氏は(旧)正月を控えて、どうしても一回イ氏に面会したかった。 キム氏が「なぜ手紙も書かなかったの?」と話を続けた。 イ氏は「お母さんを泣かせたから…」と言葉を濁した後「気持ちがしっかりするまで手紙を書かないことにしました。 それでも聖書を書いた物を集めて差し上げようとたくさん書いています。 ‘詩編’まで書きました」と話した。 イ氏は「社長と皆さま、お元気ですか?」と尋ねた。 同行したキム・ヒョンオ(49)牧師が「韓国料理調理士試験がんばれよ」とイ氏を励ました。

 イ氏は14才の時から10回以上 刑務所を行き来した。このようなイ氏を暖かく受け入れた人がキム氏とその夫チョン・サンドン(54)氏だった。 チョン氏は光州広域市、光山区(クヮンサング)河南(ハナム)産業団地で家電製品の部品を組立てる中小企業(株)ミョンソンの代表理事だ。 チョン氏夫妻がイ氏に初めて出会ったのは2012年3月だった。 チョン氏は「光州刑務所から出所者就職の提案を受けたが、出所者が犯した犯罪項目を見て最初は大いに悩んだ」と打ち明けた。 ところが事務室に出てきて仕事の手伝いをしていた妻のキム氏は積極的だった。 数十年間、教会に通って信仰の力を育ててきたキム氏は、孤児院出身青少年を助けることに関心を持っていた。 オ・スドン(49)光州刑務所就職支援専門担当班チーム長は出所を一ヶ月後に控えたイ氏を連れて工場を訪ねてきてチョン氏を説得した。

 3才の時に孤児院に預けられたイ氏は、小学校を中退して12才の時から‘仕事’を習った。 孤児院を出て孤児院出身の先輩たちと過ごしながら殴られないためにスリになった。 「少年院で6ヶ月位過ごして出てくれば、先輩たちが少年院の正門前で待っていて、車に乗せて先輩たちの家に連れていきました。 悪いことをまた教えて、若しやらなければ私をひどく殴りました。」イ氏が2013年9月にキム氏に送った手紙の中身の一部だ。 20才の時、縫製工として仕事をして「デカイことを一発やろう」という友人の誘いに乗って窃盗行為を働き刑務所に行った。 その後、社会に暫し出てきたが、再び刑務所に行くことを繰り返した。 前科14犯の彼はチョン氏夫妻が経営する工場に就職した。 彼にとってはきちんとした初めての職場だった。 イ氏はチョン氏夫妻が差し出した手を握った。

"いつだったかイ氏が私に‘お母さんと呼んではいけませんか?’と訊きました。 それで‘そうなさい’と言いました。"

 キム氏は「私をお母さんと呼んでから心を開いた。イ氏の話を聞きながらたくさん泣いた」と話した。 イ氏は‘お母さん’を自身のよく行く天ぷら屋に案内し、店の主人に‘うちのお母さん’だと自慢しもした。 キム氏はイ氏が幼い時期を過ごした全南(チョンナム)霊光(ヨングァン)の孤児院も一緒に訪ねた。

2012年3月に出所して8ヶ月間ミョンソンで仕事をしたイ・某氏が再拘束された後、昨年9月にキム・ミョンオ氏に送った手紙。 チェ・ソンウク ドキュメンタリー監督

 だが、チョン氏夫妻はイ氏が就職した後の8ヶ月間は大いに気を揉んだ。韓国法務保護福祉公団が運営する憩いの場で寝起きしながら工場に出退勤したイ氏は、他人の車を運転して追われて捕まり、懲役10ヶ月の刑を受けた。 チョン氏夫妻が合意金を支援して裁判所に嘆願書を出して6ヶ月で仮釈放され出てきたが、まだ2ヶ月にもならない内に再犯の誘惑に勝てなかった。'あまりに情けなくてトイレに入って泣きました。 …お母さん、本当に申し訳ありません。 私をどうか見捨てないでください。’イ氏はキム氏に手紙を通じて「今は希望をもって生きたいという切実な気持ちだけ」と話した。

 刑務所から出てミョンソンで仕事をしている人は計5人だ。 1年以上の勤続者が4人だ。 1人は電子足輪を付けている。 彼らは射出機で洗濯機と自動車部品が生産されれば運ぶ仕事を主に受け持っている。 光州刑務所は2011年から60ヶ所余りの業者と手を握って出所者の働き口を斡旋している。 韓国法務保護福祉公団と共同で就職斡旋、信用回復コンサルティング、宿泊提供などのサービスも提供している。 オ・スドン チーム長は「出所した後、前科の事実を隠して就職し、後になって知られれば業者側からひどく扱われるので、あらかじめ話して就職させることがはるかに良い」として「求人チラシを見て訪ねて行き、出所者の就職をお願いして門前払いされたこともあるが、それでも徐々に多くの業者代表が関心を見せている」と話した。

暖かく手を握ればぬくみが伝えられる。ミョンソン工場でキム・ミョンオ(写真)氏が出所者ユン・某氏の手をぎゅっと握り励ましている。「お母さんを失望させてはだめだよ…!」チェ・ソンウク ドキュメンタリー監督

 ミョンソンで仕事をするユン・某(31)氏も孤児院で育った。 光州の旧高速バスターミナル前に捨てられていた子供を偶然に見て引き取って育てた継父から、小学校1年の時に出生の秘密を聞いて衝撃を受けた。 全南(チョンナム)羅州(ナジュ)で梨農家の小作をしていた継父の助けで実父に会い、妹と暮らした二ヶ月間が一番幸せだった記憶だ。 「お前は私の子供ではない」という実父の言葉に衝撃を受けて、継父の許にまた行った彼は、継母の虐待に耐えられず小学校3年の時に家出した。 地下商店街で悪い仲間に会ってもの乞いをし、飢えた腹を満たすために他人の物に手をつけて嘘をつきもした。 警察の支援で修道院が運営する孤児院に入所して、かろうじて実業系高校を終えた。

 一瞬の感情を調節できずに重犯罪を犯した彼は、2年間を光州刑務所で送った。 ユン氏は2012年にミョンソンに就職した後、独りでワンルームを得て生活している。 月々の給料から一部を控除して積立金を持ち、マイホームを用意しようと誓約貯蓄口座も開いた。 通帳は‘お母さん’キム氏に預けた。 ユン氏は「実父も継父も皆亡くなった。 育てられたお父さんには有難くて、いつも申し訳なく思っている」と話した。

 "私は息子を二人、新しく得たよ。お母さんを失望させてはだめだよ。 分かった?" キム氏はこの日、イ氏との面会に同行したユン氏の手をぎゅっと握り、約束させるように尋ねた。キム氏は「出所者の相当数が欠損家庭出身なので、感情調節が下手だ。 心の扉を開くまで暖かく抱いて待つ。 少しずつ変わって行く姿を見れば私も幸せだ」と話した。

光州/チョン・デハ記者 daeha@hani.co.kr

出所者3年以内再犯率 22%…就職すれば0.35%
雇用企業に恩恵与え、励ますべき

 法務部と各級の矯正機関は職業訓練と就職斡旋プログラムを進めている。 ほとんどの出所者にとって最も至急必要なのは生計問題であるためだ。 2012年2月、韓国雇用情報院が発表したアンケート調査結果を見れば、出所予定者就職支援プログラムに参加した369人の収容者の内、社会生活に対する具体的な計画がないと答えた比率が30.7%であった。 禁固以上の刑の宣告を受けた収容者が3年以内に再服役する比率が22.2%にもなる。

 韓国法務保護福祉公団(理事長イ・チュンホ)は、2011年から出所者の個人別特性を分析して就職準備をさせる‘就職成功パッケージ・プログラム’を実施し、高い評価を受けている。 また、出所者の宿泊・住居・創業支援などのサービスも提供している。 昨年、韓国法務保護福祉公団が調査した資料を見れば、5年間住居支援を受けた1372人中、再犯は50人で再犯率は3.6%、去る3年間宿泊を提供された5509人の再犯率は0.6%に過ぎなかった。 創業支援の場合には1.5%、就職成功パッケージでは0.35%に過ぎなかった。

 "再犯を防ごうとするなら、何より家族たちとの紐が切れないようにしなければなりません。" イ・スジョン京畿(キョンギ)大教授(犯罪心理学)は 「出所後に縁故がなければ数ヶ月以内に再犯するケースが少なくない」として「家族を思って犯罪誘惑に勝ち抜くケースが多いので、国家が受刑者家族のためのプログラムと受刑者の子供に奨学金を支給する方案も検討しなければならない時「と話した。 縁故のいない出所者に対しては小規模施設を運営して‘家族の枠組み’を作らなければならないという指摘も出ている。 イ教授は「仮釈放を増やして関連費用を節減した後、犯罪予防プログラム運営などに予算を投じなければならない」として「前科者という社会の偏見を一瞬でなくすことは難しい。 出所者を就職させた企業に対しては一部恩恵を与えて励まさなければならない」と語った。

光州/チョン・デハ記者 daeha@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/area/621522.html 韓国語原文入力:2014/01/26 20:35
訳J.S(4391字)

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