本文に移動

<医療営利化論難広がる】医療投資活性化政策の問題点は何か...「医療子会社、患者負担拡大し健保の弱化もたらす」

登録:2014-01-07 17:21 修正:2014-01-08 08:37
医療法人、附帯事業・営利子会社許容
子会社の健康食品など過度な処方に
医療賃貸業は病室料金値上げのおそれ
医療の両極化拡大
高価な検査・皮膚患者の化粧品など
民間保険依存度高め、健康保険脅かす
ソウル蓮建洞(ヨンゴンドン)のソウル大病院のある病室で、看護師が患者の床ずれを防ぐために体を揉みほぐし面倒をみている。政府の医療営利化推進に伴い、基本的な病院医療費も高くなる恐れが大きいという指摘が出ている。イ・ジョンア記者 leej@hani.co.kr

医療営利化論難を提起する側の基本命題は「医療市場で患者は弱者だ」である。政府の言うように、病院の赤字を埋めるために営利子会社を設立する場合、患者の費用負担を増やさずに収益を出すことはできず、これは即ち、医療の質の低下や医療の両極化につながらざるを得ないということだ。韓国は特に、医療分野全体に占める公共領域の割合が微々たる状況であるため、政府の投資活性化対策が「ブレーキのない営利化」に帰結するだろうという憂慮が出ている。

■ 患者の費用負担増加し、医療の質は低下の恐れ

医療営利化論難の核心は、政府の第4次投資活性化対策の中の、非営利医療法人が営利を目的とする子会社を設立して、今まではできないことになっていた各種付帯事業を行なうことを許容するという部分だ。現在は医療法人が、教育や医療機器販売、産後養生院や葬儀場運営など医療行為と直接関連した事業のみ可能と限定されていたが、政府は今後、医療法人も子会社を立ち上げて医療と直接関連のない営利事業もできるようにする方針だ。例えば、医療機関の賃貸業、宿泊業、旅行業、外国人患者誘致業、温泉および浴場業、体育施設運営業などを許容するということだ。

 ウ・ソッキュン保健医療団体連合政策室長は予想される状況について「病院は患者を治療する所から、患者を様々な金儲けに利用する“医療総合商社”となるだろう」と規定する。医療法人の子会社は医療機関賃貸業を通して病室料金の引き上げを行ない、営利法人の医者は患者に必ずしも必要な診療でなくとも子会社の医療機器を利用した過剰診療を受けるように誘導しがちになるという予測だ。当然、患者が払わなければならない費用は増大するわけだ。

 また効果や安全性が検証されていない新しい医療機器と医療用品が“本来の用途”と異なる形で高価で利用される過程で、医療の質が落ちるという憂慮も出ている。子会社が販売する各種補助用具はもちろん、ふとん、まくら、衣服など寝具まで否応なしに使わなければならないかもしれない。子会社の販売する健康食品や健康補助食品、皮膚患者用の化粧品などを、医者の勧めにもかかわらず患者が拒み続けることは容易でない。医者も病院から給料をもらう立場なので、子会社を通じての病院の営利追求要求に対抗することは難しいだろうと専門家たちは見ている。

 市民健康増進研究所のキム・ミョンヒ研究員は「投資活性化対策は医療の商業化の極端な形態で、結局国民に医療費をより多く支払わせて医療産業を活性化しようということに要約される。患者の医療費負担が上がることはもちろん、不要な医療サービスを強要されることになって各種副作用に苦しむなど、二重の苦痛に直面することになるだろう」と指摘した。

 投資活性化対策には医療法人が他の医療法人を買収したり、合併できるように許容する案と、新薬や新しい医療機器の許可手続きを簡素化する案も盛り込まれており、このような憂慮をさらに増幅させている。

■ 健康保険まで弱体化の憂慮

保健福祉部は今回の対策が医療法人の経営難を減らすためのものに過ぎず、医療の公共性を損なうことはないと主張する。イ・チャンジュン福祉部保健医療政策課長は「第4次投資活性化対策に含まれている医療政策は、現在経営難に苦しんでいる医療法人が附帯事業を通じて利益を出すなど、経営上息がつけるようにするための処置で、医療法人の子会社運営で得た収益は医療法人に再投資するようガイドラインを設ける計画だ」と述べた。

 しかし、保健医療関係の市民団体と関連専門家たちは、ただでさえ公共医療の比重が法外に低い韓国の医療現実で、病院が子会社を通じた営利追求に乗り出すことになれば健康保険の存在基盤まで脆弱になるだろうと指摘する。患者が現在直接支払っている医療費以外にも各種の健康食品や化粧品、高価な検査など、国民健康保険が適用されない分野の医療費負担が大幅に増えることになれば、民間保険に対する依存度が高まらざるを得ず、結局、健康保険の縮小につながる恐れがあるという懸念だ。これは即、医療の両極化の拡大に帰結される恐れが大きい。チョン・ヒョンジュン無償医療運動本部政策委員長(リハビリ医学科専門医)は「曲がりなりにも公共財として機能している医療を、患者のポケットをはたく様々な収益の道具にしようというのは実質上の医療民営化である」と話した。

 韓国はすでに、全医療費のうち患者本人が直接負担する金額を除いた公共医療費の割合が55.3%(2011年基準)で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均(72.2%)より16.9%ポイントも低いなど、すでに高度に民営化した医療システムを備えている。ここに営利化の余波で健康保険まで影響を受けることになれば、医療の公共性が急激に崩れるかもしれない状況だ。

 チョン委員長は「李明博(イ・ミョンバク)政府時代に(一部の経済自由区域などに)営利病院の設立を許容したのは、新たにいくつかの営利病院ができるという問題だったが、朴槿恵(パク・クネ)政府の営利付帯事業の許可は、現在の非営利医療法人病院が全て営利事業を営めるように許容したものなので、問題が一層深刻だ」と述べた。

キム・ヤンジュン医療専門記者、ソン・ジュンヒョン記者 himtrain@hani.co.kr

<医療民営化、営利化>

政府が推進中の医療法人の営利子会社許容は、医療機関の所有構造を公共から民間に変更するわけではないので「民営化」よりは「営利化」と呼ぶ方が正確な表現だ。韓国の公共病院の病床数の割合は全体の10.4%程度であり、経済協力開発機構(OECD)平均(75.1%)にも大きく及ばない最下位で、これ以上民営化する余地もほとんどない水準だ。しかし、医療営利化が結局、健康保険体系を弱化させ、民間保険への依存度を高めるなど、医療体系の公共性を揺さぶることになるという点で「民営化」を内包しているという指摘が出ている。

https://www.hani.co.kr/arti/society/health/618422.html 韓国語原文入力:2014/01/05 21:33
訳A.K(2829字)

関連記事