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"不当解雇‘10年訴訟’…正常国家と言えるか"

登録:2013-04-18 22:51 修正:2013-04-19 07:05
‘184日間 鉄塔籠城’現代車社内下請け労働者チェ・ビョンスン氏の怒り
チェ・ビョンスン氏と現代車蔚山(ウルサン)工場送電鉄塔に上がり18日で184日間の高空籠城を行っている現代車社内下請け支会チョン・ウィボン事務局長がこの日フェイスブックにあげた写真。 一週間前に他の組合員家族が鉄塔籠城場の写真で作りプレゼントした500ピースのパズルをチョン事務局長がこの日籠城場内のテントで完成させた後、寝袋の上にのせて撮った。 チョン・ウィボン氏提供

3年前、最高裁で不法派遣認定後
中労委 "不当解雇に該当" 決定
現代車 不服 "決定取消" 行政訴訟
裁判所 "現代車 憲法訴訟の判断を待とう"
‘9年目9級審’宣告 また先送り

 鉄塔高空籠城184日目をむかえた現代自動車蔚山(ウルサン)工場社内下請け労働者チェ・ビョンスン(37・写真)氏は、18日昼食用に鉄塔の下から引き上げたキュウリの冷たいスープとキムチがうまく消化できずに苦労した。 最近自ら命を絶った蔚山工場嘱託職労働者コン・某氏事件と起亜自動車光州(クァンジュ)工場で焼身した社内下請け労働者キム・某氏事件のためだ。 彼は<ハンギョレ>との電話通話で「会社が不法派遣労働を隠す過程で起きた間接殺人」とし悔しさを隠せなかった。

 鉄塔に上がっているチェ氏をより一層孤立させているのは大韓民国の司法府だ。 ソウル行政裁判所はチェ氏の不当解雇訴訟に対する宣告を本来この日に下すことにしていたが、2日前になって延期を通告してきた。 6月13日に憲法裁判所が旧派遣法の雇用擬制条項(2年以上派遣労働をした場合、正規職になったと見なすこと)に対する憲法訴訟事件の公開弁論を開くので、その後に宣告を先送りするということだ。 2005年2月、現代車社内下請け業者から懲戒解雇された後、9年目8回にわたる労働委員会と裁判所の判断を受けても不当解雇有無に関する結論が出ず、再び9回目の裁判所決定を待っている彼にとって、法は無用の長物だ。 労働専門弁護士でさえ「不当解雇有無を争うために9級審まで行った事例はただの一度も見たことがない」と言う。 彼にどんなことが起きたのか?

 チェ氏は初めて解雇された後、釜山(プサン)地方労働委員会に「現代車社内下請けは不法派遣であり、派遣法により私は現代車の職員だ。 社内下請け業者が私を切ったことは不当解雇」として救済申請をした。 釜山地労委に続き中央労働委員会も彼の手をあげなかった。 チェ氏は中央労働委の決定を取り消してほしいという訴訟をソウル行政裁判所に提起したが、高等裁判所まで続けざまに負けた。 これまで労働委員会と裁判所は不法派遣ではないと見ており、したがって不当解雇か否かは判断もしなかった。

社内下請け労働者チェ・ビョンスン(37)氏

 そうするうちに2010年7月、奇跡のようなことが起きた。 最高裁がこれをひっくり返したのだ。 最高裁は現代車社内下請け業者には実体がなく、コンベアベルトで正規職労働者と社内下請け労働者が混ざって仕事をしながら現代車の指示と勤労監督を受けている限り、社内下請けは不法派遣に該当すると見た。 これに伴い、事件はソウル高裁に戻り、破棄控訴審を経て2012年2月最高裁で確定した。

 だが、問題はそれでは終わらなかった。 最高裁はチェ氏の場合、不法派遣であることに加え雇用期間が2年を超したので派遣法の雇用擬制条項によりすでに正規職になったと見たが、チェ氏の解雇が不当解雇か否かは判断しなかった。 判決の趣旨を見る時、内容的には不当解雇であることが明らかだが、下級審で不当解雇の有無を扱っていないだけに、これを別に判断しないという形式論理が適用された。

 ボールは再び中央労働委に戻ることになり、中労委は最高裁判決趣旨に則り不当解雇に該当するという決定を下した。 だが、現代車はこれに対し承服せず、昨年5月中労委決定を取り消してほしいという訴訟を再びソウル行政裁判所に出した。 9回目の訴訟であった。

 労働事件で空前絶後な‘9年目9級審’宣告がこの日下される筈だった。 ところがまた、無期限に延ばされたのだ。 ソウル行政裁判所が根拠にあげた6月13日の憲法裁判所公開弁論は現代車がチェ氏に対する最高裁宣告以後に相次いで出した憲法訴訟事件に対するものだ。 資本の執拗な法的対応でチェ氏の訴訟は限りなく引き伸ばされている。 ソウル行政裁判所は、もし憲法裁判所の違憲決定が下されれば、チェ氏事件に対する判断が変わることがありうるという点を根拠にあげた。

 チェ氏は「ソウル行政法院の9回目の決定が今年下半期に下され私が勝ったとしても、現代車は再び高等裁判所に控訴して最高裁に上告するだろう。 結局10年を越える間、11級審まで行って最高裁が私の手をあげたとしてどんな意味があると言うのか。 不当解雇の認定を得るために10年以上も訴訟をしなければならない国が正常国家と言えるか」と話した。 事件を代理しているコ・ジェファン弁護士は「労働事件を数百件やってきたが、憲法裁判所の決定を控えているという理由で宣告を先送りしたのは初めて見る」と話した。

 最高裁判決にもかかわらず法廷争いを継続している現代車の態度も問題だが、労働委員会制度の欠陥が結局‘9年目9級審’という奇怪な状況を作ったという批判も起きている。 労働事件で労働者の権益を緊急に救済するという趣旨で時間・費用の多くかかる裁判所訴訟に先立ち労働委の判断を受けるようにする制度が用意されたが、企業らが労働委決定に承服せずに訴訟に引っ張っていくために、むしろ救済手続きが長期化する逆効果が出てきているということだ。 クォン・ヨングク民主社会のための弁護士会労働委員長は「現代車が内容的判断が終わった事件を形式的な法手続きを利用してずるずると引き延ばしている。 労働委が迅速な救済機能を果たせずに問題を大きくしている。 こうなるくらいなら労働委員会制度を廃止して労働裁判所制度を導入し、法的拘束力を高めて迅速性を期するのがより良い」と指摘した。

 解雇労働者が‘9年目9級審’宣告すらいつ出てくるかも分からずに、鉄塔上で184日間高空籠城を行っている現実は‘大韓民国に果たして正義はあるのか’と問うている。

チョン・チョンフィ記者 symbio@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/583554.html 韓国語原文入力:2013/04/18 20:48
訳J.S(2732字)

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