一夜の追撃戦は映画の一場面を彷彿させた。 2日夜11時53分頃、緊迫した申告が警察112申告センターに受け付けられた。 「車からパチンコか空気銃か、そんなものを撃っている」という内容だった。 「梨泰院ハミルトンホテル前道路」と告げた。
そこはソウル龍山(ヨンサン)警察署梨泰院派出所前でもあった。 申告受付直後、派出所当直をしていたクァク・某警長ら2人はホテル前で外国人が乗っているオプティマ車両を発見した。 派出所の直ぐ前だったのでパトロールカーではなく歩いて近付いた。 ふだん着姿の外国人男性2人と女性1人が乗っていた。
車から降りるよう伝えたが、彼らは頷きもしなかった。 クァク警長らは車両の運転席横のガラス窓を三段棒(警察用こん棒)で打ち下ろした。 「銃器を所持しているかも知れないという申告内容のため、やむをえず(強く)制圧しようとした」と警察関係者は説明した。
それでも彼らは車を始動して逃走した。 夜11時55分頃、彼らは車両を阻み立つクァク警士らを押しのけた。 信号を無視し左折とUターンを繰り返し、緑莎坪(ノクサピョン)方向に走った。 この過程で他の車両4台に突っ込み市民2人をかすめた。 被害車両の運転者は警察に‘ひき逃げ’申告をした。
当時同じ派出所所属のイム・某(30)巡査は、周辺を徒歩で巡回パトロール中だった。 現場状況を見ていたタクシー運転手チェ・某(38)氏がそこを通りかかったイム巡査に叫んだ。 「あそこ…警察官と人を轢いて、轢き逃げだ!」イム巡査はチェ氏のタクシーに乗った。
逃走車両は時速150~160kmで走った。 タクシーに乗ったイム巡査は江辺(カンビョン)北路と聖水(ソンス)駅を経て広津区(クァンジング)紫陽洞(チャヤンドン)地下鉄2号線建大入口(コンデイプク)駅付近まで10分余りの間、彼らをかろうじて追跡した。 3日0時10分頃、行き止まりにぶつかり車両は停まった。 タクシーから降りたイム巡査が降車を要求し近付いた。
外国人はまたも応じなかった。それどころかイム巡査に向かって4回も前進と後進を繰り返しながらぶつかってきた。 イム巡査は左膝と足の甲を負傷した。 「ストップ! 止まれ! ストップ! 止まれ!」大声を出したイム巡査は空に向かって空砲弾一発を撃った。 タクシー運転手チェ氏は「米軍車両がわざと後進・前進を繰り返しながら警察官を殺そうとしているような状況だった」と証言した。
イム巡査がタイヤを狙って実弾3発を発射したが、車は止まらなかった。 この時、車両の運転者が肩に銃で負傷したが、イム巡査らは心の余裕がなく、そのことは分からなかった。 かろうじて気が取り直したイム巡査とチェ氏が再びタクシーに乗り後を追ったが、他車が間に挟まり、それ以上追撃できなかった。 3日0時25分頃であった。
車両番号を追跡した警察は、逃走した外国人の正体を明らかにした。 車両の所有主は駐韓米軍所属R(26)下士であった。 3日未明、米軍部隊内の病院に肩に銃創を負ったR(23)一等兵が入院した事実も把握した。 行き止まりでイム巡査を轢いた彼らは治外法権地域である米軍基地内に逃げたのだ。
車両の所有主はR下士だったが、この日運転席にはR一等兵が座っていた。 R下士の妻と推定される米国人女性軍務員も一緒に乗っていた。 午前9時頃、龍山警察署に出頭し略式調査を受けたR下士と女性軍務員は「アラブ人に銃を撃たれ車を奪われた」と述べたという。
彼らを追撃したイム巡査は現在病院入院中だ。 警察関係者は「3年目くらいの若い巡査が銃撃戦まで行い負傷した状態なのでからだと心を落ち着ける時間が必要だ。 一日か二日後、当時の状況について言論に説明できるだろう」と話した。
警察は梨泰院の事件現場周辺で空気銃弾を発見したが、R一等兵一行と直接関連したものかは確認されていないと明らかにした。 警察はR一等兵を特殊公務執行妨害致傷と道路交通法違反などの疑いの被疑者身分で、R下士らは参考人資格で4日午前までに出頭するよう要求した状態だ。
パクチョン・ギョンス駐韓米軍犯罪根絶運動本部事務局長は「米軍が警察官にまでぶつかって逃走したということは‘韓国では罪を犯しても後腐れない’という駐韓米軍の認識が変わっていないことの反映」と指摘した。
オム・ジウォン、ホ・ジェヒョン、チョン・ファンボン、チェ・ユビン記者 umkija@hani.co.kr