原文入力:2011/07/12 21:19(1724字)
ホ・ミギョン記者
メディア展望台
←チャン・ヘンフン 言論人・言論広場 共同代表
不正を見たら "怒れ" と叫んだフランスの元老レジスタンス活動家 ステファン エセルの話が革命の嵐を起こしている。人々はもはや不正権力を傍観してはいない。怒り行動する。不道徳な言論権力に対しても同じことだ。去る10日、言論財閥ルパート・マードックが168年の歴史を持つロンドンの日曜新聞<ニュース オブ ザ ワールド>を廃刊したことも、収益を上げるためには言論倫理などには関わらない不道徳な新聞に対する英国国民の怒りの力の結果だった。 民主市民の怒りが不道徳な言論財閥に向かったという点で世界的な関心を引いている。
マードック新聞の原罪は扇情的な話題を探すために私立探偵までを雇用し芸能人、政治家など各界名士の携帯電話通話を不法盗聴(ハッキング)してきたことにある。この新聞は2006年、王子ウィリアムの敏感な通話内容をハッキングしたことが露見し、王室担当記者と探偵が懲役刑を宣告された。新聞はその後、盗聴はしなかったと主張しているが最近まで4000件から7000件に及ぶ盗聴をしてきたという容疑を受けている。デビッド キャメロン総理が議会で盗聴事件を公式調査すると発表したのもそのためだ。
<ニュース オブ ザ ワールド>は単純な盗聴にとどまらなかった。新聞は2002年に拉致され殺害された13才の少女 ミリ タウルロの音声メールをハッキングし音声ボックスに保存されていた通話内容を一部削除さえした。そのために少女の両親は娘がすでに死んだことを知らず まだ生きているだろうと考え、そのために永い歳月にわたり精神的な拷問を受けなければならなかった。捜査にも支障があった。こういう事実が最近<ガーディアン>に報道されるや、新聞の通話ハッキングを非難する抗議が激しくなり、下院は盗聴問題を扱う特別会議を開くことになった。
このように新聞の盗聴スキャンダルが明らかになり市民社会がツイッターやフェイスブックのようなソーシャル メディアを利用して行動に立ち上がった。<ニュース オブ ザ ワールド>に広告を出す企業幹部たちのEメール住所を作成しグーグル文書に上げた。数百人がツイッターを通じてこれらの幹部に新聞の倫理問題を非難し広告掲載を中断したり取り消すことを説得した。これに対し企業幹部200人余りが広告を中断したり再考すると答えた。マードックが<ニュース オブ ザ ワールド>の廃刊を決めた決定的な要因となった。ツイッターとフェイスブックが、言論倫理を無視し利益だけを前面に掲げ理念的に保守勢力の尖兵の役割をしていた言論財閥を懲らしめる役割を果たせることを示した事例であった。
言論の脱線を抑制する方法として こういう媒体に広告を掲載できないよう説得する運動の始まりは韓国の言論消費者主権運動(言消主)だった。だが‘言消主’運動は朝中東(朝鮮日報・中央日報・東亜日報)が市場原理に抵触するとし集中攻撃をしたために挫折した。しかし、英国ではこのような運動が国民の表現の自由を実現する正当な行動と認定されているということが<ニュース オブ ザ ワールド>事件で立証された。この運動が市場秩序をかく乱しているなどと言う英国の言論はなかった。当事者のマードックもこの運動の正当性に異議を提起することなく、その結果を受け入れた。広告中断キャンペーンをリードしたメリッサ ハリソンの説明どおり、この運動の「目的は新聞を廃刊させることにあるのではない。…その目的は私たちの怒りを表現することにある。運動を通じて人々は自分たちが声を持っていることを知ることになった。そしてニュースコーポレーション(マードック)も人々が言おうとする声を聞いた。」言論の使命より利益を優先する言論財閥に対する闘争が力を得そうだ。 チャン・ヘンフン 言論人・言論広場共同代表
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/media/487074.html 訳J.S