原文入力:2011-02-24午後07:09:40(1685字)
←チョン・ナムグ東京特派員
去る2009年1月、検察が‘ミネルバ’と呼ばれたインターネット論客パク・テソン氏を緊急逮捕した時、とても驚いた。世界経済がどのように回るのかを知らずに‘7%成長’を叫び、空振りを繰り返し事実上の外国為替危機を自ら招来した政府が、一人のインターネット論客に腹いせをしようとした発想の幼稚さのためだった。
検察はミネルバパク・テソン氏が2008年12月29日‘政府が金融機関および輸出入関連主要企業にドル買いを禁止しろと緊急公文を送った’などの文で、国家信任度と外国為替市場に悪影響を及ぼしたとして起訴した。ミネルバのその文が出てくる5日前、財政部官僚は記者たちに「輸出入企業と金融機関などにドル買いをしないよう協力要請をした」と話した。私はミネルバの文が政府の動きを‘パロディ’したものだと見ていた。実際に起訴された後、私は彼がインターネットに文を載せた日を前後したソウル外国為替市場の取引額と為替レート変動を詳しく調べてみることもした。本当に残念ながら、彼の文は外国為替市場にほとんど何の影響も与えることはできなかった。
今になってその話をまた取りあげるのは、私が当時そのことを‘幼稚だ’と考えたことがあまり適切でなかったからだ。それは幼稚ということではなく、人間に対する冒とくだった。
参与政府時期に職権乱用疑惑で起訴されたある大統領府出身要人に裁判期間中に会ったことがある。彼は神経衰弱とうつ病に罹り、薬の助けでようやく耐えていた。彼は結局 無罪を宣告された。ミネルバも裁判で無罪を宣告されている。何の誤りもない人が捜査を受け、起訴され法廷に立つのは当事者としては拷問を受けるようなものだ。国家機関の‘誣告’は処罰対象にならないためにそうしたことが悪意のある権力により常に再現される危険がある。
国家情報院は先月キム・マンボク前院長が在職中に取得した機密を漏洩したとして検察に告発した。検察がすぐさま捜査に着手した。キム氏が日本の月刊誌<世界>2月号に‘紛争の海・西海を平和と繁栄の海にするために’という題名で現政権の対北韓政策を批判した文を載せたことが問題の発端だった。月刊誌が発刊され一週間ぐらい過ぎ、保守言論らがこの文を問題視し、保守団体らが相次いで彼を告発しろとの声明を出した。言うまでも無く日本を代表する出版社岩波書店が発行する<世界>を‘左翼指向’の雑誌と責め立てることも欠かさなかった。
検察が実際に彼を起訴するか否かは分からない。だが、その文が検察の捜査にまで至った過程は少し明確にしておく必要がある。何よりもキム氏が<世界>に載せた文は、すでに昨年10月<再び韓半島の道を聞く>(韓半島平和フォーラム編、サムイン社)という題名で韓国で出版された本に載せられたものだという事実ははっきりさせておかなければならない。<世界>編集部はこの文が11月延坪島砲撃事件の後に事件をよく理解する上で役立つと見て、キム氏に翻訳して載せることを要請し許諾を受けたと明らかにした。<世界>には延坪島事件をどのように見るかというキム氏の‘後記’も付け加えられたが、この後記にはウィキリークス暴露資料を引用し李明博政府の対北韓政策を批判しているだけで、国家情報院長在職時期の話は含まれていない。
日本の韓半島支配は不法・不当なものだったという昨年8月‘韓日知識人共同宣言’の日本側の産みの親の一人である岡本厚<世界>編集長は「韓国の情報機関は日本の雑誌は見るが、韓国で出版されている書籍は見ないのか」と反問し「韓国で再び国家による言論威嚇と抑圧が行われていることを深く憂慮する」と話した。単に権力を批判したからと捜査を受け法廷に立つことはなくさなければならない。 jeje@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/465166.html 訳J.S