6月3日に行われる韓国地方選挙は、保守野党「国民の力」が敗北するという見通しが支配的だ。野党が総合成績で勝つと予想している専門家はいない。保守の敗北は気まぐれな民意や選挙戦略の失敗に起因するものではない。保守の無能さに対する10年以上にわたる長期の審判の結果だ。長きにわたり韓国の政治地形を支配してきた「保守は腐敗していても有能だ」という古びた神話は、今回の選挙で終止符を打った。
保守の無能さが国民の頭に深く刻まれたのは、2014年のセウォル号惨事だ。国家の最も基本的な責務は国民の命と安全を守ることだ。朴槿恵(パク・クネ)政権は国家的な災害状況にあって、無気力の極致をさらした。コントロールタワーの不在、右往左往する現場対応、真実を隠蔽する政権の態度は、国民に巨大なトラウマと失望を与えた。「朴槿恵の7時間」は指導者の道徳的堕落と無能さの象徴となった。
2016年、朴槿恵大統領は腐敗したからではなく、無能だったからこそ弾劾された。それまでのいかなる政権も政権末期には腐敗事件で苦しんだが、弾劾されたことはなかった。当時は、チェ・スンシルの見た目がもう少しエリートのようであったなら、大統領の弾劾には至らなかっただろうと冗談交じりに言われた。特に保守陣営が国政壟断を見て抱いたのは、裏切られたという感情と羞恥心だった。自分の選んだ朴槿恵がチェ・スンシルという聞いたことも見たこともない人物の操り人形だったことを確認したときにやって来る「メンタル崩壊」だった。「春香(チュニャン)だと思って選んだら香丹(ヒャンダン)だった(ともに古典『春香伝』の登場人物)」という当時の自由韓国党の大統領候補の一人だったホン・ジュンピョ氏の発言は、この感情を反映したものだ。
文在寅(ムン・ジェイン)政権の失政の反射利益で尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が発足したときこそ、保守にとって有能さを回復する絶好の機会だった。ところが、尹錫悦大統領に比べれば朴元大統領は天女に感じられるほどだった。尹大統領は国民をイデオロギー戦争へと追いやった。大統領室には極右ユーチューバーがあふれた。大韓民国経済は0点台の成長率にまで真っ逆さまに落ち、社会システムは深刻に崩壊した。実用的で合理的な代案政策は失われ、検察出身者による独占とコミュニケーション不在の政治は公共システムの専門性を深刻に傷つけた。即興的な政策のちゃぶ台返しと外交的惨事が繰り返された。頭の中が妻のキム・ゴンヒを救うことでいっぱいだった尹大統領は、違法な非常戒厳で自身と国を奈落へと突き落とした。
保守の大きな錯覚は、自分たちが今も大韓民国の主流だと信じていることだ。保守は最近の3回の総選挙で3連敗しており、大統領選では1勝2敗、地方選でも1勝2敗が目前に迫っている。しかし、彼らには少数者としての切迫感がない。劣勢地域の嶺南(ヨンナム=慶尚道)に「共に民主党」が注いできた努力と時間を、保守の努力と比較してみればわかる。保守の領土は嶺南と江南(カンナム)のみにしぼんでしまったにもかかわらず、湖南(ホナム=全羅道)は「汚らわしいから」行かないというマインドをいまだに抱いている。保守政党を熱烈に支持していた反共右翼は生物学的に退場していっているのに、新たな支持層の発掘には怠惰だ。有能だという神話が剥がれ落ちた後に残ったのは、無能と腐敗、そして時代錯誤のイデオロギー戦争と裏切り者というレッテル貼り、そして不正選挙陰謀論だけだ。
今回の6・3地方選挙は、まさに10年以上にわたる保守勢力の長期的な没落を再確認する手続きだ。有権者はもはや扇動や「安全保障ポピュリズム」にはだまされない。「ユン・アゲイン」と「不正選挙陰謀論」に象徴される極右は、チャン・ドンヒョク代表を代理人として国民の力を掌握している。図らずも保守崩壊のはじまりとなった朴槿恵元大統領が選挙運動に再び登場しており、「裏切りの政治の審判」という言葉が釜山北区甲(選挙区名。国会議員補欠選挙に国民の力のハン・ドンフン前代表が出馬)で鳴り響いた。保守の歴史的退行を告げる光景だ。
気まぐれな韓国の有権者は、次の選挙で保守陣営に一時的な勝利をもたらしてくれるかもしれない。しかし根本的な変革なくして、保守が長期的に権力を握り続けるのは容易ではないと思われる。今回の地方選挙は無能な保守に対する国民の巨大な拒否宣言であり、大韓民国政治は新たな未来へ歩み出すべきだという厳しい歴史の命令だ。保守がこの審判の意味に気づけなければ、長期停滞は避けられない。
地方選挙後、保守では路線闘争が本格化するだろう。しかし、2度の自党の大統領の弾劾からも教訓を得られず、党の主導権維持ばかりに執着する主流派は、今回敗北したからといって簡単には引き下がらないだろう。保守陣営のかなりの数の人が、国民の力のハン・ドンフン前代表が救世主になると期待を寄せている。万が一、彼が党の主導権を握ったとしても、保守の有能さが取り戻せるだろうか。証明すべきことは多い。検事の有能さと政治家の有能さは異なる。
キム・ジュニル|時事評論家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )