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朝鮮半島の巨大な転換…6・3大統領選挙の歴史的意味【寄稿】

登録:2025-05-15 06:52 修正:2025-05-15 09:35
新たに誕生する政権は「中道保守政権」としてのアイデンティティを確固たるものにすることで、右側には守旧ファシスト政党を政治舞台から退場させ、左側には合理的な革新政党が成長できる空間を作らなければならない。そして極端に右傾化したこの国の政治地形を左右が均衡を成す正常な形に戻さなければならない。 

キム・ヌリ|中央大学教授(独文学)
第21代大統領選挙の公式選挙運動が始まった12日午後、ソウル麻浦区の街頭に「共に民主党」のイ・ジェミョン大統領選候補と「国民の力」のキム・ムンス大統領選候補の横断幕がかかっている=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社

 2025年6月3日に行われる大統領選挙は歴史的な選挙だ。大韓民国の歴史上最も「巨大な転換」が予想される年に行われる選挙であるためだ。それは、解放後80年にわたり朝鮮半島を押さえつけてきた冷戦体制が解体される時期に行われる初の選挙だ。6・3大統領選挙で当選した大統領は、朝鮮半島脱冷戦の政治的渦の中で国を導かなければならない重大な責務を負うことになる。光復(日本の植民地からの独立)後、大韓民国を奇形的な冷戦国家に固着させた強固な旧秩序を打破し、新しい時代にふさわしい新しい国家体制を築くことが新しい大統領の手にかかっている。

 今回の選挙で勝った大統領は、まず「冷戦体制」を「平和体制」に変える大転換の時代的使命を担わざるを得ない。2025年は、昨年末のニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたコラムの見出しのように、「トランプ-金正恩の第2幕が世界を揺るがす」年になるだろう。世界で唯一残っている朝鮮半島の冷戦体制の解体が始まるだろう。終戦宣言、平和協定、朝米国交正常化につながる冷戦解体のシナリオが現実のものになる可能性が高い。最近出した筆者の著書『トランプは金正恩に何を望んでいるのか』で予想したように、今秋ドナルド・トランプ大統領の平壌(ピョンヤン)訪問と、続いての慶州アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席が実現すれば、80年間にわたり朝鮮半島を縛りつけてきた冷戦の足かせを解く決定的契機となるだろう。6・3大統領選挙で誕生する韓国の大統領は、トランプ、習近平、石破茂など域内の主要国の指導者が参加するAPECのホストとして世界のマスコミのスポットライトを浴び、一挙に国際的な政治家として浮上するだろう。新大統領はこの機会を積極的に活用し、冷戦時代に慣性化した受動的な姿勢から抜け出し、新しい北東アジア秩序を創出するのに主導的な役割を果たさなければならない。外交のK-イニシアチブを示すべきだ。

 さらに新政権は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の親衛クーデターで根幹から揺らいでいる韓国の民主主義を立て直さなければならない。このため、まず韓国の政治地形を「守旧保守寡頭支配」体制から名実共に「進歩と保守の競争」体制に再編しなければならない。尹錫悦内乱事態とそれに続く与党「国民の力」の騒動は、この政党が守旧保守政党ではなく、守旧ファシスト政党であることを自白したようなものだ。このような反民主的政党が巨大両党体制の一軸を担うということは到底容認できないことだ。クーデターを犯した者を擁護し支持する政党が「最悪の場合でも」再び最大野党になるようであれば、その国は民主主義国家とは言えない。新たに誕生する政権は「中道保守政府」としてのアイデンティティを確固たるものにすることで、右側には守旧ファシスト政党を政治舞台から退場させ、左側には合理的な革新政党が成長できる空間を作らなければならない。そして極端に右傾化したこの国の政治地形を左右が均衡を成す正常な形に戻さなければならない。

 新政権はまた、積極的に社会大改革に乗り出さなければならない。何よりも急がれるのは教育改革だ。尹錫悦内乱事態と医師ストライキ事態は、韓国教育が育てた最高のエリートたちがファシスト的性向を持っているという驚くべき事実を露呈した。ソウル大学法学部「内乱科」出身の法曹人たちと、国民の信頼を失った医師たちは、韓国教育の「破綻」を象徴する。韓国の教室で12年間教育を受ければ、特に「学年1位を逃さない」優等生であるほど、民主主義者ではなくファシストになる公算が大きいという事実は実に衝撃的だ。新政権は教育革命を通じて「死活をかけた戦場」でファシストを量産する極端な競争教育を根本的に改革しなければならない。

 大転換の時代に行われる2025年の大統領選挙は、韓国現代史の重要なターニングポイントになるだろう。現在としては政権獲得が有力視される共に民主党政権が、朝鮮半島脱冷戦の新しい時代的潮流に応え、国際的には大胆なバランス外交を展開し、国内的には果敢な社会改革を成し遂げなければならない。この時代的課題に今回も応えることができなければ、また、その結果「文在寅(ムン・ジェイン)トラウマ」の上に「イ・ジェミョン・トラウマ」が重なるならば、民主党の運命だけでなく大韓民国の未来が奈落に落ちるだろう。

 要するに、6・3大統領選挙は冷戦寄生勢力と脱冷戦平和勢力の対決であり、ファシズム勢力と民主勢力の対決であり、守旧勢力と改革勢力の対決だ。脱冷戦、民主、改革勢力が圧勝し、朝鮮半島の平和、大韓民国の民主主義、韓国社会の改革を必ず成し遂げなければならない。これからの大統領選挙は、永久平和を定着させ、民主主義を守り、社会改革を敢行する「勇気とビジョンの政治指導者」を選ぶ選挙にならなければならない。大統領選挙後に繰り広げられる朝鮮半島の巨大な転換を想像し、胸が熱くなる日々だ。

//ハンギョレ新聞社
キム・ヌリ|中央大学教授(独文学)(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1197225.html韓国語原文入力:2025-05-13 18:4
訳H.J

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