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保守与党は尹錫悦を抱えて大統領選挙ができるのか【コラム】

登録:2025-02-20 06:49 修正:2025-02-22 22:38
与党「国民の力」のクォン・ヨンセ非常対策委員長が17日午前、国会で開かれた非常対策委員会議で発言をしている。左はクォン・ソンドン院内代表=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 戒厳は国家暴力である。合法的に国民の自由を制限する非常措置だ。大統領だけが宣布できる。大統領が戒厳令を乱発すれば独裁者になる。

 韓国の憲法は戒厳令が必要な状況を厳しく定めている。憲法第77条の「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」がそれだ。このような状況ではないのに、戒厳を宣布するのは憲法違反だ。

 大統領は(就任の際)「私は憲法を遵守し」で始まる宣誓をする。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も宣誓を行った。宣誓は誓いである。誓いを破った大統領は追い出すのが当然だ。

 尹錫悦大統領は「国民の力」という保守政党の党員だ。保守は体制を守る理念だ。保守の最も重要な価値は国民の自由だ。尹錫悦大統領は不法戒厳令で国民の自由を抑圧した。保守ではない。極右だ。極右は体制を破壊する暴力だ。

 12・3非常戒厳令は地獄の扉だった。尹錫悦大統領が開いたその扉から極右勢力が押し寄せている。ソウル西部地裁を襲撃した暴徒たち、弾劾反対の太極旗集会とプロテスタント団体の祈祷会に参加する群衆が彼らだ。

 極右派は保守派の一部のプロテスタント教会に根差している。北朝鮮と中国を嫌悪する。イスラムと性的マイノリティを嫌悪する。人種差別と難民嫌悪に基づいた欧州と米国の極右勢力と似ている。極右勢力は大韓民国の民主主義を脅かしている。不吉だ。

 「すべての独裁と国家暴力をファシズムとは呼ばない。大衆の自発性、憎悪と情熱の結集が加わってこそ、ファシズムの特質が生まれる」

 「ファシズムは、国民が国の主人であり歴史の創造者という意識の上に誕生する暴力だ。それは民主主義を蝕み、民主主義を攻撃する」(ハンギョレ、2月12日付「尹錫悦が開いたファシズムの扉」)

 韓国でファシズムが出現し政権を取ることは不可能だと断言できるだろうか。恐ろしい。

 問題は与党「国民の力」だ。与党は12・3非常戒厳直後、尹錫悦大統領を捨てるべきだった。だが、捨てなかった。むしろ抱き抱えた。なぜだろうか。

 極右が結集したためだ。その後を追って保守派が結集したからだ。短期的な支持率回復という誘惑に駆られたためだ。

 クォン・ヨンセ非常対策委員長が「非常戒厳直後に本会議場にいたとしても、非常戒厳解除要求の表決には参加しなかっただろう」と述べた。驚くべき発言だ。「状況を把握できなかったため」と言ったが、結局戒厳に賛成するという意味だ。

 国民の力の重鎮であるナ・ギョンウォン議員は「立法独裁、連続弾劾、予算削減で国政を麻痺させた(最大野党)共に民主党は戒厳誘発者の役割を果たした」と語った。戒厳不可避論だ。これまた驚くべき発言だ。

 どうしてみんなこうなのだろう。政治家の言葉は額面より意図を見抜かなければならない。「国民の力」はすでに早期大統領選挙に突入した。憲法裁判所で尹錫悦大統領を罷免すると予想し、すでに大統領選挙運動をしているのだ。

 必勝戦略は2022年3月9日の再演だ。民主党政権に反対する極右勢力と保守派有権者を最大限集めて勝とうという思惑だ。中道への拡張はあきらめ、岩盤支持層だけを集めても勝算があると思っているのだろう。本当にそうだろうか。

 「国民の力」の大統領選候補は、「大統領に当選すれば、尹錫悦大統領を赦免する」と公約するだろう。極右勢力の票を得るためだ。このような行為は悪魔に魂を売るのと同じだ。

 憲法に違反して非常戒厳を宣布した大統領を赦免するとどうなるだろうか。今後も大統領は、野党が国政に協力しないことを言い訳に、非常戒厳という賭博に挑む可能性がある。 憲法裁判所が罷免し、裁判所が死刑や無期懲役を確定しても、次期大統領が赦免すれば済むからだ。

 金泳三(キム・ヨンサム)大統領は全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)クーデターを内乱罪で処罰したが、退任前に赦免した。正義は貫かれなかった。その代償がまさに12・3親衛クーデターだ。

 尹錫悦大統領は非常戒厳令が野党の「大統領選挙結果への不服」と「立法独裁」を正すための「警告用」だったと、真っ赤な嘘を並べている。このような人を赦免するという大統領選候補が当選するだろうか。あり得ないことだ。

 だからこそ、「国民の力」は尹錫悦大統領を捨てなければならない。そうしても、国民は早期大統領選挙で「国民の力」の候補を選ぶかどうかを悩むだろう。捨てなければどうなるだろうか。勝ち目がない。どの道に進むかは、「国民の力」の候補と党員と支持者が選択しなければならない。

//ハンギョレ新聞社
ソン・ハニョン | 政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1183242.html韓国語原文入力:2025-02-19 21:13
訳H.J

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