限度を超えた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は軍を動員して国会(立法府)を侵奪し、尹大統領を擁護する極右デモ隊は裁判所(司法府)を襲撃した。裁判所の決定が気に入らないからといって暴力を使うのは、韓国社会を支える「法治」と「民主主義」を完全に破壊する行為であり、反社会的だ。社会を支えるためにも、絶対に容認してはならない。尹大統領や与党「国民の力」など、事態に責任のある者は深く反省し、自省しなければならない。「12・3内乱」以降、韓国社会は岐路に立っている。
19日午前3時ごろ、尹大統領に対する拘束令状が発付されたという一報が伝わると、ソウル西部地裁の前に集まっていた支持者数百人が裁判所に乱入した。支持者たちは窓を壊し、什器を投げて、令状を発付した裁判官を探し出すために裁判所内を歩き回った。無法地帯の暴徒だ。デモ隊86人が公務執行妨害や器物破損などの容疑で連行された。チェ・サンモク大統領権限代行は「法と原則に従い、厳正に捜査せよ」と警察庁に指示し、イ・ホヨン警察庁長官職務代行も「暴力デモの背後まで徹底して捜査する」と明言した。
これまでデモ隊がデモの過程で警察と衝突したことはあったが、このように裁判所を襲撃したことは、大韓民国の建国以来は初めてのことだ。きちんと処罰されなければ、繰り返される可能性がある。韓国社会の根幹を守るためにも、徹底的に捜査し、厳罰に処さなければならない。
今回の事態に対する最大の責任が尹大統領側にあるのは当然のことだ。尹大統領は「12・3内乱」後も捜査機関の調査に応じず、裁判所の合法的な令状も「違法」だと言い張り、「官邸居座り」を行うなど、「司法府無視」の戦略で一貫している。さらには、極右デモ隊に向かって「ユーチューブで見ている」と言って励まし、「最後まで戦う」として煽った。「法治」を無視する行為だ。
暴力事態で世論が悪化する兆しを見せると、尹大統領は遅ればせながら立場表明文を出し、「平和的な方法で意思を表現する」よう求める態度を示した。しかし、「悔しさと怒りの心情は十分に理解」「警察も寛容の姿勢で事態を解決してほしい」など、暴力デモ隊に肩入れする姿勢を見せた。何より、この事態が自身によって触発されたという責任感をまったく感じていない。国民の力も同様に、この日開かれた緊急非常対策委員会の会議で、「暴力はいけない」としながらも、逆に「警察の過剰対応を真相究明せよ」という荒唐無稽な主張を展開した。国民の力が極右暴力デモ隊と手を切ることができないのであれば、もうこれ以上民主的な大衆政党の振舞いもできないであろう。
加えて、極右ユーチューバーたちが、デモ隊の裁判所乱入に至るまで主導的な役割を果たしてきた。「漢南洞(ハンナムドン)官邸前デモ」を中継放送して扇動し、発言内容が過激化していき、最終的には裁判所乱入にまで至った。極右ユーチューバーは、いまや韓国社会にとっての物理的脅威になっている。暴力扇動に対する捜査も厳正に行われなければならない。