原文入力:2010-06-11午後10:35:23(1813字)
←ハン・ジョンスク ソウル大教授・西洋史
海軍所属天安艦の沈没惨事に対する合同調査団の発表から6・2地方選挙まで続いた一連の現象を見ながら、最初に思い浮かんだことの中の一つが‘ジンゴイズム’(jingoism)という外国語単語だった。この単語を知っているかと周囲の人々に尋ねたところ、授業時間に習った覚えがあるという人もいれば、初めて聞く言葉だけどと手帳に書いておかなくちゃと言った知人もいた。
ジンゴイズムはオックスフォード英語辞典に「攻撃的対外政策の形態を帯びる極端愛国主義」と解説されていて、おそらく‘好戦的国粋主義’程度に翻訳されうるようだ。この言葉が初めて登場したのは1870年代の英国だという。露土(ロシア-トルコ)戦争時期に一部の英国人らが「我々が戦争を望むわけじゃない,‘ジンゴに誓って’、戦うならばこっちには船もあれば兵士もいるし金だってある…" という歌を合唱しロシアの領土膨張は容認しないという意志を燃やしたのだ。‘ジンゴ’という言葉の語源については説が入り乱れているが、この歌の歌詞の好戦性に戦慄を感じた反戦派政治家がジンゴイズムという言葉を使い始めた。
この言葉が真価を発揮したのは、その後 米国と英国がそれぞれ行った米西(米国-スペイン)戦争(1898)と(2次)ボーア戦争(1899~1902)の時だった。米国はキューバのアバナハン近海で起きた米海軍所属戦艦メイン号の爆発沈没事件(1898年2月15日)を契機にスペインとの戦争に突入した。メイン号の沈没原因はその時も今も不明だが、新聞業者ホストゥをはじめとする米国の好戦論者らはスペイン軍がメイン号を外部から爆発させたと宣伝し反スペイン世論を沸騰させ、武力衝突に気が向かなかったマッキンリー米国大統領も結局は戦争を宣言しなければならなかった。
英国が南アフリカの植民地を巡りオランダ系植民者のボーア人と葛藤を生じさせた時、一部の英国人らのジンゴイズムはボーア戦争の開戦を促進した。米国は米西戦争を基点に国際武力葛藤に本格的に足を踏み入れ始めた。英国はボーア戦争で悪戦苦闘しつつ国際的非難を自ら招来した。
ボーア戦争に従軍しながら戦争の惨状に身震いしたジャーナリスト兼経済学者のジョン・ホブソンは<ジンゴイズムの心理学>(1901)という本を書いた。彼はとんでもないうわさ、激烈な憎悪心の刺激、流血的扇動などが都市の密集住民たちの間で群衆現象を呼び起こすと感じたが、興味深いのは彼がジンゴイズムを 「戦士の情熱ではなく野次馬、教唆者、背後勢力の情熱」と見たという点だ。ジンゴイズム首唱者には「自身が参戦しようとする渇望より、神経質的想像力の充足がより重要」だとか、自分は参戦しないが他人に戦争しろとそそのかすことがジンゴイストの特徴になる。
天安艦事件原因調査団の発表は最近ではめったに見ない好戦論を呼び起こした。ところが6・2地方選挙結果に見るように、韓国社会の構成員の大部分はジンゴイズム扇動には乗らず物静かな動きを見せた。調査団の発表内容を信頼できないという人々もいた。反面、発表内容を信じても直ちに戦争の話が出てくることには反感を感じる人も少なくなかった。注目すべき点は戦争に対する記憶を生き生きと大事に保管している世代に属する人々が戦争も恐ろしくないと叫んだ反面、戦争を体験したことがない人々が戦争はしてはならないと対抗したという点だ。‘誰が戦争を促し誰が実際に参戦するのか’により判断が分かれたのだ。
6月は6・25勃発60周年になる月だ。‘戦争を忘れまい’という流血の映像が川の水のように流れている。しかし‘戦争を忘れまい’という確約は、戦争を恐れるなというおびやかしばかりに繋がるわけではなく、戦争を防止しなければならないという覚醒を呼び覚ましたりもする。平和を作るための努力が、戦争をするより一層険しいこともある。それでも平和を管理し平和を作ってくれというのが国民の要求であることを、為政者と好戦論者らは知らねばならない。
ハン・ジョンスク ソウル大教授・西洋史
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/425287.html 訳J.S