先月東京に特派員として来た後、「日本の物価は本当に安いのか」とよく聞かれる。最近の日本の物価は韓国と同程度であるうえ、一時は100円=850ウォン台にまで落ちた歴史的円安のため、多くの人たちが日本を行きやすい海外旅行先として選ぶようになったからだろう。
体感的な物価はだいたい次のようなものだ。先日立ち寄った東京のスターバックスでは、アメリカーノのトールサイズ1杯が420円(3900ウォン)程度だった。韓国(4500ウォン)より少し安いほうだ。スターバックスのコーヒーの値段で国別の物価を比較する「スターバックス指数」によると、今年の韓国(4.11ドル)は日本(3.57ドル)より高い。韓国で食べた昼食は1食で8000ウォン(約870円)程度だったが、日本の牛丼チェーン店で食べると700~800円(6420~7340ウォン)程度だ。もちろん、日本で物価の高いものも多い。交通費の高さは悪名高い。地下鉄で短距離を移動するだけでも180円(1650ウォン)かかる。高速鉄道である新幹線は、ソウルから釜山(プサン)程度の距離で、片道が1万5000円(13万8000ウォン)くらいになる。10キログラムの米も韓国より2倍ほど高い。賃貸料は極悪非道で、都心の3部屋の小さなマンションは、保証金なしで家賃が350万ウォン(約38万円)程度だ。一方、携帯電話のデータ無制限の料金は8000円前後で韓国に近い。
似たり寄ったりの韓国と日本の物価差に注目したのは、最近の徳島県による破格的な最低賃金の引き上げのためだ。徳島県は今後1年間に適用される最低賃金の引き上げ額として、政府が提示した時給50円に地方自治体の判断で34円を加え、84円(780ウォン)引き上げることにした。日本の最低賃金の体系は、まず厚生労働省の中央最低賃金審議会小委員会が全国をいくつかのグループに分け、引き上げの基準額を提示する。今年の政府案は3グループで平均1055円(9675ウォン)だ。各都道府県はこれを反映し、自主的に最低賃金を調整して確定する。今年は東京都(1163円)・神奈川県(1162円)・大阪府(1114円)などが高く、昨年最下位の徳島県は896円だった最低賃金を一気に980円(9.4%増)に引き上げ、中位グループに入った。
韓国も先月、来年の最低賃金を1万30ウォン(約1090円)と告示した。前年に比べた引き上げ額はわずか170ウォン(1.7%、約19円)だったが、使用者団体側は「数年前から日本より高い」と評している。2000年代初めに日本に来たとき、日本のコンビニの給料は時給850~950円(7800~8700ウォン)だった。当時の韓国は2500ウォン程度だった。しかし、そのような時代は終わった。いまの韓国の経済力を考慮すれば、最低賃金の数百ウォンの違いについて、「日本を上回るほど高い」という言い方は見苦しい。しかも、日本のコンビニなどでは、実際の時給が最低賃金をはるかに上回ることがよくある。韓国で最低賃金が多くの低賃金労働者にとって「最も一般的な給与」であるのとは状況が違う。
韓国の使用者側は、業種・地域などに応じた最低賃金の区分適用も要求している。主な事例がまたも「日本」だ。徳島県の後藤田正純知事は、地域別にグループ分けされた最低賃金について「地域の青年の不安が高まる」と訴えた。ただでさえ不足している若い人たちが、より最低賃金の高い地域に続々と逃げてしまうということだ。地方自治体同士で互いにけん制しあうケースもみられる。今年は秋田県が先に最低賃金(951円)を確定すると、岩手県や宮崎県(952円)などが1円を上乗せし、最下位を脱した。「毎年『チキンゲーム』を行うようなものだ」という不満も聞こえる。