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[寄稿]総選挙後の韓国、特検に反対する者が犯人だ

登録:2024-04-19 01:05 修正:2024-04-19 08:37
キム・ジョンデ|延世大学統一研究院客員教授
海兵隊予備役連帯の会員たちが先月21日、「C上等兵特検法」の受け入れを求めるプラカードを掲げている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 総選挙の開票作業の終了後、アン・チョルス議員は放送で「(海兵隊)C上等兵特検法」について「個人的には賛成だ。賛成票を投じる計画」だと述べた。3日後、与党「国民の力」から出馬して最多当選を果たしたチョ・ギョンテ議員も放送で、「わが党が民主党より先に国民的疑惑を解消するための努力をしなければならない」と述べつつ、特検法賛成の立場を明らかにした。メディアはその際、5月の国会で特検法が表決に付されれば、与党から少なくとも4票以上、多ければ8票ほどの離反票が出ると予想していた。

 しかし、そこまでだった。国務会議の冒頭発言のかたちで示された16日の大統領談話以降、与党からは特検法に賛成する者が1人、また1人と消えていった。談話が示された日、国民の力のユン・ジェオク院内代表兼党代表権限代行は記者団に対し、特検法において野党の交渉団体が特検候補者を推薦するという条項と、特検は捜査状況をブリーフィングできるようにする「毒素条項が解毒されていない」として、特検法に反対の立場を表明した。総選挙前と変わらない態度だ。さらに、一部の与党関係者は公開の場で「総選挙とC上等兵事件を同一視してはならない」とし、「総選挙でC上等兵特検法を処理しろという民意がはっきりしたという根拠はどこにもない」とも述べた。与党は、特検法採決反対はもとより、大統領の拒否権行使を事前に正当化しようとしている。

 審判の炎で燃え上がった総選挙で、与党が反省したのはたったの5日のみ。今は「50%対45%で負けた選挙がなぜ惨敗なのか」と述べつつ、108議席を確保した龍山(ヨンサン)と与党は、国政基調を変える理由はまったくないという口ぶりだ。選挙で負けても首を垂れることのない与党を見て、イ・ジョンソプ前オーストラリア大使も論争に飛び込んだ。彼は高位公職者犯罪捜査処(公捜処)に送った10枚分の意見書で「現在捜査が進められているC上等兵殉職事件についての特検は、特検制度の趣旨に照らして適切ではない」という政治的主張を展開しつつ、公捜処に対して速かに捜査を進め、批判を払拭してほしいと要請した。

 3月にオーストラリア大使として赴任した彼は、出国前に公捜処に出頭し、長官在任時の携帯電話ではなく退任後に作った新しい携帯電話を提出した。そして、当時の業務手帳は廃棄したため存在しないと述べた。大統領室から疑惑の電話を受けた昨年7月31日のC上等兵事件に関連する通話記録を抹消したものとみられる。すべては、あの日に大統領室からかかってきた1本の電話からはじまった。それをよく分かっているイ前大使は公捜処の捜査に備えて証拠のかなりの部分を隠滅したのではないか、という疑問が生じる。真相究明に誠意のない態度を示していた彼が、逆に公捜処に「捜査するならやってみろ」とでも言うように食って掛かるという態勢転換がなされた背景が知りたいものだ。

 意見書で彼は、海兵隊による捜査を決裁した昨年7月30日以降、容疑者とされた海兵隊の「初級幹部たちが苦しむ」だろうから「(国防部の)法務管理官室の法理検討を経てきちんと処理することが望ましいと判断し」、事件の民間への移牒の保留を指示したのだと主張した。ちゃんちゃらおかしいだけでなく、きちんと捜査を受ければ崩れる主張だ。これまでのパク・チョンフン大佐の裁判と公捜処の捜査で明らかになった通信記録を見るだけでも、彼がウズベキスタンに出張していた昨年7月末に、初級幹部ではなくイム・ソングン海兵隊第1師団長の正常勤務を確認したうえで、「指揮官は捜査ではなく懲戒」で処理するようにとの意見を海兵隊の司令官に伝えるなど、長官の軍事補佐官の通信記録が大量に出てきている。どこにも彼が初級幹部の立場を心配していた痕跡は見当たらず、ひたすら第1師団長を容疑対象から除外し、解任を取り消すことに集中していることが確認できる。これは初級幹部を心配する慈愛に満ちた国防部長官の行動ではないではないか。そのように部下を心配する長官が、戦時であったら死刑に処せられうる抗命罪を、国防部検察団がパク・チョンフン大佐に適用させたのはなぜなのか。

 少なくとも公捜処は、海兵隊に電話した当時の安保室第2次長の国民の力のイム・ジョンドゥク当選者と、当時のシン・ボムチョル国防部次官をまず出頭させ、その次にイ前大使を調査すべきだ。問題はその次だ。イ前大使をきちんと捜査した後は、公捜処は大統領室を家宅捜索せざるを得ない。この事件の実体的真実はまさにそこ、大統領室にあるからだ。人材と権限が限られている公捜処が手に負えないなら、特検が乗り出すのは当然の理ではないか。その特検に反対する者、イ・ジョンソプが守ろうとしているその者こそ犯人だ。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジョンデ|延世大学統一研究院客員教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1137245.html韓国語原文入力:2024-04-18 18:40
訳D.K

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