「海兵隊C上等兵殉職事件」への外圧疑惑で捜査を受けている状況で出国したイ・ジョンソプ駐オーストラリア大使が、まもなく帰国することが20日に分かった。外交部が25日に開催する「防衛産業協力主要公館長会議」に出席する予定だという。批判世論にもかかわらず出国を強行してから10日で帰ってくるわけだ。
イ大使の早期帰国は予定になかったことだ。当初「在外公館長会議」は総選挙後の4月末に予定されており、その間には帰国する日程がなかった。さらに大統領室は、イ大使の出国が物議を醸した後も、早期帰国はないという立場を明らかにした。しかし総選挙を控え、世論が日増しに悪化し、大統領の国政遂行に対する支持率まで下がったことを受け、ひとまずイ大使を呼び戻すことにしたものとみられる。この「イ・ジョンソプ・リスク」は約20日後に迫った今回の総選挙で与党の最大の悪材料になっている。
そのため、イ大使の帰国は「局面転換」に向けた苦肉の策である可能性が高い。25日の会議は、当初の予定になく、イ大使を帰国させる名目づくりのための急ごしらえの会議とみられる。与党で「このままでは総選挙で負ける」という不安の声が高まっているから、イ大使の帰国で足元の火を消そうと思っているのだろう。大統領室がイ大使の去就問題について沈黙していることからもそれが伺える。ファン・サンム前市民社会首席を「辞任」という形で片づけたのとは全く違う対応だ。
むしろ、大統領室はイ大使の帰国を機に、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)に再び圧力をかける可能性が高い。「在外公館長が国内に入ってきてひたすら待機するのは非常に不適切だ」という立場を表明した態度は全く変わっていない。その上、イ大使は公捜処に「調査期日指定要求書」まで出し、居直った態度を示している。にもかかわらず、与党「国民の力」のハン・ドンフン非常対策委員長は同日、「イ大使問題、今日すべて解決した」と述べた。一体何が解決したというのか。
大使の資格のない被疑者に任命状を与えたことから間違っている。そのため、相手国のオーストラリアにも少なからぬ外交的欠礼を犯した。イ大使の帰国は、世論をなだめるための苦肉の策ではなく、問題解決の始発点にならなければならない。イ大使は帰国後すぐに辞任すべきだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の「庇護」から離れ、民間人に戻って捜査を受けなければならない。尹大統領もかつて高位公職者を捜査する際、「地位・職責」に関係なく取り調べたではないか。大統領や秘書室公務員は公捜処の職務遂行に一切関与できないよう、公捜処法に明示されている。イ大使の捜査に「外圧」になり得るいかなる行動も、これ以上あってはならない。