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[コラム]イ・ガンイン、ソン・フンミン事件の真相と虚像

登録:2024-02-21 06:56 修正:2024-02-21 08:45
//ハンギョレ新聞社

 サッカー韓国代表チームの中心であるイ・ガンインとソン・フンミンの争いをめぐる大衆の関心は高い。しかし、メディアの取材力と視線は限られており、ファンも真相が分からず、もどかしさを感じている。

 韓国言論振興財団の検索ツール「ビッグカインズ」で、「イ・ガンイン」と「ソン・フンミン」のキーワードを入力すると、この一週間で新聞や放送などで出た1069本の記事が検出される。記事の関連キーワードを見ると、2人の所属チームであるパリ・サンジェルマンとトッテナムが目立つが、「殴り合い」、「もみ合い」、「悪質なコメント」も検索される。

 選手生命と直結した殴り合いやもみ合いの問題は非常に重要だ。しかし、メディアは実体に近づけずにいる。大韓サッカー協会では、あまりにもあっという間に起きた事件であり、選手によって話が異なるため、統一された絵を描くのは難しいという。

 報道の内容もまちまちだ。英国メディア「ザ・サン」は最初にソン・フンミンが「喧嘩を止める」過程で指を負傷したと報じたが、その日の午後、韓国国内メディアは「ソン・フンミンが胸ぐらを掴み、殴り合いがあった」と報道した。その翌日には最初からイ・ガンインの拳が「ソン・フンミンの顔に当たった」という記事も出てきたが、当事者に確認を取ったものではない。

韓国言論振興財団のビッグカインズから検出したこの一週間のソン・フンミン、イ・ガンイン記事の関連キーワードのグラフィック//ハンギョレ新聞社

 大衆は世界に対する情報を主にメディアを通じて得る。しかし、関係者の供述に基づいたメディアの1次情報は、言語化されたり編集を経る過程で、実体的な真実とは距離が生じる。このような虚像は「クリックジャーナリズム」環境によって、必ず知らなくても良い情報が上塗りされ、新しく加工されて実在とは異なる過像や超実在(Hyperreal)に生まれ変わる。ジャン・ボードリヤールの言う「シミュラクル(仮想)」がまるで真実であるかのように現実を支配するわけだ。

 長期間合宿するスポーツ種目別代表チームの中では、おびただしいプレッシャーが選手たちにのしかかる。一触即発の対立の状況は、いつ爆発するか分からない火薬庫だ。今回は内部で十分に消化できたはずの事件が露呈し、ある天才選手の運命を左右している。

 大韓サッカー協会が責任ある団体なら、手をこまねいていてはならない。もみ合いの当事者であるソン・フンミンとイ・ガンインから経緯書を受け取り、選手団の話も聞いてファンに明確に公開しなければならない。それが本当に難しいことなら、当事者や選手団が直接乗り出すべきだ。代表チームの選手団が立場をまとめて意見を表明すれば、(あつれきの)是非を問うマスコミの様々な報道を一瞬にして乗り越えられるだろう。それは真実を覆い隠すのではなく、虚像の世界で真実を構成する条件だ。

キム・チャングム│スポーツチーム 先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1129128.html韓国語原文入力:2024-02-2100:20
訳H.J

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