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[コラム]中国の「偽BMW」といわれたBYD、どうやってテスラを追い抜いたのか

登録:2024-01-10 06:16 修正:2024-05-15 08:58
//ハンギョレ新聞社

 中国の「比亜迪(BYD)」が米国のテスラを抜いて世界の電気自動車(EV)販売台数1位になったというニュースが、年明けから話題になっている。特に、米国のマスコミが衝撃を受けた様子だ。

 BYDの躍進は不意にやってきた。世界がコロナへの対応に余念がなかった3年間が、BYDにとっては「クォンタムジャンプ」(量子跳躍)の時間だった。創業者の王伝福会長のいとこが所有する大手「融捷」のリチウム採掘部門とパートナーシップを結び、世界的に供給難に見舞われた自動車用半導体チップを直接作るなど、垂直系列化を成し遂げた。

 BYDは自ら生産したバッテリーを自社の車に搭載する事実上唯一のEVメーカーだ。2003年に自動車製造業に参入して以来、「日本製エンジンに粗悪な箱」をかぶせた“偽BMW”だと揶揄されてきたBYDが、テスラに追いつくようになった秘訣もバッテリーにある。特に2020年3月に発売した細長い形の「ブレード」バッテリーは、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーを完璧に革新したと評価されている。電極を巻く方式で組み立てる従来のバッテリーとは異なり、ブレードは電極をサンドイッチのように積み上げてエネルギー密度を高めた。

 BYDは同年7月にはブレードを搭載した準大型のセダン「漢(ハン)」を発売したが、同クラスのテスラの「モデル3」より安く、走行距離とゼロバック(停止状態から時速100キロまで加速にかかる時間)、充電時間などすべての面でモデル3を圧倒した。モデル3にはバッテリー業界世界1位の「寧徳時代(CATL)」のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーが搭載されている。BYDは中国2位のバッテリー会社で、世界市場でも韓国のLGエナジーソリューションと2位を争っている。

 野暮ったいデザインはアウディの首席デザイナー出身のヴォルフガング・エッガー氏を迎え入れて一新した。昨年はランドローバーを思わせるスポーツ実用車(SUV)の「仰望(ヤンワン)」など、高級モデルを発表した。1万1000ドル(約150万円)の普及型モデル「海鴎(シーガル)」をはじめ、約10種のモデルを販売する。

 比亜迪(BYD)という名前は1995年創業当時、会社のあった深セン市ヤディ村(Yadi Village)から取ったものだ。販促に有利になるようアルファベット順で前に入るため、何の意味もない比(bi)を付けたと創業者の王伝福氏は語る。会社のスローガンになった「Build Your Dreams」は後付けであるわけだ。王伝福氏はプライベートで「Bring your Dollar」の略語だと冗談を言ったという。

 中国EVの躍進の背景に中国政府があることは周知の事実だ。公共交通機関をはじめとする公共車両の買い入れと莫大な補助金で、初期市場作りを後押しした。特に、BYD本社がある深セン市は新規車の40%がEVだ。中国らしくなくPM2.5のない澄んだ空気で、「深センブルー」という言葉があるほどだ。EVとバッテリーに対する中国政府の支援は皮肉の対象ではなく、見習うべきお手本だ。充電施設の不足と再生可能エネルギーに対する冷遇で、EVの普及が遅れている韓国と比較せざるを得ない。

イ・ジェソン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1123459.html韓国語原文入力:2024-01-08 19:29
訳H.J

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