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[寄稿]火山の上のイスラエルと「脱植民地化」に対する観点

登録:2024-01-02 07:56 修正:2024-01-02 08:40
スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授
2023年10月7日(現地時間)パレスチナのガザ地区に対するイスラエルの報復爆撃で建物から炎が上がっている=ガザ地区/ロイター・聯合ニュース

 ある人々は、イスラエルはハマスによるユダヤ人集団虐殺から自身を守っているのだといってイスラエルを擁護する。だが、ベンヤミン・ネタニヤフの発言を聞くと、集団虐殺を語ることに抵抗がない。彼はガザ地区のパレスチナ人に言及し、「アマレクがしたことを忘れるな」と言ったことがある。アマレクは、旧約聖書で神がイスラエル民族に全滅させるよう命じた民族だ。宗教的原理主義で集団虐殺を正当化しているのだ。

 ネタニヤフは「我々は大きな苦しみと国際的な圧力に直面しているが、誰も我々を妨げることはできない」と述べた。国際社会の支持がなくても、ハマスを最後まで除去し、二国家解決策を拒否するという意向だ。だが、これは自ら到達できない目標の捕虜になるものだ。イスラエルがアラブの隣人たちと相互理解を築こうとしないのは、火山の上に建物を建て、全員を危険にさらすだけのことだ。

 ネタニヤフの「誰も我々を妨げることはできない」という発言は、ウラジーミル・プーチンのウクライナ非軍事化発言に通ずるところがある。12月にプーチンは、ウクライナが非武装化に合意しないのであれば、軍事的措置を取るしかないと強調した。彼は、ウクライナ人を戦車と銃で殺す行為をウクライナ非軍事化作戦と呼んでいる。

 もちろん、パレスチナとウクライナの状況は同じではない。パレスチナは妥協が唯一の脱出口だが、ウクライナには勝利するまで耐える権利がある。しかし、この2年間、ウクライナは、ウクライナ独立運動と第三世界の脱植民地化過程の関係を無視し、欧米列強にばかり力を入れてきた。欧米が支援に懐疑的な態度を示している現在の状況では、ウクライナはその代価を支払わなければならないかもしれない。

 ここで私たちは、脱植民というテーマを確認する必要がある。脱植民とは、本来の土地と生を取り戻すことを意味する。ハマスの暴力を脱植民地化の努力だと認識する傾向があるが、これは様々な点で問題がある。

 一つ目に、イスラエル国家をパレスチナの領土を植民地化した結果だとみなすのは安易なことだ。私は、パレスチナ人とユダヤ人すべてがそこに住む権利があると考えたエドワード・サイードの意見に同意する。変化の可能性は、戦争に反対するパレスチナ人とユダヤ人の間の連帯にある。多くの人たちがこれを非現実的だと批判するが、今こそ、68年革命のスローガンだった「現実を直視して不可能を要求せよ」を復活させなければならない。軍事力を用いるだけで中東の危機を解決できるというほうがもっと危険な考えだ。

 二つ目に、脱植民地化はしばしば異なる過程を意味する。多くのアフリカ国家の場合、西欧諸国からの独立後に腐敗した社会秩序が生じ、支配階級と被支配階級の間の格差はむしろ広がった。これらの国では、「脱植民地化」は別の支配階級の出現を示す隠喩だった。昨年夏に英国のロンドンで開かれたある討論会で、南アフリカ共和国のある活動家は、最近は貧しい黒人の間で、アパルトヘイトに対する郷愁が強まっていると述べた。差別されながら生きていた当時の黒人の生活水準は今より高く、治安も保障されていたが、今はそうではないということだ。

 白人がそうした話をする場合は確実に人種主義者という非難を受けるだろうが、それでも私たちは、こうした問題を真剣に熟考しなければならない。左派がしなければ右派がするだろう。次に何が起きるのかを考えもせず、むやみやたらに「脱植民」を追求しようとする誘惑に抵抗しなければならない。毛沢東が言った通り革命は晩餐ではないが、革命を成し遂げた後に食べるものがなければどうするのか。

 ハマスについて私たちが投げかけなければならない質問は、ハマスが戦争で敗れた場合はどうなるのかではなく、ハマスが生き残りガザ地区の統治を続けることになればどうなるのかだ。解放に対する熱望が冷めてしまったガザ地区の現実は、どのような姿だろうか。

//ハンギョレ新聞社

スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1122437.html韓国語原文入力:2023-12-31 18:20
訳M.S

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