韓国の政権与党「国民の力」のキム・ギヒョン代表が20日、国会での交渉団体代表演説で、国内居住の中国人に地方自治選挙の投票権を与えるのをやめようと主張した。キム代表はこの日、「国内に居住中の約10万人の中国人に投票権が与えられている。しかし、中国にいる韓国国民には参政権が全く与えられない。なぜ我々だけが門戸を開いておかねばならないのか」と述べ、中国人から地方選挙での投票権を剥奪しようと主張した。キム代表の他にも似たような主張を展開する与党議員がいるが、同意しがたい部分が多数ある。
中国人投票権剥奪主張の論理の核心は相互主義だ。中国が韓国人に対して地方選挙の参政権を保障しないのだから、相互主義の原則に則って韓国も中国人の選挙権を剥奪すべきだというのだ。しかし、外国人地方参政権の保障を相互主義のみで判断する必要はない。実際に、外国人に地方選挙での投票権を与えている国には、相互主義にもとづいている国もそうでない国もある。スウェーデン、ノルウェーなどでは、一定の資格を備えていれば国籍に関係なく地方参政権が与えられる。相互主義は判断基準のひとつにはなりうるが、絶対的価値ではない。
また、徹底して相互主義を主張するなら、中国だけでなく韓国人に地方参政権を与えていない国に一律に同じ措置を取るというのが論理的だ。中国人を特に強調する必要はない。中国以外にも、米国などの多くの国が韓国人に地方参政権を与えていないが、米国国籍者などを特定して地方参政権剥奪を主張する声は聞いたことがない。ケイ海明中国大使の「賭け発言」などでこのところ高まっている中国に対する拒否感を利用しようという影が見える。
世界的に見て、外国人参政権を認めている国々も、大半は地方選挙に限定している。外国人も地域社会の構成員であり、地域社会を運営するには外国人の声を聞く必要があるからだ。高齢化が進み、外国人の労働力への依存度も高まっている韓国では、彼らの重要性は今後さらに高まるだろう。国内政治介入論議を招きうる国会議員選挙や大統領選挙では、大半の国が外国人参政権を認めておらず、韓国も同様だ。
2005年の公職選挙法改正で導入された外国人地方参政権は、時代に合わない面もありうる。地域社会の構成員としての役割を考慮し、現在より韓国居住期間などの投票権付与要件を厳格化すべきだとの主張は一理あるが、外国人の地方参政権そのものを縮小するのが正しい方向性なのかは疑問だ。
外国人への地方参政権の付与は、そもそも在日同胞の日本での地方参政権付与論議が契機となったものだ。金大中(キム・デジュン)大統領が1999年に、日本の諸政党による外国人地方参政権付与論議について報告を受け、当時の政権与党だった国民会議に長期居住外国人に対する参政権付与の検討を指示したのだ。日本での外国人地方参政権付与論議は2010年代初めの民主党政権まで続いたが、その後の保守化の流れの中でうやむやになった。現在は、一部の地方自治体が条例にもとづいて、住民投票に限って居住外国人に投票権を認めているのがせいぜいだ。一方、韓国は6年間の議論の末、2005年に外国人の地方選挙への参加を制度化した。民主主義の発展のためには相互主義ばかりに固執しないという選択だった。この選択を根本的に後退させる決定を下さないよう願う。
チョ・ギウォン|国際ニュースチーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )