25日、共に民主党議員全員が欠席した中で行われた来年度予算案に関する尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の施政方針演説は、極限まで突き進む政治的な対峙状況を懸念する国民をさらに悩ませるような内容だった。尹大統領は「国会で法定期限(12月2日)内に予算案を確定し、厳しい庶民の暮らしを支えられるようにしてほしい」と要請しながらも、野党と国会の協力を引き出す積極的なビジョンは示さなかった。「国会のこのXX(野郎ども)」という暴言に対する謝罪や遺憾表明も最後まで拒否した。経済・安全保障の複合危機に立ち向かうため、国民の力を結集しなければならない時に、統合の責務を忘れたかのような尹大統領の対決的行動は残念だ。
尹大統領は同日「私は10回の非常経済暮らし会議を通じて暮らしの懸案の解決に取り組んできた」「脆弱階層と社会的弱者に燃料費、食料品費、生活必需品費もきめ細かく支援する一方、消費者物価(の安定)に努めてきた」「豪雨と災害被害の復旧と支援にも邁進した」と述べた。物価高と政府の安易な災害対応、与党所属の江原道知事に端を発した流動性危機などで厳しい庶民の暮らしに対するねぎらいの言葉と省察はみられなかった。青年原価住宅の新規供給、農畜水産物割引クーポン1100億ウォン(約114億円)拡大などを対策として提示したが、野党からは「高齢者・若者の働き口や地域通貨、賃貸住宅など10兆ウォン(約1兆330億円)分の予算を削減しておいて、わずかな金額を編成したことを弱者福祉というのを見て、本当に非情だと思った」(民主党のキム・ソンファン政策委議長)という論評が出た。
尹大統領は暴言に対する謝罪などを求める民主党議員のプラカードデモ現場を無言で通り過ぎ、国会議長など5部要人や国民の力と正義党指導部との事前歓談で、正義党のイ・ウンジュ非常対策委員長が「この野郎ども」発言に対する謝罪を求めた時も「謝罪することはしていない」と一蹴したという。5月の初めての施政方針演説で何度も統合と協治を強調したのとは異なり、同日は「国会の協力が切実だ」と1回述べただけで、「協治」は一言も口にしなかった。国政を円滑に導こうとする切実さと真摯さが感じられない。
共に民主党が本会議場の入場を拒否したことで、同日の施政演説は憲政史上初めて野党第1党不在の中で行われた。前日、党本部が家宅捜索を受けるなど野党に対する全面的な攻勢への対応だとしても、「出口」のない対決構図をさらに固めただけではないか、民主党は振り返ってみる必要がある。しかし、最大の責任は国政を委任された政権勢力にあることは明らかだ。政治の不在が長引くほど被害は国民に及ぶという事実を尹大統領と与党は肝に銘じなければならない。