本文に移動

[コラム]通貨危機だって? のんきすぎる韓国経済当局

登録:2022-09-30 02:44 修正:2022-09-30 08:33
チョン・ナムグ|論説委員
28日午後、ソウル中区のハナ銀行ディーリングルーム。画面にドル相場が表示されている。この日、取引中に一時1ドル=1440ウォンを突破したソウル外国為替市場は、前日よりウォン安ドル高が18.4ウォン進み、1ドル=1439.9ウォンで取引を終えた/聯合ニュース

 1997年の秋は惨めなものだった。年初には840ウォン台だったドルが8月26日には900ウォン台へと上昇し、11月19日には1000ウォンを突破した。外国人投資家が投資金を回収して出ていったため、交換するドルが残っていなかったからだ。不吉な諸対策は沈黙のなか水面下で動いていた。そのころ、政府果川(クァチョン)庁舎で財政経済院の高官に会ったが、ほとんど何も聞けなかった。疲れ切った顔でため息ばかりついていた姿が今もありありと目に浮かぶ。ドルは12月末には1964.8ウォンに達した。

 「またしても通貨危機に見舞われるのか」。25年が過ぎ、最近よくこう聞かれる。年初は1200ウォンを下回っていたドルが1400ウォンを突破しても、まだ上がり続けているのだから、そのような質問が出てくるのも無理はない。しかし、取るに足らない知識ながら「それは違うと思う」と言うしかない。1997年末は、韓国経済は運用の面で深刻な弱点を露呈し、最後は金融・投機資本の餌食になってしまった。しかし今は米国が攻撃的に金利を引き上げる過程でのドル高だ。他の主要通貨と同様にウォンも安くなっているに過ぎない。病気だから熱が出ているというよりは、熱い太陽の下にいるから体が熱いのだ。通貨危機の時代、韓国は外国に対する債務の多い国だったが、今は純対外金融資産が7441億ドル(6月末現在)に達する国だ。ドルの流動性が問題になる事態は起きるとは思えない。

 だが、様々な帳簿に記録された数値よりも重要なのは、国の経済を動かす人々への信頼だ。責任感と能力の2つの側面で信頼が崩れれば、外貨準備高がどれほど多いかはあまり意味がなくなってしまう。最近の英国政府の景気浮揚策に対する国際金融市場の評価と反応は、反面教師とするに値する。第2四半期の成長率が-0.1%にまで落ちた英国で、政府は23日(現地時間)、いわゆる「ミニ予算案」を発表した。法人税引き上げ計画の撤回、所得税の最高税率引き下げなど、2027年までに450億ポンド(約70兆ウォン)を減税するという内容だ。また、今後6カ月間にわたり600億ポンド(約94兆ウォン)をかけてエネルギー料金を補助するという内容も盛り込まれた。

 ドル高によって下落していたポンドの価値は、22日の1ポンド=1.1257ドルから26日の取引中には最安値となる1.0384ドルにまで下落した。その後、1.08ドル台に反騰したものの、否定的な見通しが広まっている。1ポンドが1ドルほどにまで下がるだろうとの見通しも示されている。発端は、当面の国内政治的な課題の解決を目的とした「ミニ予算案」が財政の持続可能性に対する強い疑問を呼び起こしたことだ。英国政府の政策判断能力に対する不信も広がった。ポンドの動向からは目が離せなくなりそうだ。

 韓国の経済チームの場合は、のんきすぎることが心配だ。韓国経済には家計負債という巨大な弱点がある。外部環境が悪化している時はよりいっそう注意を払い、これから起こりうる事態に対する緻密な対応策を立てておかねばならない。だが、そのような動きはほとんど見えない。目の前の政治的得失を計算し、選挙で勝たせてくれた支持層におもねることばかりに専念しているように見える。大企業のための法人税減税、不動産富裕層に対する保有税減税が代表的な例だ。規制緩和も財界の訴えを聞くことに偏っている。残りのエネルギーは前政権の政策を批判し、攻撃することに注がれている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は7月5日に、非常経済民生会議を毎週開くと表明している。3日後に初めての会議を主宰したが、8月31日の7回目の会議後、8回目の会議を開いたのは1カ月後の9月28日だった。「デジタル産業革新政策」がテーマだった。政府と韓国銀行は28日、債券市場に5兆ウォン(約5040億円)を投入し、証券市場安定ファンドの再稼動も準備すると表明したが、単なる解熱剤に過ぎないことを知らない人はいないだろう。

 通貨危機に重い責任のあった当時の経済官僚がみな復活したことを、私たちは知っている。当時次官だったカン・マンス氏は、荒唐無稽この上ない「747公約」(7%台の成長、10年以内に1人当たり国民所得4万ドル、世界7位の経済大国入り)を設計して選挙を手伝い、その後、李明博(イ・ミョンバク)政権の初代企画財政部長官になった。カン・マンス氏の下で金融政策室長を務めていたユン・ジュンヒョン氏は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で金融監督委員長を務めたと思ったら、李明博政権では企画財政部長官となっている。苦しい思いをするのは力のない者ばかりだ。「魂のない官僚」ばかりに任せていてはならない。大統領が強い責任感を持って自ら経済のかじ取りをすべき時だ。不安は日々高まりつつある。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ナムグ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1060723.html韓国語原文入力:2022-09-29 18:08
訳D.K

関連記事