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[コラム]「盗作」の定義とは―ユ・ヒヨルと坂本龍一

登録:2022-07-04 07:01 修正:2022-07-12 10:02
Jaewoogy.com//ハンギョレ新聞社

 「盗作」の辞書での定義は、「詩や文章、歌などを作る際、他人の作品の一部をこっそり取って使うこと」だ。法律用語というよりも、倫理的な概念として主に用いられる。創作物のうち、音楽での盗作の判断基準は大きく分けて二つだ。歌の主題や歌詞を盗用する場合と、メロディやコードを盗用する場合だ。メロディとコードは、テーマや歌詞より判断が曖昧な場合が多い。

 実際、韓国歌謡界での盗作議論は頻繁に起きている。そのような盗作議論は、多くは韓国内で出た歌と既存の外国の歌手の歌が類似しているところから始まった。韓国歌謡界で一世を風靡した「ソテジワアイドゥル(ソテジと仲間たち)」のデビュー曲「僕は知っている」(1992)も、盗作論争に巻き込まれた。この歌は、ドイツ出身のデュオ「ミリ・ヴァニリ」が1988年に発表したデビュー曲「Girl You Know It's True」と相当部分が類似しているという主張が提起された。韓国の歌が外国で盗作されたという主張もあった。1982年にビルボードチャートで6週間1位になった「J・ガイルズ・バンド」の「堕ちた天使」は、1975年に出たソン・デグァンのヒット曲「陽が昇る日」を盗作したものだという疑惑が提起された。「堕ちた天使」の前奏とクライマックス部分のメロディが、「陽が昇る日」の主要メロディーとよく似ていたからだ。

 最近、歌謡界で盗作がふたたび議論の種になっている。作曲家兼歌手のユ・ヒヨル氏が、日本の映画音楽の巨匠である坂本龍一氏を盗作したという議論だ。昨年出されたユ・ヒヨル氏のピアノ曲「とても私的な夜」が、1999年に発表された坂本龍一氏のピアノ曲「Aqua」に類似しているというものだ。議論が起こると、ユ・ヒヨル氏は坂本龍一氏に謝罪した。これに対して坂本龍一氏は、「私も、尊敬するバッハやドビュッシーから強い影響を受けている曲がいくつかある。すべての創作物は既存の芸術からの影響を受ける。そこに自分の独創性を5~10%程度加味すれば、それは立派であり感謝すべきこと」だと述べ、謝罪を受けいれた。

 坂本龍一氏の言葉は、画家のパブロ・ピカソの「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」という言葉を思い浮かべさせる。「模倣」は作品をそのまま描き写すことであり、法的にも道徳的にも責任を負わなければならない窃盗行為だが、「盗む」は盗作を飛び越え作品につながるという点を強調した言葉だ。ユ・ヒヨル氏が坂本龍一氏の作品を飛び越える曲を披露したのであれば、今回のような議論は起きなかっただろう。

チョン・ヒョクチュン文化部記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1049436.html韓国語原文入力:2022-07-04 02:38
訳M.S

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