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[寄稿]アマゾンとサムスン、21世紀の労組の課題

登録:2022-04-19 06:35 修正:2022-04-19 08:50
チェ・ジョンイム|世明大学ジャーナリズムスクール大学院長
今月1日(現地時間)、世界最大の電子商取引会社アマゾンの労働者たちが労組結成投票で過半数を超える賛成票が出たことを受け、抱き合って喜んでいる。赤い服を着た人(中央)がクリスチャン・スモールズ。スタテン島のアマゾン倉庫労働者たちは同日、投票を通じて1994年以降無労組経営を貫いてきたアマゾンで初めて労組を発足させた=ブルックリン/EPA・聯合ニュース

 「これはゴリアテに対抗したダビデの歴史的勝利だ」

 今月1日(現地時間)、米ニューヨーク市スタテン島のアマゾン物流倉庫JFK8で行われた投票で、労組結成が賛成多数で可決されたことを受け、ニューヨーク・タイムズで25年間労働分野を取材してきたスティーブン・グリーンハウスがツイッターに残した書き込みだ。1994年の創立以来、「無労組経営」を貫いてきたアマゾンは、組合設立を阻止するコンサルティング費用などで昨年約50億ウォン(約5億1270万円)を使ったという。一方、クリスチャン・スモールズ氏など前職・現職のアマゾン倉庫労働者たちは、クラウドファンディングで用意した約1億4千万ウォン(約1440万円)の資金で、約8千人を対象にキャンペーンを行い、「過半数の投票、過半数の賛成」を勝ち取った。彼らは駐車場に設置したテントでバーベキュー料理を振る舞いながら、労組の必要性を訴え、ソーシャルメディアで会社側の妨害工作に対抗した。スモールズ氏は2020年、倉庫労働者の間で新型コロナウイルス感染症が急速に広がっているにもかかわらず、会社側が十分な防疫措置を取らなかったと抗議し、解雇された。高卒のラッパー出身の彼は、いまやアマゾン労働組合(ALU)の代表として全国物流倉庫別組合結成の投票を支援している。

 ウォルマートに続き、全米で2番目に多い労働者をかかえるアマゾンは、現在も従業員110万人を対象に反労組キャンペーンを展開している点で、韓国一の財閥・サムスンの過去と重なる部分がある。創業者の故イ・ビョンチョル会長以来、無労組経営を固守してきたサムスンは、国政壟断事件でサムスン電子のイ・ジェヨン副会長が裁判を受けた2020年になって、ようやく「無労組経営撤廃」を宣言した。労働3権を憲法が保障する国で、無労組経営方針はそれ自体で反憲法的だ。組合を作ろうとした労働者が尾行と査察を受け、解雇されることもあった。生産工程で使用した毒性物質によってがんや白血病を患った労働者らには、彼らを代弁する労組がなかった。国政壟断の捜査過程でサムスンの組織的労組弾圧を立証する文書が見つかり、責任者たちが起訴されたことで、無労組経営にブレーキがかかった。しかし、労組を無理やり認めたせいか、サムスン電子などの団体交渉は最近もぎくしゃくしている。

 ビル・クリントン大統領時代、労働部長官を務めた米カリフォルニア大学バークレー校のロバート・ライシュ教授は2日、MSNBCとのインタビューで、「大規模な妨害工作に打ち勝ったアマゾン労組の勝利は、米労働組合が復活する途方もない歴史の始まりだ」と述べた。米国の労組組織率は1950年代に30%を超えたが、1983年に20.1%に下がり、2021年には10.3%になった。韓国は1989年の19.8%から、その後10%台に落ちたが、2020年は14.2%になった。ライシュ教授は著書『最後の資本主義』で、米国が先進国の中で最も不平等な国になったのは、労組を含む「対抗勢力」が弱体化したためだと診断した。大資本は金権政治を通じて租税など経済制度を自分たちに有利に変えていくが、労組と市民団体などの対抗力が弱まり、ブレーキをかけにくくなったというのだ。一方、スウェーデンやドイツなど労組の組織率が高く、経営参加が活発な国では、不平等と貧困がはるかに少ないというのが彼の説明だ。世界不平等レポートによると、韓国は2021年現在、米国とともに上位所得集中度基準で不平等が最も深刻な国に属する。

 アマゾンが果たして米国の労組復活の起爆剤になるのか、サムスン電子労組が韓国労働運動に元気を与える点滴になるのか、まだ楽観するのは難しい。定年まで勤めあげるのが当たり前だった製造業中心の20世紀労組と、正社員や非正社員、特殊雇用者、プラットフォーム労働者が入り混じっている21世紀の労組は、凝集力において差がある。しかし明らかなのは、労働者が団結できなければ非人間的な労働環境と不平等を避けられないという事実だ。トイレも自由に行けないアルゴリズム統制の中で、倉庫労働者が1日10~12時間働きやっと最低賃金を超える給料をもらう時、最高経営者は年俸2600億円(約267億円)を手にしているというアマゾンが象徴的だ。国内外でアマゾンのような労組が労働条件改善のために力を結集し、サムスンのような労組が非正社員や協力会社の労働者とも連帯すれば、不平等を減らすことができるだろう。企業も「環境・社会・ガバナンス」(ESG)が重要な評価基準となる今、最も重要な利害関係者である労組を排斥しては発展しないことを肝に銘じるべきだ。労組は多様な構成員を抱えながら拡張し、経営者は労組を真のパートナーに認めてこそ、21世紀にも発展する企業、持続可能な社会を作ることができるだろう。

//ハンギョレ新聞社
チェ・ジョンイム|世明大学ジャーナリズムスクール大学院長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1039377.html韓国語原文入力:2022-04-18:44
訳H.J

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