世界保健機関(WHO)が発表する1週間合算の新型コロナウイルスの新規感染者の統計によると、最近の韓国の新規感染者は200万人を大きく上回っている。この分野の世界のトップに相当する数値だ。防疫当局は、ウイルスの感染拡大が少ない時は社会の緊張度を高め強力な防疫を実施したが、実際の大規模なオミクロン株の感染拡大の局面では、特別な対策を出せずにいる。ウイルス伝播の原理の側面からは、韓国の場合、感染者の規模や増加速度をみると、エアロゾル(空気浮遊粒子)を通じたウイルスの空気伝播が支配的だと推定されている。
国際学術誌に発表された伝播理論のなかには、ウイルスのエアロゾル雲理論がある。空気中のウイルスが室内空間で雲のように集まった後、人々を感染させ続け、感染した人によってふたたびウイルスのエアロゾルが生成され、室内空間のウイルスの雲がいっそう大きくなるという理論だ。
オミクロン株の空気伝播の大拡散を防ぐには、さらなる科学的防疫対策を講じなければならない。最近の国際科学学術誌は、新型コロナへの対応として、マスクやフェイスシールド、目の保護、空気浄化、エアロゾル防疫など、いわゆる非薬物的介入(NPI)の重要性を強調している。簡単に言うと、空気中のウイルスから人体を物理的に保護しようという意味だ。これを具体的に解釈し紹介すると、以下のようになる。
一つ目に、空気中のウイルスから人体を保護するために個人ができることとしては、高性能マスクの着用と目の保護がある。韓国はマスク着用の参加度は高いが、目の保護の必要性についての認識は低い。WHOは、ウイルスが目、鼻、口から浸透する可能性があることを告知している。室内空間では、保護メガネやフェイスシールドなどを活用すれば、ウイルスの動力学の側面からは人体保護の確率が高まると判断される。特に、室内空間でマスクとともにフェイスシールドを同時に着用すれば、保護確率はさらに高まると判断される。ただし、目を保護する際には視野の確保に留意しなければならない。
二つ目に、機関責任者や施設管理者は、室内の空気に含まれるエアロゾルに対する浄化に努めなければならない。短期間であっても、エアロゾルの濃度を全体的に減らせる空気浄化の方法を用意し、それと同時に、適切な装備を通じた空気中のウイルス殺菌を試みることができる。特に、換気効率が低い地下空間などでは、エアロゾルの浄化や殺菌努力がいっそう必要となる。
ウイルスとの戦争に用いられる3種類の道具、すなわちワクチン、治療薬、ウイルス伝播遮断技術のうち、最も瞬発力のある対応を可能にする道具は、結局は伝播遮断技術だ。韓国は十数年のあいだ粒子状物質(PM2.5、PM10)に苦しんできたので、他の国に比べて非薬物的介入に対する社会的な拒否感も低い。様々な手法のエアロゾル防疫を適切に行えるのであれば、日常を徐々に回復しながらも、ウイルスの拡散を減らせると思われる。
現代社会は科学技術が支配する社会であり、コロナ禍は現在進行形の科学技術の災害だ。全世界の科学技術者の学術的な討論とその結果に基づく防疫行政になることを要請する。新型コロナ対策の本質は、経済政策ではなく、伝染病の拡散を防ぐウイルス動力学にある。新たな変異は出現し続ける確率が高い。ウイルスの伝播を防ぐことができなければ、百薬は無効だ。