大統領職引き継ぎ委員会が4月初めか中旬に、まず米国と欧州連合(EU)に特使を送る案を検討している。一方、日本と中国に対する特使派遣は就任後に先送りする方向だという。国際秩序が揺れる中、韓米同盟を強化し、経済安全保障に重点を置くという方針は分かるが、最大貿易相手国であり朝鮮半島情勢に大きな影響を及ぼす中国と、関係改善が急がれる日本に対する特使派遣をあえて後回しにすることについては懸念せざるを得ない。
まず、これまでの次期大統領による特使外交の前例に比べても、過度に「米国優先」に傾いている。引き継ぎ委なしに就任した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は就任初期、米国、中国、日本、ロシア、EUに特使を派遣し、朴槿恵(パク・クネ)前大統領は就任後、真っ先に中国に特使団を派遣した。特に「中国外交」の空白が目立つ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領は10日未明、当選が確定してからわずか5時間後、米国のジョー・バイデン大統領との電話会談を皮切りに、日本の岸田文雄首相、英国のボリス・ジョンソン首相と相次いで電話会談を行った。一方、中国の習近平国家主席から祝賀書簡を受け取ったものの、これまで電話会談はしていない。今年で国交正常化30周年を迎える中国との外交は、尹錫悦政権の5年間の任期をはるかに越え、韓国社会の未来に重大な影響を及ぼす事案だ。
「THAAD(高高度防衛ミサイル)報復」をはじめとする習近平主席の強圧的な外交に対し、韓国社会の警戒感が高まり、過度な対中経済依存を減らすとともに、中国の誤った行動に対しては言うべきことを言わなければならないという認識が広がっているのは事実だ。しかし、韓中関係を再調整するためにも、中国とのコミュニケーションをさらに強化し、説得していく賢明な外交が求められる。北朝鮮は16日、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)と推定される弾道ミサイルを発射し、失敗したものの、挑発を続けるものと予想される。このような状況で、朝鮮半島情勢を安定的に管理するためには、中国との協力は欠かせない。
尹氏が選挙期間中、「THAAD追加配備」「先制攻撃」など強硬路線を掲げたとしても、これからは主要国と不必要な葛藤と衝突が生じないよう、外交と安全保障政策を現実的に整えなければならない。韓国社会の未来がかかった外交を白黒思考で解決することはできない。米国やEUとともに日本、中国にも特使を派遣し、バランスの取れた外交を始めなければならない。