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[寄稿]氷が消える北極、いまホッキョクグマは

登録:2022-02-24 07:04 修正:2022-02-24 10:26
キム・ヨンハ|グリーンピース海洋キャンペーナー

 365日のうち1日は、私たちが暮らしている所から遠く離れた北極の真っ白な生命体に思いをはせてみるのはどうだろうか。2月27日の「世界ホッキョクグマの日」を迎えての話だ。

 哺乳類であるホッキョクグマは、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種レッドリストで「危急」カテゴリに分類される、代表的な絶滅危惧動物だ。真っ黒に光る両目と鼻、小さな耳を持つホッキョクグマは、四足でのっそりと氷上を歩き回る。北極に住むほとんどの哺乳類がそうであるように、ホッキョクグマは、冬が近づくにつれ毛をさらに白く変える。一面が白い氷で覆われる冬の北極の環境のなかで、自分の体をよりうまく隠すためだ。大きな図体に比べ小さな二つの耳は、北極の寒い風を耐えさせてくれる。

 ホッキョクグマにとっての氷河は、狩りとつがいを作り子どもを育てる生活の基盤だ。しかし、盤石だったホッキョクグマの生息地は、地球温暖化で急速に溶けている。現在の北極の平均気温の上昇率は、地球の平均気温の上昇率より2倍以上高い。北極海の夏の水温は、1982~2010年の平均より現在は2~3度高く観測されている。熱くなる地球による水温上昇により、夏季の北極の海氷の総サイズは、1970年代後半に比べ今では半分ほどに減った。氷河が溶けて海水が熱膨脹し、海水面は毎年約3ミリメートル上昇している。

 北極の万年雪が溶けてなくなるということは、現在のホッキョクグマを含む北極の海洋生態系が、生存に極めて脆弱な状態に置かれることを意味する。IUCNのホッキョクグマ専門家グループは、ホッキョクグマの生存における最大の脅威として「気候変動による海氷損失」を挙げた。ホッキョクグマは、寒い気候に耐えるために必要な高カロリーの餌を食べなければならないが、地球温暖化により狩りが困難になっているためだ。餌の狩りにおける過剰なエネルギー消耗は、結局はホッキョクグマの個体数減少にまでつながる。調査によれば、あるメスのホッキョクグマは、餌を探すために観測史上最長記録となる9日間、冷たい北極海を687キロメートル泳いだことがわかった。

 北極は全地球と人類、生態系に影響を及ぼす。水温上昇、氷河流出、海洋酸性化などにより、北極の生態系は崩れつつあり、これによる異常気象現象は、全地球的にますます頻繁に現れている。近年私たちが経験している超大型台風や日照り、洪水、大雪などの異常気象現象も、北極海洋の循環による結果だといえる。生存に危機感を感じているホッキョクグマは、自分だけの身振りで人類にメッセージを送っている。ホッキョクグマが送る気候危機に対する警告は、すなわち人類に送る警告のメッセージだ。

 しかし、北極が私たちが暮らしている所とは非常に遠く離れているからだろうか。毎年より多くの北極の氷河が溶けてなくなっているが、私たちは北極の保護に対する警戒心を感じられずにいる。一部の国家は、地球温暖化で溶けつつある北極を新たな経済活動の好機とみて、航路開拓と商業活動を加速化しようとしている。北極海を含む全世界の海に強力な海洋保護区域を指定し、海が自ら回復できる空間と時間を一日も早く用意しなければならない瞬間であるにもかかわらず、これに完全に逆行する動きが起きているのだ。

 消えていく北極の氷河とホッキョクグマの声なき叫びを、どのように受けいれなければならないのだろうか。彼らの叫びは、人類が海を守る海洋保護区域の指定の先頭に立つのであれば「希望のメッセージ」になり、無関心を貫くならば人類全体に対する「警告のメッセージ」になるだろう。ホッキョクグマが地球から消えるか、人類と共に生き続けるか、さらに人類の未来はどうなるかは、私たちの選択にかかっている。

//ハンギョレ新聞社

キム・ヨンハ|グリーンピース海洋キャンペーナー (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1032305.html韓国語原文入力:2022-02-24 02:31
訳M.S

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