北京冬季五輪ショートトラックの偏った判定が、油煙のように立ち込めていた「反中感情」に引火した。
オンライン・コミュニティなどには判定をめぐる是非を問うことを超え、あらゆる形で中国に対する糾弾や嫌悪の書き込みが殺到している。1992年の韓中国交正常化以降、一般市民の反中感情がこれほど高まったことはあまりないかもしれない。2016~2017年に韓国に高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備する過程で、中国が自国民の韓国団体観光を許可せず、経済報復に乗り出した上、たびたび登場する東北工程などが重なり、反中感情は以前とは違う段階に入った。特に、実生活で同年代の中国人と頻繁に接しており、オンライン上でゲームや書き込みを巡って論戦を交わす中で高まった若者たちの反中感情は、既成世代とは異なる。
これを意識したためか、有力な大統領選候補4人が一斉に不当な判定に対する糾弾のメッセージを表明した。国民の力は「この5年間の親中政策から得たものは何か」と問いかけるなど、中国に有利な判定をめぐる議論を国内政治に持ち込もうとしているようだ。政治指導者が国民の喜怒哀楽に応え、感情を共有することは当然だ。しかし、国内政治のために外交関係を手段化しようとする動きには懸念を抱かざるを得ない。
これに先立ち、同党のユン・ソクヨル大統領候補は昨年末、在韓米商工会議所懇談会で「韓国の若者たちの大半は中国を嫌っている」とし、文在寅政権の「中国寄り政策」のため、韓中国民の関係が悪化したと主張した。旧正月連休期間には外国人健康保険給与支給上位10人のうち8人が中国人だとし、移住労働者の「健康保険タダ乗り論」や、THAAD追加配備などを取り上げた。共に民主党のイ・ジェミョン候補は8日、「世界日報」とのインタビューで、「中国漁船が韓国領海を侵害すれば撃沈しなければならない」と述べた。京畿道知事時代にも中国漁船の領海侵害などについて「無寛容」の原則を掲げ、だ捕など強力な措置を強調していたが、「撃沈」は全く違う次元の話だ。
五輪での中国の不公正判定に対する批判を越えて中国嫌悪を発火させることは、今は政治的に安全で得るものが多いと思えるかもしれない。しかし政治家なら、反中感情に便乗するよりも、これをどのように克服すべきか考えなければならない。不当な判定は公式チャンネルを通じて強く抗議する一方、スポーツを国内政治に持ち込んで政治的利益を得ようとするのは正しい姿勢ではない。
ショートトラック1000メートル準決勝を1位で通過したが失格となったファン・デホン選手(23)は、同日夜11時39分、自身のインスタグラムに「もし壁にぶち当たったとしても、必ずしも止まらなければならないわけではない。壁にぶつかったら、諦めて引き返すのではなく、どうやって登れるか、突き破れるか、または回り道をして通れるか、考え抜くのだ」というマイケル・ジョーダンの名言を書き込んだ。