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[社説]原則崩した文大統領の「朴前大統領赦免」、嘆かわしい

登録:2021-12-25 08:33 修正:2022-01-04 10:19
24日午後、ソウル龍山区の龍山電子商店街で、市民が朴槿恵前大統領の特別赦免関連のニュースを視聴している/聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は24日、朴槿恵(パク・クネ)前大統領に対する特別赦免を決定した。国民統合という大義や朴前大統領の健康状態などを考慮したという。赦免がたとえ大統領の固有の権限だとしても、朴前大統領に対する今回の赦免には決して同意できない。腐敗犯罪を犯した者に対しては赦免権を行使しないという原則を文大統領が自ら崩しただけでなく、赦免の趣旨に掲げた国民統合も期待できないからだ。

 文大統領はこの日、赦免について、「私たちの前に迫る多くの難題を思うと、国民統合と謙虚な包容が切実だ。朴前大統領の場合、5年近く服役したため健康状態がひどく悪化した点も考慮した」と、パク・キョンミ大統領府報道官を通じて明らかにした。あわせて、「今回の赦免が、考えの違いや賛否を越え、統合と和合、新しい時代の幕開けのきっかけになることを願う。赦免に反対する方々の広い理解と度量をお願いする」と付け加えた。しかし、このような文大統領の発言は、大統領候補時代に約束した「赦免権の最小化」の原則に反する。さらに、朴槿恵前大統領と李明博(イ・ミョンバク)元大統領の赦免に対する賛否の議論が高まるたびに前面に出した「国民のコンセンサス」という先決基準にも合致しない。

 文大統領は候補時代、賄賂・あっせん収財・あっせん収賄・背任・横領を5大重大腐敗犯罪と規定し、それに該当する犯罪者には赦免権を制限すると公約した。文大統領はこれまで、特別赦免に関してはこの原則を比較的忠実に守ってきた。赦免の回数は5回で、歴代政権に比べて少ないことも評価できる。しかし、朴前大統領の赦免により、これまで積み重ねてきた誠意の実績を自ら崩してしまった。文大統領が約束した基準に従えば、賄賂と職権乱用などの容疑で懲役22年を宣告され、5年にわたり収監生活を続けてきた朴前大統領は、赦免の対象になり得ない。赦免の前に世論の集約や国民の同意を求める手続きがなかったという点も、これまで強調してきた「国民のコンセンサス」の原則に反する。これでは、文大統領が報道官を通じて求めた「国民の理解と度量」も容易ではない。

 朴前大統領の赦免が「国民統合」にどれほど役に立つのかも疑問だ。韓国国民は全斗煥(チョン・ドゥファン)と盧泰愚(ノ・テウ)の二人の元大統領の赦免が、統合どころかさらに大きな分裂と対立の種として作用した事実を、生々しく記憶している。しかも、朴前大統領は、「公正」と「正義」を要求するろうそく集会の市民の力で弾劾され、法の審判まで受けた。そのような点で、「ろうそく集会の精神の継承者」を自任してきた文在寅政権による朴前大統領の赦免は、深刻な自己否定であり、「ろうそく集会に対する背信」だと批判されるのは当然のことだ。

 赦免の時期も問題だ。大統領府はこの日、「選挙についての考慮はまったくなかった」と述べたが、大統領選の日を75日後に控えてなされた朴前大統領の赦免が、選挙に何の影響も及ぼさないと信じる国民はほぼいない。野党が敏感な反応を示すことも理解できないことではない。

 野党の一部では、朴前大統領の赦免をイ・ソッキ元統合進歩党議員の仮釈放と結びつけているが、どんでもない主張だ。イ元議員は、裁判の過程においても、犯した罪に比べ刑量が重いという指摘があっただけでなく、国際アムネスティなどの国際人権団体から持続的な釈放要求が続いていた。何より、彼は刑期の85%になる8年3カ月間服役し、仮釈放の法的要件をすでに満たしていた。赦免自体が不当な朴前大統領と一緒にして論じることではない。詭弁を弄さないでほしい。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1024725.html韓国語原文入力:2021-12-24 20:30
訳M.S

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