4日午後1時、東京都武蔵野市の武蔵境駅前広場。日本の伝統を尊重し、皇室を敬うと主張する保守政治団体「新党くにもり」の幹部たちが街頭演説を行った。主要政策を決定する際に外国人も差別なく住民投票に参加できるようにする条例の制定を、武蔵野市が推進していることに反対するためだ。幹部たちはワゴン車の上でマイクを握り、「日本国民の権利を守ろう」、「外国人参政権反対」と叫んだ。演説中には、日本国内の「反中感情」を悪用し、恐怖を助長する内容も含まれていた。
10分ほどすると、どこからか大きな音楽が聞こえてきた。2人の男性が現れ、拡声器で音楽をかけながら「差別反対」のスローガンを叫んだ。周辺にいた10人あまりの警察官が2人の男性を取り囲んだ。彼らはものともせず活気に満ちた音楽を流し、保守団体幹部の演説は全く聞こえなかった。口は動いているのに何を言っているのか分からないという、おかしな状況が続いた。取材のために次の集会場に移動しなければならなかったため、2人の男性が誰なのかは把握できなかった。
「嫌韓発言」で物議を醸す「在日特権を許さない市民の会(在特会)」元会長の桜井誠氏が代表を務める極右政党「日本第一党」もこの日午後2時30分、吉祥寺で街頭行進を行った。100人あまりの参加者は「武蔵野市外国人住民投票条例断固反対」という横断幕や旭日旗などを手に行進を始めた。20~30分後、隊列が丁字路にさしかかった頃、彼らに反対する人々が一斉に登場した。彼らは集団的でありながら個別的だった。韓国で7~8年間にわたって労働分野を担当し、さまざまな闘争を見てきたが、本当に見慣れない光景だった。
例えば、ある女性は拡声器で条例の必要性を絶えず説明した。別の男性は極右政党の参加者に向かって「差別反対」を力強く叫び、「外国人も一緒に暮らす住民」と書かれたプラカードを掲げたり、市民にビラを配ったりしている人もいた。同じ目的を持った100人を超える人たちが各自のやり方で闘っていた。集会を率いるリーダーがいる韓国式の闘争とは全く異なっていた。何より、いつも静かな日本で様々な人々が参加する激しい闘争を見るのは久しぶりだったため、新鮮だった。
彼らこそ、ドキュメンタリーや本、記事で見かけるだけだった「ヘイトスピーチ」に反対する「カウンター(反対)行動」に取り組む市民だということは、すぐに分かった。先ほど武蔵境駅で音楽を流していた2人の男性とも、ここで再会した。
カウンター行動は2013年から本格化した。当時は在特会が東京のコリアンタウンである新大久保で「朝鮮人を追い出そう」と連日過激なデモを行っていた。これを放っておけないと考えた市民たちが抵抗に立ち上がったのだ。彼らの闘いは、2016年6月に施行された「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、別名「ヘイトスピーチ解消法」の制定という大きな成果をあげた。法と条例が作られたため、「ヘイトスピーチ」はしてはならない行動だとの認識は広まったものの、「憎悪と差別」は相変わらずだ。
日本社会を騒がせた武蔵野市の条例制定も、結局は実現しなかった。21日、同市議会は本会議を開いて外国人住民投票に関する条例制定を議論したが、反対(14人)が賛成(11人)を上回り、否決された。よりよい世の中へと向かって一歩踏み出すのは、いつだって難しいものだ。しかし、少し安心する。どこかで「憎悪と差別」があれば必ず現われる人々がいるからだ。日本において「カウンター行動」は健在だ。
キム・ソヨン|東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )