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[レビュー]嫌韓と嫌日の二分法を超えて

登録:2021-08-27 10:14 修正:2021-08-27 12:21
『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』 
李龍徳著、キム・ジヨン訳、十月二日刊
写真:十月二日提供//ハンギョレ新聞社
『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李龍徳著、キム・ジヨン訳、十月二日刊//ハンギョレ新聞社

 在日韓国人3世作家の李龍徳(イ・ヨンドク、写真)氏が昨年発表した小説『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』は、第42回野間文芸新人賞を受賞した評判作だ。在日韓国人に対する差別と抑圧が法制化され、大都市のコリアタウンの韓国人の店が襲撃を受けて廃業するなど、「嫌韓」が支配する近未来の日本社会を背景にしている。1923年の関東大震災当時、日本人の自警団員が朝鮮人を竹槍やこん棒、短刀などで虐殺したことからタイトルをつけた。

 小説は30代の在日韓国人男性、柏木太一を中心に大きく二つの話が並んで展開される形だ。太一は、20代男性の尹信(ユン・シン)、韓国人という理由で日本の若者3人に強姦され殺された妹の復讐を心に抱く金泰守(キム・テス)、在日韓国人青年会の元同僚の梁宣明(ヤン・ソンミョン)、極右保守政党の活動隊員である日本人青年の貴島斉敏らを集め、ある種の陰謀を企てる。嫌韓勢力からコリアタウンを守るために大久保パトロール隊を結成し、暴力に暴力で立ち向かっていた彼は、パトロール活動の限界を痛感し、「ショック療法」に頼ることにした。「大衆には、ショックを与えないといけません。それも、分かりやすく消化しやすい物語にくるんであげて与えないといけないんです」と、彼と行動を共にすることにした日本人の妻・葵は、自分たちの行動を説明する。

 小説のもう一つの物語は、太一と宣明が一時携わった在日韓国人青年会の活動家らの「帰国事業」だ。日本国内で日増しに激しくなる嫌韓ムードに絶望した朴梨花(パク・イファ)らは、韓国に永久帰国し、農村で共同体生活を送る。下関から船で釜山(プサン)を通じて入国した一行は、田舎に家を得て農業をしながら共同体生活を始めるが、ほどなくして予期せぬ難関にぶつかり、座礁の危機を迎える。太一の陰謀と朴梨花などの帰国事業はやや荒っぽくつながる感もあるが、在日韓国人の若者の挫折と模索を多層的に見せる効果を持つ。

 太一が企てた陰謀は予想を超えるレべルだが、当初狙った効果を収めたかどうかは不明だ。にもかかわらず小説は、韓日両政府と国民の間のあつれきが最高潮に達した時点で、考えるべきことを与えてくれる。本の末尾でイスラム排斥デモに参加した男が「太極旗と日の丸を両手に持って」いる場面は、嫌韓と嫌日の単純な二分法を超える著者の問題意識を端的に示している。

チェ・ジェボン先任記者bong@hani.co.kr(お問い合わせ japan@hani.co.kr )写真:十月二日提供
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1009380.html韓国語原文入力:2021-08-27 05:00
訳C.M

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