大統領の直属機構である第4次産業革命委員会が、台湾の長官クラスの人物を国際カンファレンスに招待しておきながら行事の直前に突然演説を取り消した。外交的非礼も甚だしい。台湾問題は最近、国際的に最も敏感な外交事案の一つという点で、思慮に欠ける処置という批判は避けられない。
台湾外務省は20日夜、ホームページに声明を発表し、韓国政府の第4次産業革命委員会が今月16日に開催した「第4次産業革命グローバル政策カンファレンス」で、台湾のオードリー・タン(唐鳳)デジタル担当政務委員(長官級)に主題発表を要請したが、行事直前に演説を中止させたと公開した。台湾外交部は「韓国側の欠礼に関し、駐台北韓国代表部の代理代表を呼んで強い不満を示し、駐韓台湾代表も台湾政府の厳重な抗議を伝えた」と明らかにした。台湾メディアの報道によると、今年9月にタン政務委員にオンラインでの演説を要請した第4次産業革命委員会は、16日午前7時50分(韓国時間8時50分)に電子メールで演説キャンセルを通知し、「両岸(中国・台湾)関係の様々な側面を考慮した」という理由を述べたという。行事の開幕が10時なのにもかかわらず、わずか1時間前にキャンセルを通知したのだ。タン政務委員がどれほど呆れ戸惑ったことか、想像に難くない。
第4次産業革命委員会が「より良い未来のためのAI(人工知能)デジタル転換」をテーマに開いた今回のカンファレンスは、オンラインとオフラインで行われ、行事の案内の報道資料もオードリー・タン政務委員を「台湾デジタル担当相」と紹介し、発表者と告知した。2017年に設立された同委員会は、キム・ブギョム首相とAIの専門家であるソウル大学のユン・ソンロ教授が共同委員長を務めている。
台湾の長官級の人物が韓国政府の行事で演説することに対し、中国政府の反対があったか、または韓国政府が中国の反発を憂慮して演説を取り消したのではないかという議論が起き、外交部は事態の収拾に苦心している。外交部のチェ・ヨンサム報道官は21日、「諸般の状況を総合的に検討して決定したと聞いている」としながらも、具体的な背景については明らかにしなかった。理由が何であれ、大統領直属の機関で他国の長官級の人物に頼んだ演説を直前に取り消したことは、深刻な外交的非礼だ。
「天才ハッカー」出身で台湾の最年少長官として名の知れたオードリー・タン政務委員は、デジタルを基盤とする台湾の革新と「開かれた政府モデル」を世界に知らせる役割を積極的に果たしている。今月9~10日にバイデン米政権が開催した「民主主義首脳会議」にも台湾代表として出席し、演説している。タン政務委員の知名度と台湾問題の敏感性が加わり、今回の外交的非礼は国際社会でも注目を集めている。
最近、韓国の外交が米中間の「戦略的曖昧さ」にはまり、「顔色を伺う外交」をしていると指摘する人が少なくない。このような時であるほど、外交の原則と戦略を精巧に立て、きめ細かい外交をしなければならないということを重ねて強調したい。